• 公開日:2026.11.06
第7回 SB Student Ambassador 東海ブロック大会
ものづくりの先にある共創を描く 東海4県の高校生164人が議論
  • 眞崎 裕史

サステナブル・ブランド国際会議の学生招待プログラム「第7回 SB Student Ambassador ブロック大会」の東海大会が2026年10月24日、名城大学(名古屋市)で開催された。東海4県から23校164人の高校生が参加し、「『ものづくり』のその先へ 東海から紡ぐ、ウェルビーイングな共創サイクルを描こう」のテーマで実施。地域資源の活用、働き方の多様性、モビリティ社会の共創、缶から考える未来、生物多様性――の5つのテーマで議論が交わされた。

問いかけを、解決する力に

オープニングでは、岡崎市役所市民安全部防災課主査の柴田智隼氏が登壇。南海トラフ地震の被害想定を示しながら、東海4県が全国の製造品出荷額の約25.9%を占める「ものづくりの中核」であると説明した。自動車を例に、素材・部品の製造から組み立て、輸送、販売まで、1社では完結しない複雑なサプライチェーンを解説し、「みんなで共通の課題を持たないと意味がない」と、地域全体で防災に取り組む重要性を訴えた。高校生に向けては「皆さんの声には大人を動かす力がある。『このままでいいの?』と社会に問いかけるだけでなく、一歩進んで解決策まで考えてほしい」と期待を寄せた。

「できること」を一つずつ増やして

基調講演では、REMARE代表取締役の間瀬雅介(ただすけ)氏が「社会を変えたいなら、変えられる力を」と題して話した。同社は、焼却せざるを得ないプラスチックをリサイクルする技術を開発し、内装建材などに変えて提供している。

間瀬氏の原点は海の上にある。冒険家を志して航海士・機関士の資格を取り、南極の海洋調査にも従事した。燃料も食料も限られ、故障はすべて自分で直す船上の生活は「すべてが有限の世界」だったという。帰路、フィリピン沖で海洋プラスチックの塊を目にし、素材として「もったいない」と感じたことが起業のきっかけになったという。

講演では、日本は廃プラスチックの約75%を燃やしていると指摘し、その背景に「何が・どこに・どれだけあるか」という一次情報の不足があると説明。自社で組成データベースを構築し、素材開発から用途開拓、排出企業への売上還元までを担う仕組みを紹介した。機関士として身につけた電気・溶接・ボイラーなどの技術でプラントを自ら設計した経験から、「知っていることと、できることは違う」と強調し、できることを一つずつ増やしてほしいと語りかけた。

古戦場を巡りたくなる仕組み イビソク

午後は5つのテーマに分かれてワークショップを行った。

テーマ1「地域資源の活用」では、文化財調査や社会インフラ整備を手がけるイビソクのまちづくり事業部課長、近藤匡志氏が講演した。同社は岐阜県大垣市に本社を置く建設コンサルタント会社で、史跡・関ヶ原古戦場の整備に携わっている。歴史遺産の保存と活用を通じて、地域の魅力を発信し、観光振興や持続可能なまちづくりにつなげることを目指しているという。近藤氏は、関ヶ原古戦場には天守閣のような象徴的な遺構がなく全体像がつかみにくいこと、陣跡(じんあと)が町内に点在し、巡るのが簡単ではないことを課題として挙げた。

ワークショップでは「関ヶ原古戦場をより分かりやすく親しみやすい歴史空間とするには」をテーマに議論。高校生からは、スタンプラリーと地域店舗のクーポンを組み合わせたアプリ、東西のだしを食べ比べるうどんや、野営体験を盛り込んだ1泊2日の戦国ツアー、地域住民がガイドを務めるバスツアーといったアイデアが提案された。

立場や文化の違いを越えて働く 野田クレーン

テーマ2「働き方の多様性」では、岐阜県大垣市で橋の架設を手がける野田クレーンの野田重秀社長と河合悠生部長代理が登壇。野田氏は力のモーメントやコンクリートの重さを求める問題を出し、学校で学ぶ数学や物理が現場で生きていると説明。女性のクレーンオペレーターやミャンマー出身の社員も活躍する多様な現場を紹介した。河合氏は、若手が少ないために先輩が強く指導しづらく、技術が継承されにくい現状や、言葉の行き違いが大きな危険につながり得ることを課題として率直に語った。

ワークショップでは「立場や文化の異なる人たちが共に働き、安心して暮らせる社会をつくるには」をテーマに議論が行われ、AIによる安全指導、イラストを使ったマニュアル、女性向けの作業着、異なる分野で3年ずつ働く「インフィニティジョブ」といったアイデアが生まれた。

事故ゼロに向けて販売店ができること ホンダカーズ岐阜

テーマ3「モビリティ社会の共創」では、ホンダカーズ岐阜の牛屋史隆氏と桑原志帆氏が「事故ゼロを目指して」と題して講演した。同社は本田技研工業の製品を販売・整備するディーラーで、岐阜県内で幼児向け交通安全教室を年間40件以上開催している。牛屋氏は、交通事故における死亡者の半数以上を65歳以上の高齢者が占め、特に自動車乗車中の死者が増加傾向にあるというデータを示し、安全運転支援システム「Honda SENSING」の普及や、多様なモビリティの提供といった取り組みを紹介した。

ワークショップでは「Honda(メーカー・販売店)ができる事故ゼロに向けた施策」をテーマに議論が行われ、VR(仮想現実)で事故の衝撃を被害者・加害者の両面から体験する案や、プリンのように柔らかい素材の車、車の先端にセンサーを付ける「ちょうちんあんこうカー」、孫と一緒に挑む運転シミュレーションなどのアイデアが生まれた。

ペットボトルの国でアルミ缶を選ぶには UACJ

テーマ4「缶から考える未来」では、UACJ アルミ缶普及推進室の鈴木理和子氏が「飲料容器から考える、未来の選択」と題して講演。同社はアルミニウム圧延品で国内シェアの5割以上を占める。鈴木氏は、海外では国際会議でアルミ缶入りの水が採用されるなど需要が伸びる一方、日本では茶や水がほぼペットボトルで販売されている現状を指摘。アルミ缶はリサイクル率が99.8%と高く、再生時のエネルギー消費量は新地金(しんじがね)から製造する場合の約3%で済むといった、環境面での優位性を紹介した。

ワークショップでは「ペットボトルが多い日本で、アルミ缶が選ばれる仕組みを考えよう」をテーマに議論が行われ、キャップ裏のQRコードでポイントと豆知識を得られるアプリ、持ちやすく輸送効率の高い四角形の缶、マットな質感で飲み口を選べる水筒型の缶、校内の自販機をすべてアルミ缶にする案など、多彩なアイデアが生まれた。

サステナブルな取り組みをファンづくりへ ロクシタンジャポン

テーマ5「生物多様性」では、ロクシタンジャポンのサステナビリティ推進室室長、伊豆井豪氏が講演した。南フランス発の同ブランドは、生産者との複数年契約によるフェアトレード、2023年のB Corp認証取得、空き容器回収プログラムなど、長年にわたりサステナビリティを追求してきた。しかし、伊豆井氏はブランドの知名度に比べてこうした取り組みが十分に知られていないという課題を提示。「サステナブルな取り組みをより多くの方々に知っていただき、ファンになっていただくには」という問いを投げかけた。

ワークショップではこの問いに対し、高校生からポップアップストアでのクイズ形式の体験、植物園など自然を感じる場所での販売、子ども向けの絵本、商品パッケージのQRコードと連動したポイント付与などのアイデアが提案された。

ワクワクする仕掛けが、社会を変える一歩に

ワークショップ後、各テーマの代表チームが全体会場で改めて発表した。

テーマ1の代表チームは「あつまれ!関ヶ原のまち!」と題し、「見る」「健康」「感じる」「伝統」「楽しむ」の観点から体験を提案した。岐阜県関ヶ原町の高齢化率が2050年には55.1%になるとの推計を踏まえ、古戦場を歩く・走るイベント「足軽大作戦」を企画したほか、のろしをドローンで再現するライトアップなどを挙げた。イビソクの近藤氏は、具体的なプランニングや発信方法まで考えられていた点を選出理由に挙げた。

テーマ2の代表チームは、異文化を持つ人の生活しづらさと、周囲の人が感じる接し方の難しさを課題に設定した。多くの人が子どもの頃に触れた組み立て式のおもちゃを共通の入り口に、得意なことを持ち寄って一つの街をつくる「あつまれ、けんせつの街」を提案。野田クレーンの野田氏は、適材適所でできる人ができることをするという考え方を評価した。

テーマ3の代表チームは、事故の原因をルール違反と高齢者に分けて分析した。若者や外国人向けには多言語の交通ルール動画を月1回視聴するとポイントがたまるアプリを、高齢者向けには体温を検知して緩やかにブレーキをかける機能や、無人販売車・無人バスによる移動支援を提案した。ホンダカーズ岐阜の桑原氏は、メーカーとディーラーが一緒に開発できそうな具体案だと感心していた。

テーマ4の代表チームは「アルミの第一歩」と題し、まずアルミ缶を知ってもらう必要があると訴えた。角を生やした缶や宇宙船の形をした缶など、ペットボトルにはできない形の提案に加え、ラベルを付けず飲むまで味が分からない自販機商品で話題を生み、缶に雑学を記す案も示した。UACJの鈴木氏は、キャッチーな入り口とサステナビリティを知ってもらう重要性の両方が含まれていたと評価した。

テーマ5の代表チームは、ドラッグストアやコンビニに試供品を置き、QRコードからアニメーションでサステナブルな取り組みを伝えるページへ誘導し、最後にプレゼント画面を表示する仕組みを提案した。ロクシタンジャポンの伊豆井氏は、課題分析と顧客の行動を踏まえたカスタマージャーニーを考えた設計がしっかりできていた点を選定理由に挙げた。

最後に間瀬氏が再び登壇し、すべての発表にゲーミフィケーションを生かしたワクワクする仕掛けがあったと講評。アルミ缶回収のポイント還元を抽選制にする案を自ら示し、ワクワクする行動変容がサステナブルな市場をつくるポイントだと述べた。そして「日々の生活でワクワクするようなことを考えながら、サステナブルな社会を作ってもらいたい」と高校生に期待を寄せ、大会を締めくくった。

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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