• 公開日:2026.05.07
ホルムズ海峡のLNGも代替可能に 急拡大続ける太陽光と蓄電池
  • 北村 和也
image credit : Unsplash

太陽光発電と蓄電池の導入が、世界で爆発的に快進撃を続けている。

そして、この2つの組み合わせが最強の脱炭素のツールとなることを、いくつかの先進的な地域などで実証されてきている。

今回は、直近で各国から発表されたレポートを基に、潮目が変わったともいえる温暖化対策の現実解をお伝えする。

止まらない太陽光発電の急伸

ロシアのウクライナ侵略をきっかけとしたエネルギー危機以来、太陽光発電の拡大は世界的なトレンドとして続いている。毎年、新記録となっていて、反脱炭素を掲げるトランプ政権が牛耳るアメリカでさえも同じ傾向である。

下の棒グラフは、イギリスの著名なエネルギー関連のシンクタンク、Emberによるもので、世界の電源別の発電量が2024年から2025年にどう変化したかを示している。

 2024年から2025年の電源別の発電量変化 出典:Ember

一見して分かる通り、太陽光発電の伸びが他の電源を圧倒している。

具体的な数字では、太陽光による追加発電量が636TWhと、過去最大の増加だった。これは、2025年にホルムズ海峡を通過したすべての液化天然ガスによるガス火力発電分、550TWhを代替するのに、十分な規模とされる。

世界の電力需要も拡大しているが、その75%を太陽光の増加でカバー。発電量では風力発電を抜いて原子力発電に迫った。

こうした結果、過去初めて、世界の電源構成に占める再生エネの割合が石炭を上回って世界最大の電力源となるなど、まさに記録ずくめの結果となった。

蓄電池も過去最高の導入量 天候弱点をカバー

蓄電池もまた、最も世界で導入が進んでいる電力関連技術のひとつである。

IEA(国際エネルギー機関)の「グローバルエネルギーレビュー2026」によると、2025年の新規導入は108GWと過去最高で前年比40%増となった。そのうち8割が系統用など大規模蓄電池であった。

太陽光と蓄電池の急増は、脱炭素化に向けた最強の組み合わせとなる。太陽光発電の昼間の余剰分を夜や天気の悪い日に当てることで無駄がなくなり、需要に合わせた効率的なカーボンニュートラルを目指すことが可能となるのである。

すでに導入先進地域では、再生エネ電力の利用割合が格段に上昇している。

米国・カリフォルニア州の電源構成(3月29日) 出典:CAISO、GridStatus.io

上のグラフは米国・カリフォルニア州の長距離送電を管理するCAISOによる2026年3月29日の電源ミックスのデータを示している。

中央の大きな黄色の部分が太陽光発電による電力である。この日は午前6時半過ぎから発電が始まり、午後7時過ぎには日没で発電ゼロとなった。日中は、全発電量の4分の3が太陽光の時間もあった。一方、太陽が沈んだ後に需要をカバーしたのが、明るい紫色で示された蓄電池である。太陽光が低減していくのに合わせて蓄電池から放電が増え、ちょうど三角形になっている。日没前後には、4割以上が蓄電池からの電力になった。

太陽光発電の天候に起因する弱点を蓄電池がカバーしているのがよく分かる。

カリフォルニア州は決して特異な例ではない。米国のテキサス州やオーストラリアなど各地で、蓄電池の存在感が急激に大きくなり、当たり前になってきているのである。

「蓄電池はコストが高い」は成立しない

「アンチ再生エネ」という人たちは確実にいて、いまだに「お天気任せだ」と非難を続けている。彼らは、電力の安定供給のためには火力発電が欠かせないと主張することも多い。蓄電池で再生エネをカバーすることは、彼らの論陣にとっては不都合な現実とも言える。そこで、蓄電池の価格は非常に高く結局コストが合わないのだ、と言い換えが行われてきた。

ところが、その論理にもほころびが出始めている。

リチウムイオン電池の価格の推移(1991-2024)  出典:Our World in Data、BloombergNEF

上のグラフは、リチウムイオン蓄電池の価格の推移を示している。

そこで明らかになったのは、驚異の価格ダウンである。1991年にkWhあたり9210ドルだった蓄電池の値段が、33年後の2024年には78ドルと100分の1以下になった。

原因は、累積生産量の増加に伴う学習曲線の進行や大規模な生産自動化などにある。そして、値段が下がっただけでなく3分の1の大きさへの小型化も達成した。コストの下落は、2010年代にちょうど太陽光パネルに起きたことと対(つい)をなしている。

今後、太陽光+蓄電池の組み合わせは、事業所や家屋などの小さい規模への需要家への展開も含めて進んでいく。すでに「24時間ソーラー」という言葉もよく聞かれるようになった。地道な技術革新は、脱化石燃料の新たな局面を作り出し、脱炭素に向けての潮目を明らかに変えたのである。

written by

北村 和也(きたむら・かずや)

日本再生可能エネルギー総合研究所代表、日本再生エネリンク代表取締役、埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作した後、1998年にドイツに留学。帰国後、バイオマス関係のベンチャービジネスなどに携わる。2011年に日本再生可能エネルギー総合研究所、2013年に日本再生エネリンクを設立。2019年、地域活性エネルギーリンク協議会の代表理事に就任。エネルギージャーナリストとして講演や執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作を手がけ、再生エネ普及のための情報収集と発信を行う。また再生エネや脱炭素化に関する民間企業へのコンサルティングや自治体のアドバイザーとなるほか、地域や自治体新電力の設立や事業支援など地域活性化のサポートを行う。

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