
11月のCOP31(国連気候変動枠組条約第31回締約国会議)の開催を目の前に、世界の蓄電システムは蓄電池を中心に大きく増加してきている。一方で、COP29で示された2022年比で6倍の目標には届かない見込みである。
蓄電池導入を強くけん引するのは中国と欧州で、日本は導入目標の設定でも遅れを取っている。本稿では太陽光発電など再エネの拡大や、脱炭素実現の鍵となる蓄電池の現状と課題についてまとめる。
2025年の新規導入は過去最高
下のグラフは、イギリスのシンクタンクEmberによるもので、世界の蓄電システム導入の経年変化を示している。棒グラフの下部分の紺色が揚水発電で、上の青が蓄電池である。左のグラフは毎年の追加分、右は蓄積による全体の出力を示している。

出典:Ember「Storage target ambition is rising, but not fast enough to reach the goal」2026年10月15日
https://ember-energy.org/app/uploads/2026/10/Storage-target-ambition-is-rising-but-not-fast-enough-to-reach-the-goal-1.pdf
毎年の新規追加は、このところ揚水発電が10GWを下回る一方で、蓄電池の増加はすさまじい勢いを示している。2025年の導入は過去最高の108GWを記録し、過去5年間で17倍にも達した。10GWから10倍の100GW導入までにわずか4年しかかかっておらず、同じ規模での導入速度で見ると、太陽光発電の9年、風力の15年をはるかに上回っている。
また、右グラフのように、2024年にトータルの導入出力で揚水発電を抜き去り、わずかな間に蓄電システムの主役に躍り出たことがわかる。
目標の「2030年1500GW」は達成困難
しかし、これだけの勢いを持っても2024年のCOP29で示された、2030年の世界エネルギー貯蔵の目標1500GW、2022年の6倍には届かないというのが、Emberの見立てである。

出典:Emberによる前述のリポート、Bloomberg NEF
上記グラフの一番上の紺の点線が、世界のエネルギー貯蔵に関する誓約1500GWである。その2つ下の濃い緑の点線が、COP29以降各国政府が掲げた新規の目標を足した822GWを表している。実際の市場での推移として、Bloomberg NEFによる予測1200GW(上から2番目の薄いグレーの点線)があるが、これでは1500GWには達しない。
これまで世界全体での数字を見てきたが、現状の拡大を実際にけん引しているのは、中国とEUである。その目標は中国が460GW、EUが200GWで、全体の8割以上を占めている。
太陽光発電との連携が重要に
ここまで蓄電池導入の目標や実績を見てきたが、導入によって目指すのは、温暖化防止のための再エネの拡大、特に太陽光発電の利用効率化にあることに論をまたない。

出典:Ember、「Batteries have unlocked the era of anytime solar」2026年8月12日
https://ember-energy.org/app/uploads/2026/08/Report-PDF-Batteries-have-unlocked-the-new-era-of-anytime-solar.pdf
同じEmberの8月のリポートでは、2026年上半期の世界の電力需要における、太陽光発電によるカバー率の実績が上のようにグラフ化されている。昼のピーク時には世界の電力需要の約4分の1を太陽光発電が賄う一方、日射のない夜間の発電量はほぼゼロとなる。これは、蓄電池の導入がまだまだ進んでいないからである。これを蓄電池拡大によって転換できれば、太陽光発電の電力を格段に利用できるようになり、このEmberのリポートのタイトルにもある「the era of anytime solar」、いつでも太陽光発電の時代がやってくることになる。
蓄電池導入の目標を持たない日本
日本では今、空前の蓄電池ブームといわれている。系統用蓄電池の接続検討の受け付けが急増し、積もりに積もって今年の3月末時点で191GWもある。しかし、連携済みはわずか0.84GWで、検討は200倍を優に超えている(8月6日資源エネルギー庁資料)。一方、経済産業省の委託調査(2026年3月)によると、2040年時点での系統用蓄電池の最大導入出力は9.6GWと非常に低い。蓄電池を保有しようとする側の意欲と政府の施策の間に大きなギャップがあることが見て取れる。
ここで、Emberによるもう一つのグラフを見てもらおう。2025年時点での世界各国の太陽光発電の導入容量を20位まで並べたものである。中国がダントツの一位で1200GW超え、日本は100GW弱でこの2年ほどでインドとドイツに抜かれ、3位から5位に転落した。

出典:Ember「Storage target ambition is rising, but not fast enough to reach the goal」2026年10月15日
https://ember-energy.org/app/uploads/2026/10/Storage-target-ambition-is-rising-but-not-fast-enough-to-reach-the-goal-1.pdf
ポイントは蓄電池の導入目標の有無で、太陽光導入上位20カ国のうち12カ国は目標を持っている。目標を数値化していないのは8カ国で、アメリカやドイツと並んで日本はそちら側に残る。日本はただでさえ太陽光発電への偏重が目立ち、すでに出力制御が発電事業への影響を与えるまでになっている。
つまり、効率的な太陽光発電の利用のためには、系統強化を含め蓄電池導入について政策的な支援が必要な段階に入っているのである。コストダウンを含めた技術開発はもちろんであるが、投資家の予見性を高めるためにも政府の目標設定などは必須と考えるべきであろう。
北村 和也(きたむら・かずや)
日本再生可能エネルギー総合研究所代表、日本再生エネリンク代表取締役
民放テレビ局で報道取材、環境関連番組などを制作した後、1998年にドイツに留学。帰国後、バイオマス関係のベンチャービジネスなどに携わる。2011年に日本再生可能エネルギー総合研究所、2013年に日本再生エネリンクを設立。2019年、地域活性エネルギーリンク協議会の代表理事に就任。エネルギージャーナリストとして講演や執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作を手がけ、再生エネ普及のための情報収集と発信を行う。また再生エネや脱炭素化に関する民間企業へのコンサルティングや自治体のアドバイザーとなるほか、地域や自治体新電力の設立や事業支援など地域活性化のサポートを行う。













