• 公開日:2026.09.15
「宣言から行動へ」——横浜でAPCCフォーラム2026開催、循環型都市への移行に一歩
  • 眞崎 裕史

横浜市と一般社団法人イクレイ日本は9月3、4日の2日間、「アジア太平洋循環型都市フォーラム(APCCフォーラム)2026」を横浜市で初開催した。アジアを中心とする国内外の52自治体・機関に加え、サーキュラーエコノミーの実装に取り組む企業や学生も参加。9月4日のクロージング・セッションでは、「アジア循環型都市宣言制度(ACCD)」への署名都市が11カ国43都市(人口8200万人超)に拡大し、初の行動計画「ACCDアクション2026」と、次世代を巻き込む学生プロジェクトが発表された。宣言から行動へ—。アジアの循環型都市への移行が、具体的な一歩を踏み出した。

都市・企業・次世代が集った16セッション

APCCフォーラムは、横浜市が14回開催してきた「アジア・スマートシティ会議」の実績を基盤に、循環型都市にフォーカスした国際会議として発展的に立ち上げられた。

会場となったパシフィコ横浜ノースには、ACCD署名都市の首長や国際機関、企業、学生など多様なステークホルダーが集った。テーマは「アジア太平洋地域における循環型都市移行への道筋」。都市政策やファイナンス、企業実践、次世代対話など計16のセッションが展開された。

背景には、サーキュラーエコノミーへの転換における都市の存在感の高まりがある。廃棄物や気候変動、生物多様性の喪失といった課題が第一に顕在化するのは都市であり、同時に、インフラや公共調達などを担う都市は解決策の実装の最前線でもある。ACCDは、この視点や知見をアジア各都市が共有し、政策を高め合うためのプラットフォームだ。

ACCD署名都市が43都市に拡大

イクレイ日本の内田東吾・事務局長は、ACCDの新規宣言都市として17都市を発表した。日本の神戸市のほか、インド、インドネシア、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、マレーシアの各都市が加わり、署名都市は7カ国26都市から11カ国43都市に増加、人口規模は8200万人超に広がった。

新規署名都市を代表して登壇したフィリピン・ダナオ市のRamon Nito Durano III市長は「昨年の台風での被災対応により、創設署名都市になる機会を逃した。ACCDに参加するのは、備えとレジリエンスへの決意の表れだ」と語った。

続いて竹本和彦・イクレイ日本理事長が行動計画「ACCDアクション2026」を発表した。行動計画の起点とした創設都市へのアンケートでは、「目標・戦略」と「普及啓発」は全都市が実施済みと回答した一方、地方独自の規制は65%と最も弱く、市場形成の手段が共通のボトルネックであることが浮き彫りとなった。

これを踏まえて3つのワーキング・グループ(WG)も発足させ、優良事例の収集・共有や、民間ソリューションの都市への導入促進を目指し、ACCDへのパートナー企業を募る。アクションの一つとして、国や国際機関との連携も促進するという。

「都市は市場の創り手」

9月4日のビジネスセクター・セッション「循環経済に向けた産業変革と都市の役割」では、竹中工務店、ヤマハ発動機、レコテック、日本テトラパックの4社が登壇し、循環経済への移行で直面する課題を共有した。

竹中工務店の海野玄陽氏は「再利用材・リサイクル材は『カジュアル』と見なされがちで、価値創造が最大の課題」と指摘。ヤマハ発動機の原田久氏は、二輪車業界にリサイクル材使用の規制がない中で、社内コンセンサス形成、コスト、品質維持の3点に苦心する現状を語った。日本テトラパックの大森悠子氏は、日本のカートン容器回収率が23%にとどまる中、店頭回収が最大チャネルとなる現状を紹介。レコテックの大村拓輝氏は「データなくして資金なし」と述べ、廃棄物の1次データが投資判断を左右する構造を説明した。

モデレーターを務めた大学院大学至善館 循環未来デザインセンター長の加藤佑氏は「各社が挙げた壁は、技術の問題ではなく『まだ形成されていない市場』の問題だ」と整理。クロージング・セッションで同セッションを総括した大村氏も同じ見立てから、循環型調達、ルール策定、拠点の連携、初期コストの再配分、需要創出の5点を挙げ、「都市は循環性の『規制当局』ではなく、『市場の創り手(マーケットメーカー)』だ」と参加都市に呼びかけた。

サーキュラーエコノミー実装の現在と課題

官民対話セッションでは、横浜市の3部局が企業と対話する形で、実装の現在地と課題を共有した。

公共調達・制度のパートでは、横浜市建築局の曽根進氏が、再生材の使用、長寿命性、解体容易性などを指標化する「サーキュラー設計基準」の策定に着手していると説明。同席した大成建設と竹中工務店の担当者は、それぞれ「サーキュラーエコノミービル」と、地域の職人が交換・修理できる「冗長性」を備えた設計思想を提示した。

サプライチェーン構築支援のパートでは、横浜市内の中小企業でサーキュラーエコノミーに取り組んでいるのは約18%にとどまるの現状を踏まえ、同市経済局の梶晃三氏が企業の行動変容を起点にサプライチェーンを形成する方針を示した。ダッソー・システムズの熊野和久氏は、海外での規制によるイノベーション創出と公共調達基準への反映などを提案した。

資源循環高度化のパートでは、横浜市資源循環局の大島貴至氏が、みなとみらい21地区におけるペットボトルの水平リサイクルなど、エリア単位での実装事例を紹介。日本通運とレコテックが連携する構図から、動脈・静脈物流の統合と、データインフラの重要性が示された。

学生プロジェクト発足、そして2027年へ

クロージングでは「横浜からアジア太平洋に広がる学生プロジェクト」の発足も発表された。2027年に横浜で共催される第9回アジア太平洋都市フォーラム(APUF-9)に向け、横浜の学生たちがアジア太平洋の循環型社会の課題を探究し、解決策を発信していく。

2027年8月30日〜9月3日は「横浜サーキュラーウィーク」として、国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」の会期中に、APCCフォーラム2027、APUF-9、国際サーキュラー総合展が開催される予定だ。

閉会挨拶に立った松浦淳・横浜市副市長は「サーキュラーエコノミーに取り組むアジアの都市が、宣言から行動へと、大きな一歩を踏み出した」と手応えを語った。フォーラム全体を統括した山下朋美・横浜市政策経営・国際戦略局グローバル都市戦略担当理事は、サステナブル・ブランド ジャパンの取材に対し「ACCDに賛同する署名都市が増えたことは重要だが、この先、企業や国際機関との連携で具体的なプロジェクトを生み出せるかが問われる」と語り、「同じゴールを目指す人たちが一堂に集まって、ものすごい熱気が生まれた。この熱気を、具体的な行動につなげていきたい」と力を込めた。

宣言を実装へと転換する仕組みづくりが動き出した、APCCフォーラム2026。アジアの循環型都市への移行を、都市・企業・次世代がともに担う協働のスタートラインとなった。

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

Related
この記事に関連するニュース

nestが王子製紙の工場でフィールドワーク 紙の循環の現場から脱炭素を考えた
2026.09.01
  • SBコミュニティニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #資源循環
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
9カ国・約30都市が横浜に集結 アジア太平洋循環型都市フォーラムを初開催へ
2026.08.20
  • ニュース
  • インタビュー
  • #サーキュラーエコノミー
  • #行動変容
  • #資源循環
「お得」がフードロス削減に 60万人登録アプリ、Too Good To Go日本急拡大の理由
2026.08.03
  • ニュース
  • インタビュー
  • #フードロス
  • #資源循環
循環の「壁」を突破する、共創の実践 2026年度のSB Japan Forumが始動
2026.07.23
  • ニュース
  • SBコミュニティニュース
  • #パートナーシップ
  • #資源循環

News
SB JAPAN 新着記事

「宣言から行動へ」——横浜でAPCCフォーラム2026開催、循環型都市への移行に一歩
2026.09.15
  • ニュース
  • #サーキュラーエコノミー
  • #資源循環
「社会を動かすエンジンに」 報道畑出身のCSOが語るTBSのサステナビリティ
TBSホールディングス
2026.09.14
  • インタビュー
  • #再生可能エネルギー
  • #ウェルビーイング
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
変化を迎えたサステナビリティ情報開示の規制環境 財務部門との連携がカギ
2026.09.10
  • ワールドニュース
  • #情報開示
  • #ブランド戦略
  • #ガバナンス
世界のトレンドは「石炭火力終えん」 中国・インドで52年ぶり同時減少
2026.09.09
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 「宣言から行動へ」——横浜でAPCCフォーラム2026開催、循環型都市への移行に一歩