
サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内で、高等専門学校(高専)の学生を対象とする特別招待プログラム「SB Technical College 2026(SB TeC 2026)」が初めて開催された。SB国際会議の10周年を記念した特別企画で、セブン銀行の協賛のもと実施。招待された高専生はサステナビリティを巡る最先端の議論に触れ、自身の持つテクノロジーという技術を、社会課題の解決につなげる視座を養った。
大先輩が語る「スキルをGETするスキル」
プログラムには東京高専と木更津高専から計4人が参加した。学生らは2日間にわたってSB’26 東京・丸の内の基調講演やワークショップに参加した後、東京・丸の内のセブン銀行本社を訪問。釧路高専出身の松橋正明・代表取締役社長が迎え入れ、特別講演を行った。

松橋氏は、セブン銀行が「課題解決アプローチ型企業」であることを強調。「コンビニにATMがあれば便利」「24時間使いたい」といったユーザーの声から始まり、今では650以上の提携先とつながる世界初の共同ATMへ成長した歴史を紹介した。訪日外国人の現金アクセス、多言語対応、ATM募金、支店減少下での窓口機能の代替など、一つひとつのサービスが社会課題とひも付いていることを説明した。
松橋氏は、自身が高専で得た最大のものは「スキルをGETするスキル」、すなわち「短時間に技術要素を理解し、組み合わせ、新たな価値を創造する力」だと表現。そして学生たちへ「高専生は『尖っている』ので、尖ったまま社会に出てください」と強いメッセージを送り、「自分の特徴を生かすことが、これからのAI時代には重要」と締めくくった。

学生たちは、普段は見られない「内部」も含め、ATMを見学した。まゆをモチーフにしたのぞき見防止形状のバイザー、視線や骨格検知も可能なカメラ、非接触ICの読み取り部、紙幣の真贋(しんがん)判定を行う「心臓部」——。松橋氏は紙幣の識別について「数種類の光源と各種センサーを組み合わせ、高速でマッチングさせて偽造券を見つける」と、金融業の裏側で学生たちが学ぶ技術が活用されている現実を語った。
未経験エンジニアが3カ月で作った社内AI基盤
続いて、AI・データ戦略部の河野真季氏が、セブン銀行での生成AI活用について紹介した。データサイエンティストとしての経験を持つ河野氏は、開発未経験から生成AIを駆使し、社内向け生成AIアプリ「7Bank-Brain」をわずか3カ月で開発、2025年3月にリリースした。
河野氏は開発手順の理解、サンプルコード生成、エラー解消、コードレビューまで、あらゆる場面で生成AIを「OJT担当」として活用したという。外注すれば6カ月以上・数千万円かかると想定される開発が、ほぼ社員1人分の人件費で実現した。一方で「生成AIの限界=自分の限界になりがち」と課題も指摘。「基礎知識は必要なので、生成AIに聞きながら学ぶ開発を実践した」と、技術を使いこなすための学習姿勢の重要性を訴えた。
「視点が広がった」2日間
プログラムの最後、参加学生たちが2日間を振り返った。
東京高専の田邉友斗さんは、SB’26 東京・丸の内の基調講演で取り上げられた「インクルーシブデザイン」に着目。「障がい者だけでなく、一般の人にも使えるような領域」に興味を引かれたと語り、自身の福祉系研究との接点に手応えを感じた様子だった。同じ東京高専の伊藤雅純さんは「抽象的な話が多かったが、これはネガティブな感想ではなく、すごくポジティブな感想」と表現。何かを作って問題を解決するという具体的なところに目が向きがちな自身に対し、「抽象的なところが大切なんだよ」という気付きで「視野が広がった」と話した。

木更津高専の河野欣矢さんも「インクルーシブデザインは優しさとかそういうのではなく、企業戦略としてできるもの」という登壇者の言葉が印象に残ったと振り返り、「将来、高専で培った能力をどう使えるのか、すごく楽しみになった」と笑顔を見せた。同じく木更津高専の佐藤格さんは、LIXILの途上国向け簡易式トイレ「SATO」に感銘を受け、「慈善的なものだけだと、もろい部分がある。そこをビジネスにすることでより強固な支援ができる」という発想に共感。「社会問題の解決に向けて努力している大人たちを見て、とても勉強になった」と話した。

「テクノロジーを起点に、社会課題の解決に挑む」をテーマに掲げたSB TeC 2026。4人の高専生は、気候変動や貧困問題、インクルーシブデザインなど多彩なテーマに触れながら、自らの技術が社会とどう接続するかを考えた。初開催となったSB TeC 2026は、未来を切りひらく若き技術者たちにとって、確かな「布石」となる2日間だった。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。














