
サステナブル・ブランド国際会議の学生招待プログラム「第7回 SB Student Ambassador ブロック大会」の沖縄大会が2026年10月10日、琉球大学千原キャンパス(西原町)で開催された。沖縄での開催は今回が初めて。県内13校から64人の高校生が参加し、「持続可能なブルーゾーン先端都市へ 産官学ゆいまーるで創る沖縄の未来を描こう」をテーマに実施した。ブルーゾーンとは、沖縄など長寿者が多い世界5地域を指す。一方、近年の沖縄はその地位が揺らいでおり、今大会では沖縄の健康長寿の復活や新たな体験型観光の創出など、地域のサステナビリティに関わる活発な議論が交わされた。
「沖縄の未来を作る主役」の声に期待

大会の冒頭、沖縄県企画部企画調整課SDGs推進室の川満涼子室長が挨拶し、沖縄の長寿文化を支えてきた要素として自然環境や食文化、沖縄の言葉で助け合いなどを意味する「ゆいまーる」の精神などを挙げた。ただ、沖縄の平均寿命は1980年に男女とも全国1位だったものの、2020年には男性43位、女性16位に低下している。その現状を念頭に、「かつての『健康長寿・沖縄』の姿を取り戻すことが喫緊の課題」と指摘。環境保全や持続可能な産業の育成といった課題にも言及し、高校生の柔軟な発想が「社会に新しい風を吹き込み、持続可能な沖縄の未来を実現するための原動力になる」と期待を寄せた。

続いて、会場を提供した琉球大学の喜納育江学長が登壇。サステナビリティについて世界的な視野で考えてほしいとの思いを込め、すべて英語で挨拶した。沖縄がブルーゾーンであり続けるために、産官学や地域社会が持つ多様な知識、経験を結集する意義を説いた上で、「そして、もう一つ非常に重要な声がある。皆さんの声だ」と強調。「大人たちがまだ気づいていない可能性を見つけられるかもしれない。今日から何を始められるかを考えてほしい。皆さんのアイデアが沖縄の未来を形づくる力になる」と背中を押した。
「応援するから、応援される」

基調講演は、「誰もが可能性を信じられる社会づくり―挑戦と、応援のコミュニケーション―」をテーマに、人材育成や組織づくりを支援するワダチラボ代表取締役社長の福島知加氏が務めた。自身はもともと引っ込み思案だったという。しかし、高校生の頃の事故で失明の可能性があると告げられたことが転機となった。幸い視力は失わなかったが、「同じ明日が来ることが当たり前じゃないんだな」と実感。その後は「1日1日を大切に生きよう」と考えるようになり、活発な性格に変わった。沖縄国際大学の学生時代には、国内留学制度を使って東京の大学に通い、以前から憧れていた東京ディズニーリゾートで働くなど、夢を実現した。
営業職に就いた社会人1年目には、全国約千人の営業社員の中で営業成績最下位となったが、上司からの「最下位から全国1位を取れたら快挙じゃない?」という言葉で奮起。全国トップの先輩を訪ねて仕事ぶりを徹底的にまねし、翌年には全国1位タイの成績を達成した。「この先輩はとても周りから応援される人で、それが力になっていた。他人に『あなたは絶対にできる』『可能性を信じてるよ』と恥ずかしげもなく言う人で、他人を応援するから、自分も応援される。コミュニケーションの在り方を深く学んだ」と振り返る。

講演では、隣り合う高校生同士が「いつかやってみたいこと」を伝え合い、相手の挑戦を応援するワークを実施した。福島氏は、お互いを大事にする考え方をゆいまーるの精神と重ね合わせ、「相手を応援するコミュニケーションをたくさんして、自分も応援してもらい、そして自分の可能性を信じてほしい」と呼びかけた。
世界が注目する「ブルーゾーン」
続いてブルーゾーンをテーマに、研究者や地域団体、高校生が取り組みを紹介した。ブルーゾーンは、イタリアの医師ジャンニ・ペス氏とベルギーの人口統計学者ミシェル・プーラン氏が、長寿者の多いイタリア・サルディーニャ島を地図上で青く囲んだことに由来する。その後、米国の探検家で作家のダン・ビュイトナー氏らが調査を広げ、沖縄、ギリシャ・イカリア島、コスタリカ・ニコヤ半島、米国・カリフォルニア州ロマリンダを含めた計5地域がブルーゾーンとして知られるようになった。

沖縄長寿科学研究センター所長で、今年で93歳を迎える琉球大学名誉教授の鈴木信氏は、1976年から沖縄の長寿について研究を重ねてきた。その成果を念頭に、長寿を維持するためには「健康だけじゃだめ。ハッピーな人生が必要」と強調。食文化や運動、社会参加などを通して、生きがいを持って人の役に立つことが大切だと語った。

読谷ブルーゾーン研究協議会の當山浩理事は、鈴木氏が調査を始めた地である読谷村で進める長寿文化の復活に向けた取り組みを紹介した。同村では2024年、行政や観光、商工、農業など19団体が連携して活動を開始。世代を超えて交流する共同農園の運営や、健康長寿をテーマにした体験型観光づくりを進めている。當山氏は「時代に合わせ、先人のライフスタイルを新しい形で作り上げていこうとしている。沖縄の大事な横社会を復活させていこう」と、地域で支え合う関係づくりを呼びかけた。

沖縄県立小禄高校の2年生3人でつくるチーム「ゆいブルーリンク」は、観光を通じて沖縄の健康長寿文化を広め、地域経済にも貢献する仕組みを提案した。着目したのは、観光客が訪れても、その消費が十分に地域へ還元されていない「ザル経済」の課題だ。やんばるの豊かな自然や、ゆいまーるの精神を体験できる7日間の滞在型プログラムを発案し、「短期で通り過ぎる観光から、一週間じっくり滞在して、心身をリセットする観光へ」と構想を説明。「この価値を世界に届け、持続可能な沖縄の未来をつくっていきたい」と意欲を示した。
健康を支える「ゆいまーる」を考える 沖縄セルラー電話
午後は2つのテーマ別教室に分かれ、協賛企業による講演とグループディスカッションが行われた。

沖縄セルラー電話ヘルスケア事業部の国吉大将氏は「地域とともに創る、沖縄の健康長寿社会~自治体と企業が連携して取り組む健康まちづくり~」をテーマに講演した。通信を中心とした事業で沖縄の地域社会に貢献する中で、「地域とのつながり」を重視していると説明。その一環として、健康指標の悪化という地域課題の解決に向けてヘルスケア事業に取り組んでいるとした。
高校生たちに対し、「健康に良いと分かっていても、なんで人は行動しないんだろう」と問いかけた国吉氏。「エスカレーターと階段が並んでいる時、階段で降りた方が健康に良いと分かっていても、エスカレーターを選んでしまうと思う」などと複数の例を挙げ、「個人の意思だけに頼らず、健康づくりに向けた行動がしやすい環境をつくる必要がある」と指摘した。その実現に向け、身近なスマートフォンの測定機能を生かした健康サポートアプリ「JOTOホームドクター」を独自開発したり、行政と連携して住民の健康増進プロジェクトを進めたりしていることを紹介した。

ワークショップでは「あなたのまちに根付かせたい『健康を支えるゆいまーる』を考えよう! その文化はどうやったら広まると思いますか?」をテーマに議論した。高校生たちからは、健康づくりや地域活動への参加でポイントを獲得できる仕組みや、中高生と高齢者が一緒に遊べる場所づくり、沖縄の伝統食を提供する朝市・夜市の開催など、多彩なアイデアが生まれた。
2050年にブルーゾーンであり続けるために オリオンビール

オリオンビールでコーポレートバリュー・クリエーション部課長補佐を務める松田美乃氏は、「うちなーんちゅの誇りをビジネスの力で守り、世界へ届ける」と題して講演した。地域密着の企業として、沖縄で暮らす人々の幸せな時間に寄り添うビールであることを「ハッピーアワー」というブランドメッセージで訴求している。それを念頭に「地域の絆がないとオリオンビールはやっていけない。沖縄で愛されるものだから、沖縄を愛してくれる観光客の方々にも愛してもらえる」と、地域に親しまれることが事業の土台になると語った。
同社の取り組みとして、本島北部の離島である伊江島産の大麦をビールの原料に使い、製造過程で生じる麦芽かすを肥料として農家に戻す循環型農業や、ビーチクリーン、サンゴ保全活動などを紹介。沖縄の魅力を県外や海外に届け、得られた利益を地域に還元する取り組みを「ぐるぐるモデル」と呼び、「沖縄とともに成長しないと意味がない」と、事業の成長と地域への貢献を一体で考える姿勢を示した。

ワークショップでは「2050年の沖縄をブルーゾーンであり続けさせるために、私たちは何をすべきか?」をテーマに議論した。課題の根本原因を探る「なぜなぜ分析」を取り入れ、松田氏は「なぜを繰り返していくと、誰にどうやって届けるのかという手法がおのずと見えてくる」と説明。高校生たちはグループごとに課題設定を行い、「なぜ」を繰り返しながら、観光業の職業体験を通じた若者の地元定着や、エイサーなどの伝統文化を次世代へ継承する取り組み、地域の清掃活動や祭りを通じた交流の促進など、多様な視点から沖縄の未来像を描いた。
高校生ならではの発想が続々 企業担当者も評価
ワークショップ後、全員がメイン会場に戻り、2つのテーマそれぞれの代表チームが発表を行った。

テーマ1「ウェルビーイングなまちづくり」の代表チームが考案したのは、「健康の駅・ゆいピタル」。道の駅をヒントに、「ゆいまーる」と「ホスピタル」を組み合わせた施設だ。生徒たちは、病院に対するマイナスイメージや健診受診率の低さを課題に挙げ、「全世代が病院に気軽に行けるようになること」「楽しみながら健康になること」を目指すと説明した。具体的には、病院に飲食店や美容室、マッサージ店、サウナ、銭湯などを併設し、健康づくりと交流の拠点にする構想。「診察を受けなくても病院に来たくなるような、そういう施設になるといい」と語り、病院の見学ツアーやマスコットキャラクターの公募なども提案した。
沖縄セルラー電話広報の糸数萌夏氏は、親しみやすい名称や具体性を評価し、「私たち大人は病院の待ち時間とかに負のイメージしかなかったけど、逆転の発想で、こういう施設があったらいいなと思った」と称賛。「ぜひ関係部署に報告をして、実現できるようにしたい」と期待を寄せた。

テーマ2「健康×豊かなライフスタイル」の代表チームは沖縄と県外の教育環境の違いに着目した。県民のおおらかな気質や助け合いの文化が残る地域コミュニティが良い面である一方、「受験や教育のシステム化のアクセルを緩める原因になっている」と学習環境に与える影響を考察。改善に向けて友人間での進路情報のシェアや、県外の同年代との交流促進を提案した。10年後に目指す姿を問う場面では、メンバー全員で人差し指を立てながら「全国学力一位!」と元気よく宣言。「私たちは沖縄の未来を担う若者の選択肢を広げられる環境を届けたい。沖縄の自然と文化を守り、学び合い、支え合うことで、2050年の沖縄をより豊かにしていくことを宣言します」と言い、発表を締めくくった。
オリオンビールの松田氏は「教育格差という課題に対して、自分たちの現状を見つめ、丁寧に深掘りしているプロセスが素晴らしい」と評価。若者の将来の選択肢を広げることが、沖縄の良さを次世代に受け継ぎ、健康的で豊かな暮らしを守ることにつながるという視点を「非常にブルーゾーンらしい考え方だと思った」と称賛した。

約7時間にわたるプログラムの締めくくりには、基調講演を務めた福島氏が再び登壇。「明日から何を実践したいですか?」と高校生たちに問いかけ、隣の人と決意を共有する時間を設けた。最後は「本日、今宣言していただいたことは、明日から実践をしていただきたい」と笑顔で呼びかけ、新たな挑戦にエールを送った。
Student Ambassadorは今年で7回目の開催で、全国10都市でブロック大会が行われる。ブロック大会に参加した高校生の中から、動画選考会を経て選ばれた生徒が、2027年2月開催の「サステナブル・ブランド国際会議 2027 東京・丸の内」内で行われる全国大会に招待される。

長嶺 真輝(ながみね・まき)
フリーランス記者
地方紙記者として10年間、地域の経済や政治、スポーツを取材。現在はweb媒体や雑誌への寄稿、書籍の執筆などを手掛ける。取材・文を担当した「日本バスケの革命と言われた男」(双葉社)が沖縄書店大賞優秀賞を受賞。











