
サステナブル・ブランド国際会議の学生招待プログラム「第7回 SB Student Ambassador ブロック大会」の東北大会が2026年10月3日、東北工業大学八木山キャンパス(仙台市)で開催された。東北6県から24校140人の高校生が参加し、「先人の想いをカタチに 絆を紡ぐ、東北ならではのまちを描こう」のテーマで実施。地域経済の活性化や担い手の育成など、地域のサステナビリティに関わる活発な議論が交わされた。
若い世代の柔軟な発想に期待

大会は、会場を提供した東北工業大学の小林正樹学長による挨拶からスタート。小林学長は「人間環境を重視した豊かな生活のための学問を創造し、持続可能な社会の発展に寄与する」という同大学の理念を紹介。その上で、若い世代の柔軟な発想によるディスカッションに期待を寄せた。

続いて宮城県企画部総合政策課の三浦周課長が登壇し、宮城県の人口動態を紹介した。10代後半は進学により転入超過となる一方、20代前半は就職などで転出超過に転じ、合計特殊出生率は1.00と全国45位にとどまる。若者・女性に選ばれるための施策として、県内の豊かな自然素材と東北大学の放射光施設「ナノテラス」を活用した「コスメ・健康関連産業の集積」と、県外に出た若者が宮城とのつながりを維持する「(仮称)みやぎファンクラブ」の立ち上げなどを紹介した。
廃漁網から始まった地域発の挑戦
基調講演には、宮城県気仙沼市発の廃漁網アップサイクルベンチャー、amu代表取締役CEOの加藤広大氏が登壇した。「地域だからできる挑戦があるー気仙沼から見つけた、新しい価値のつくり方ー」と題し、廃棄漁具を回収・リサイクルしてナイロン素材に再生する事業の背景と哲学を語った。

加藤氏は、気仙沼の居酒屋で遠洋はえ縄マグロ漁師と出会ったことが創業のきっかけだったと明かした。世界中でマグロを追いかける漁師たちが命がけで使った漁網が、産業廃棄物としてお金をかけて燃やされている現実に「もったいない」と感じたという。漁師を批判するのではなく、漁具をごみとして扱ってきた社会の仕組みそのものを変えるべきだと考え、事業化に踏み切った。
高校生へのメッセージとして加藤氏が強調したのは、「ナラティブ」の重要性だ。事実を羅列するだけでなく、なぜ自分がそれをやるのかという意味づけを明確にし、人に伝わる形にすることが不可欠だと述べた。「説教くさくなったら誰にも伝わらない。ちゃんと面白いこと、かっこいいことができているか。『なんかいい』が『気付いたら環境に良かった』という順番を設計できているかが重要だ」と率直な言葉で語りかけた。
続いて仙台市立仙台高等学校の大橋美咲さんが、前年度の大会参加を経て実行委員長として取り組んだ防災イベント「見て触れて身につく!キッズ防災体験」の成果を報告した。2026年3月に開催されたこのイベントでは、高校生が震災の教訓を子どもたちに伝えるワークショップを実施。2025年12月の青森県東方沖地震を受け、来場者から不要な本・CD・DVD約570点を回収し、宅配買取寄付サービスを通じて2万5530円を八戸市に寄付した。大橋氏は「協力してくれた方々の強い思いを届けられて、東北の絆を再度構築することができた」と振り返った。

人口流出にどう歯止めをかけるか 七十七銀行
午後は4つのテーマ別教室に分かれ、協賛企業による講演とグループディスカッションが行われた。

七十七銀行総合企画部サステナビリティ推進室の植松悠希氏は「地域のサステナビリティ推進に向けて、私たちにできること」と題して講演。植松氏は、人口減少や若者の流出が続けば地域経済が縮小し、銀行のビジネスチャンスも減少するため、地域の金融機関としてサステナビリティを推進する必要があると説明した。グループの取り組みとして、人材関連会社での結婚相談事業「七七(なな)結び」、東京ガールズコレクション運営会社との連携、エンタメコンテンツ関連の実証実験、カーシェアリング事業などを紹介した。
ワークショップでは「東北に若い世代が定着し、人口流出に歯止めをかけるにはどのような取り組みをすればよいか」をテーマに議論が行われ、東北の祭りに地元企業が参加して若者と企業の交流機会を増やす案や、地域のSNS公式アカウントで魅力を発信する案、宮城県のコスメ事業と大学の学部を連携させて進学から就職への流れを作る案など、多彩なアイデアが生まれた。
観光農業で地域のにぎわい創出 仙台ターミナルビル

仙台ターミナルビル成長戦略室兼SC事業本部の佐藤啓央氏は「東日本大震災からの復興 そして世界に誇れる場所へ」と題して講演した。佐藤氏は、津波の被害を受けた仙台市荒浜地区に開設した「JRフルーツパーク仙台あらはま」を紹介。震災後、仙台市が沿岸部に居住や宿泊事業を禁じる条例を制定した一方で、にぎわい創出を求めたことを受け、2021年3月にオープンした。8品目150種類の果物を栽培し、年間を通じて摘み取り体験ができる仕組みを構築。今後は既存エリアの海側に新たなエリアを整備し、全天候型の遊び場や震災復興展示館を設ける計画も進行中という。
ワークショップでは、「フルーツパークは10時から16時までの営業なので、17時以降にイルミネーションイベントを開催し、星空の下でりんご発泡酒の試飲会を行えば大人のニーズにも応えられる」といった提案や、旅行会社と連携した周遊ルートの構築、外国語表記の充実によるインバウンド対応などが議論された。
世代を超えて震災の教訓伝える 福島民報社

福島民報社ビジネスデザイン局の大河内俊幸氏は、震災伝承プロジェクト「15歳のバトン」について講演した。大河内氏は、戦争経験者が1割を切った現在と対比しながら、震災の記憶が風化しつつある危機感を語った。「15歳のバトン」は、福島県内88校の高校生を約3年間かけて被災地に連れていく取り組み、1万人のメッセージ募集、震災教育を後押しするアプリの開発という3つの柱で構成。アプリにはチャットボット形式の「語り部」機能が搭載されており、震災についての質問に回答する仕組みを備えている。集まったメッセージは将来的に合唱曲として制作する構想もあるという。福島県は合唱王国として知られ、県民の「声」を音楽に込めて全国に発信したいという思いがその背景にある。
ワークショップでは、被災地を舞台にしたショートドラマの制作や、地域の音楽隊・吹奏楽部と連携した合唱曲づくり、子ども向けの絵本による防災教育など、世代を超えて教訓を伝える多様な手法が議論された。
地元の仕事や企業の魅力をどう伝えるか マイナビ

マイナビ宮城支社の小池正徳氏は「地元で働く人を増やすためにできること」と題して講演。マイナビは「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」をパーパスに掲げ、進学・就職・転職など人生の選択を支える情報サービスを提供している。小池氏は、マイナビを利用する大学生へのアンケート結果を示し、地元企業を希望しない理由の1位が「志望する企業がないから」であることを紹介。「ほんとに志望する企業がないのか。知らないから選べないことも理由の1つかもしれない」と問いかけた。一方、「実現すれば地元就職するかもしれない」と思うものの1位は「給料が良い就職先が多くできる」、2位には「働きたいと思うような企業が多くできる」が続いており、地元の仕事や企業の魅力を伝える方法の工夫が鍵になると強調した。
ワークショップでは、高校生向けのインターン予約制度の創設や、地元の祭りやイベントを通し、県外在住を含む若い世代が地域の文化や魅力を知るきっかけづくりが議論された。
若い世代の感覚が「武器」になる
ワークショップ後、メイン会場に全員が戻り、4つのテーマそれぞれの代表チームが発表を行った。

テーマ1「地域経済の活性化」の代表チームは「シン・社会科見学」と題し、社会科見学を小・中・高で実施すること、学生個人が行きたい場所を選べる仕組みにすること、教員を目指す大学生を監督者として募集することを提案した。七十七銀行の植松氏は「人口流出というテーマをさらに細分化し、現状を分析した上で理想の姿を描き、解決策まできちんとロジックを組んでいた。小中高から大学生まで若い世代を多く巻き込んだ仕組みを作ろうとしていた」と評価した。
テーマ2「観光農業による地域創生」の代表チームは「フルーツパーク拡大化計画」を発表し、SNSの多角的活用、有名人の招致、メディア露出の強化、他企業とのコラボ商品開発、旅行会社と連携した周遊ルートの構築など具体的な集客施策を提案した。仙台ターミナルビルの佐藤氏は「この施設自体を知らない状況で、90分という短い時間の中、地域の課題に対して目指すべき姿をきれいにまとめていた」とコメントした。
テーマ3「地元メディアの使命」の代表チームは「ショートドラマで震災の教訓を伝える」を提案し、被災地を舞台にしたショートドラマを制作し、聖地巡礼を通じて被災地への来訪を促す仕組みや、スタンプラリーでポイントを貯めると防災グッズと交換できる仕掛けを盛り込んだ。福島民報社の大河内氏は「震災にはいろんな語り口がある。今回、ショートドラマと、実際に現地を訪れる仕掛けが盛り込まれていた点が非常に良かった」と述べた。

テーマ4「担い手の育成」の代表チームは、高校生にはボランティアとして祭りへの参加を呼びかけ、参加者には屋台で使えるクーポンを配布する仕組みを考案。大学生には体験型アルバイトとして屋台や職人のお手伝いを提案し、弟子入りのハードルを下げつつ後継者不足の解消につなげる構想を示した。マイナビの小池氏は「高校生、大学生と、それぞれのターゲットに対するアプローチが具体的に落とし込まれており、結果としてどんな変化を起こしたいかまでストーリーがしっかりできていた」と評価した。
最後に、基調講演に登壇した加藤氏が総評。「この世代にしか考えられないアイデアがあった」と笑顔を見せ、「その世代にしかない感覚は武器になる」と高校生たちの背中を押して大会を締めくくった。
Student Ambassadorは今年で7回目の開催で、初開催となる沖縄を含め、全国10都市でブロック大会が行われる。ブロック大会に参加した高校生の中から、動画選考会を経て選ばれた生徒が、2027年2月開催の「サステナブル・ブランド国際会議 2027 東京・丸の内」内で行われる全国大会に招待される。

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。














