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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ポストコロナのより良い世界は、サステナブルな企業が創る

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SB特集ページ「コロナ危機を克服する企業のチカラ」スタートにあたって

私たちは1カ月半にわたる緊急事態宣言と長い自粛から、元の経済活動にそろりそろりと戻りつつあります。企業によってはかなり早い段階からテレワークに切り替えていらっしゃったところもあるようですので、すでに半年近く自宅で仕事をしているという方もいらっしゃるかもしれません。ようやくこれで外出も、出勤もできる、やれやれという気持ちの方も多いと思います。

正直に言えば、私も同じ思いです。早く元どおりの自由な生活をしたいという気持ちは否定できません。しかし、理性的に考えれば、むしろこれからが本番です。

先日SB-Jで行った研究アンケートの結果を見ても、今回のコロナ・パンデミックで私たちの価値観は根本から変化したことが窺われます。このまま元の生活が戻ってくるとはほとんどの方が考えていません。(参考:「コロナ後に生活や仕事が変わると思う」8割超:SB独自調査)

経済への影響は、むしろこれから大きくなりそうです。突然職を失ったり、職場がなくなってしまったという方も少なくありません。こうした方々をどう支えていくのか?そして多くの企業人もこれまでとはまったく違った形でビジネスを行わなくてはならず、大きな戸惑いを感じていることでしょう。

ワクチンや薬が開発され、私たちが「元の世界」に戻れるまでには数年かかるとの予測もあります。けれど、そもそも私たちは本当に元の世界に戻れるのでしょうか?戻っても良いのでしょうか?

コロナ・パンデミックによって世界の経済が大きく制限され、はからずも世界中できれいな青空が蘇り、川や海の水は透明になり、今までは厚いスモックに隠れて見えなかった遠くの山々が見えるようになったところもあるそうです。そして街の近くに野生動物が戻ってきたところもあるそうです。そんなニュースをいくつも聞くと、いかに私たちの経済活動が地球に大きな負荷をかけていたかを実感するには得られません。本当に元に戻していいのでしょうか?

海外の工場が閉鎖されたことにより、サプライチェーンが寸断され、日常生活はおろか、医療活動に必要なものまで入手が難しくなるという事態にも直面しました。経済効率を求めて、さらに言えば目の前の利益を第一に進めて来た効率化が、私たちの社会をいかに脆弱なものにしたか。コロナはそのことを私たちにまざまざと見せつけました。サステナビリティにまつわる様々な問題が、一気に可視化されたと言ってもいいでしょう。(参考: 生物多様性から見た新型コロナ・パンデミック、本質を見極める)

もちろんこのままパンデミックが収束してくれればそれに越したことはないのですが、世界的に見ればまだ感染者数は拡大していますし、日本でも再び感染者数が増えつつあります。そして、今後さらに大きな第2波、第3波が襲って来ないとも限りません。もっと言えば、今回のコロナ以外のパンデミックだって起こり得るのです。

こうしたことを考えると、私たちは緊急事態宣言の解除を単純に喜ぶわけにはいきません。社会と経済をよりサステナブルに、そしてレジリエント(回復力があるよう)に、変革していく必要があることは間違いありません。

欧州はそのために既にグリーン・リカバリーという考え方を打ち出し、3つの分野に集中して大規模な投資を行うことで社会をサステナブルかつレジリエントにすると宣言しています。気候中立な経済への移行、生物他方性の保護、農業食料システムの変革の3分野です。官民が同じ方向を目指して一気に動き出そうとしており、欧州は間違いなく、アップデートされた社会へと進化していくことでしょう。

そのような中、私たちはどうしたらいいのでしょうか?残念ながらこの数ヶ月の様子を見ていると、現在の政治の力だけではそのような方向転換は難しいと感じます。無計画にその場限りの対応を続けていては、次のパンデミック襲来でより大きな被害を受けるのはもちろん、どんどんと変化していく他の国々から大きな遅れをとってしまうでしょう。であれば、私たち企業が中心になって、経済はもちろん社会をよりサステナブルかつレジリエントにしていく必要があります。そして、企業にはその力があると私は信じています。

けれど、パンデミックの混乱をただ生き残ろうと、考えもなく闇雲にもがいても、大変な苦労をするばかりか、生き残ることすらできないかもしれません。なんとか潰れずに済んだとしても、辿り着いた先は大きな問題を抱えた社会かもしれません。

一方で、好ましい着地点を見据えて十分な見通しを確保し、そこに向かって戦略的に、そして多くの仲間と連携して進めば、今よりサステナブルでレジエントな、つまりは安心して暮せる社会に到達することができるでしょう。

しかも一旦どちらかに向けて進み始めたら、そして進めば進むほど、もう一つの向きに軌道修正するのは困難になって行きます。

そう、私たちはいま、分水嶺に立っているのです。

何も考えずに歩き始めるのではなく、状況をよく把握し、目指すべき方向を見定め、その上でどう進むのが良いかをじっくり考える必要があります。

より具体的に言えば、私たち企業のチカラをしっかりと発揮するために、いま私たちは以下のようなことをしっかりと考える必要があるのです。

・今、社会は何を必要としており、これから、どのように変化していくのか?
・これから私たちはどのような社会を目指すべきなのか?
・好ましい変化を起こすために、企業はどのような貢献ができるのか? すべきなのか?


今後SB-Japanフォーラムなどでもこうしたことを皆さんと一緒に考えていきたいと思ますが、SB-Jは、その際に参考になる情報もウエブを通じて提供して行きたいと考えています。

サステナブルな企業が中心になって、ポストコロナのより良い社会を作っていきましょう。そしてそのことで、企業価値をさらに高いものにしていきましょう。サステナブルな企業にはその力があり、SB-Jは企業がそうした力を発揮することを応援します。

足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ビジネス・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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