• 公開日:2026.09.09
世界のトレンドは「石炭火力終えん」 中国・インドで52年ぶり同時減少
  • 北村 和也
image credit: Unsplash

地球温暖化を助長すると批判の的になっている石炭火力発電であるが、最大利用国である中国やインドでの発電量がそろってマイナスに転じた。欧州では、G7(主要7カ国)でイギリスが最初に「脱石炭」をすでに達成している。石炭火力発電のピークは確実に過ぎ、終わりに向かって大きく動き始めた。

また、これまで前向きにアンモニア混焼を進めていた韓国が計画中止を発表し、日本は石炭火力延命のほぼ唯一の仲間を失った。

石炭の「一人負け」が明確に

2025年は石炭火力発電にとって厳しい年となった。次の棒グラフは、中国(上)とインド(下)の電源別発電量の、年ごとの増減推移をまとめたものである。黒が石炭、青が再生エネである。両国とも経済発展が目覚ましく、グラフにある2000年以降、どちらの電源もほぼ一貫して増加している。

中国(上)とインド(下)の電源別発電量の増減(前年比、単位TWh)=出典:Carbon Brief https://www.carbonbrief.org/analysis-coal-power-drops-in-china-and-india-for-first-time-in-52-years-after-clean-energy-records

毎年大きく伸ばしてきた石炭火力発電であるが、昨年(2025年)は中国、インドともに、そろって減らしている(赤枠、筆者)。「Carbon Brief (カーボンブリーフ)の記事によると、52年ぶりのことだという。グラフ上、2025年以外で石炭が減ったのは、インドではコロナ禍の2020年、中国では株のバブルがはじけた2015年だけとなっている。その時は、電力需要自体が大きく落ち込んでいる。2025年は、再生エネ(青)が大きく伸びて電源の転換が見られた。石炭の一人負けがはっきりしている。

一方、主要7カ国で唯一、脱石炭火力発電を達成したのがイギリスである。

G7で初めて脱石炭を果たしたイギリス

イギリスは、1950年代の後半までは、電気のほぼ100%を石炭火力発電で賄い、その石炭は自国産であった。そして、1980年から1990年まで利用のピークを迎える。毎年、およそ200TWhを発電し、電源全体のおよそ6割をカバーしていた。その間、大規模な炭鉱ストなどを経て、天然ガスや原子力発電への転換が進み、石炭自体も輸入に頼るようになった。下のグラフがそれを示している。

イギリスの石炭火力発電、フェーズアウトの道筋(出典:Carbon Brief)
https://interactive.carbonbrief.org/coal-phaseout-UK/index.html

その後、ロシアのウクライナ侵略で輸入の半数を占めていたロシア産の石炭を禁輸措置とする。2024年9月には国内最後の石炭火力発電所を止めて、石炭利用に終止符を打った。蒸気機関、製鉄とまさに産業革命を担ってきた石炭を、数十年かけてゼロに移行したことになる。ウクライナ危機への対応、エネルギー安全保障の確立、そして脱炭素の実現という最重要の目的のために、イギリスは国家を挙げて石炭から脱却したのである。

脱石炭を可能にしたのが、上のグラフで分かる通り、風力発電を中心とする再生エネ発電であった。

韓国、アンモニア混焼から手を引く

さて、問題は日本である。

前回の記事で書いたが、日本は100数十基ある石炭火力発電を延命しようとしている。その手段が、アンモニア混焼である。海外で作ったグリーンアンモニアなどを輸入し、日本の石炭火力発電所で石炭に混ぜて燃やすという。コスト高は最初から確実で、輸入に頼るためエネルギー安全保障に反する。見事なまでの“悪手”を進めていることになる。さらに輸入アンモニアが高いので、その価格差を国が補填(ほてん)することを決定したばかりである。

そんな中、8月に韓国の気候エネルギー環境相がある発表を行った。

石炭火力発電へのアンモニア混焼の計画を中止するとした。その理由として、「石炭火力を延命させる手段になり得る」と述べている。脱炭素のために石炭火力を廃止する政策に矛盾する、というわかりやすい論理である。

これによって、主要国で混焼のためにアンモニアを調達しようとする国は、日本だけになるという。供給サイドからも日本のアンモニア混焼は“詰んだ”といってよい。

2025年から2026年にかけて、石炭火力発電は大きな転機を迎えている。2025年には、世界での発電量の3分の1が再生エネによるものとなり、初めて石炭を上回った。また、2026年に入ってからも、今年前半の中国での石炭火力発電による発電量が全体の5割を割った。もちろん、いまだに大量の石炭火力発電所が存在し、インドも含めて新設も行われている。

しかし、明らかに石炭利用のピークは越えた。まさに「終わりの始まり」を迎えたのである。石炭火力発電に固執することは、残念ながら「孤高」とは程遠い。世界に全く支持されない政策を転換することこそ、日本に残される唯一の道である。

<参考サイト>

Ember『Global Electricity Review 2026』
https://ember-energy.org/latest-insights/global-electricity-review-2026/

written by

北村 和也(きたむら・かずや)

日本再生可能エネルギー総合研究所代表、日本再生エネリンク代表取締役

民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作した後、1998年にドイツに留学。帰国後、バイオマス関係のベンチャービジネスなどに携わる。2011年に日本再生可能エネルギー総合研究所、2013年に日本再生エネリンクを設立。2019年、地域活性エネルギーリンク協議会の代表理事に就任。エネルギージャーナリストとして講演や執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作を手がけ、再生エネ普及のための情報収集と発信を行う。また再生エネや脱炭素化に関する民間企業へのコンサルティングや自治体のアドバイザーとなるほか、地域や自治体新電力の設立や事業支援など地域活性化のサポートを行う。

Related
この記事に関連するニュース

「国産エネルギー」を掲げる高市政権、輸入アンモニア混焼で石炭火力延命の矛盾
2026.08.10
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
原発建て替えの現実味は? 「2040年代までに5基」を検証する
2026.07.08
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
ホルムズ海峡のLNGも代替可能に 急拡大続ける太陽光と蓄電池
2026.05.07
  • ワールドニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
電力自由化から10年、その成果と逆流——再エネ社会はなぜ進まないのか
2026.04.28
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

News
SB JAPAN 新着記事

世界のトレンドは「石炭火力終えん」 中国・インドで52年ぶり同時減少
2026.09.09
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
【日本企業の“当たり前”はなぜ伝わらないのか】第1回 誠実にやっているだけでは、グローバルには信頼されない
2026.09.07
  • コラム
  • #情報開示
  • #ブランド戦略
映画『ヒンド・ラジャブの声』9月4日公開 監督が問う「目撃者」の責任
2026.09.03
  • ニュース
  • #人権
ネイチャーポジティブに「微生物多様性」を BIOTAが示す新視点
2026.09.02
  • インタビュー
  • #ファイナンス
  • #ESG投資
  • #生物多様性

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 世界のトレンドは「石炭火力終えん」 中国・インドで52年ぶり同時減少