• 公開日:2026.07.23
循環の「壁」を突破する、共創の実践 2026年度のSB Japan Forumが始動
  • 眞崎 裕史

企業のサステナブル戦略を支援し、継続的な議論と実践の場を提供するコミュニティ「SB Japan Forum」の2026年度第1回が7月7日、都内で開かれ、約40人が参加した。10年目を迎えた今年度のテーマは「ALL RISE 障壁を突破するコレクティブ・アクションの場へ」。1社では突破できないサステナビリティ課題に、業界を超えた「コレクティブ・アクション(協働)」で挑む姿勢を掲げた。初回は「企業×企業の共創」に焦点を当て、詰め替えパックの水平リサイクルに取り組む花王と、廃食用油由来のSAF(持続可能な航空燃料)を製造する日揮ホールディングスがゲスト登壇。トークセッションとワークショップを通じ、資源循環における共創の挑戦と課題を参加者と共有した。

SB国際会議のエッセンスに

冒頭、サステナブル・ブランド ジャパン総責任者の田中信康が挨拶に立ち、本フォーラムを来年2月のSB国際会議 2027(SB’27)東京・丸の内に向けたキックオフと位置付け、率直な意見交換を呼びかけた。続いて、サステナブル・ブランド ジャパン カントリーディレクターの鈴木紳介がSB Japan Forumの歩みを振り返りつつ、「ここで話し合ったことをSB’27のエッセンスとして加えていきたい」と述べ、フォーラムを通じた共創を呼びかけた。

今年度のフォーラム全体を統括する、SB国際会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏(駒澤大学教授)は、6月に米国で開催されたSBサンディエゴ 2026の様子をレポート。SBの創設20周年を迎えた米国では、政治的な潮流としてサステナビリティへの反発がある一方、サステナビリティが企業価値を向上させるという認識が広く定着している、と報告した。

花王、競合と水平リサイクルに挑む

トークセッションは、SB国際会議サステナビリティ・プロデューサーの足立直樹氏がファシリテーターを務め、2社の取り組みを深掘りした。花王の瀬戸啓二氏(研究戦略・企画部 部長)は、詰め替えパックの資源循環プロジェクト「リサイクリエーション」を紹介。日本では、石けん・洗剤製品の80%以上が詰め替え・付替えパッケージで出荷されており、これによりプラスチック使用量を約75%削減する効果があるという。一方、パックは多層の複合素材でできているため、マテリアルリサイクルが極めて困難だった。

瀬戸啓二氏

この課題を乗り越えるため、花王は2020年に競合のライオンと協働を開始。和歌山研究所にパイロットプラントを設置し、使用済みの詰め替えパックから再び詰め替えパックを作る「水平リサイクル」の技術開発に取り組んだ。2023年にはリサイクル素材を約10%配合した製品を両社から発売。現在は神戸市のもとで日用品メーカー10社などが参画する広域連携に発展している。瀬戸氏は「いずれはリサイクル材の活用で企業同士が競争する段階にしたい。まだ一歩踏み出したばかりだ」と展望を語った。

日揮HD、300超の団体と連携しSAF製造

日揮ホールディングスの西村勇毅氏(エネルギーイノベーションユニット部長代行)は、コスモ石油、レボインターナショナルとの3社で設立した「サファイアスカイエナジー」の取り組みを紹介した。大阪府堺市のプラントで廃食用油を100%原料にSAFを年間約3万キロリットル製造し、2025年からJALやANAなどへの供給を開始している。日本国内初の大規模SAF製造事業だ。

西村勇毅氏

最大の課題は原料の確保にあるという。国内の廃食用油は年間約50万トン発生しているが、そのうち約12万トンが海外に輸出され、海外のSAFプラントの原料になっている。この構造を変えるために立ち上げた「Fry to Fly Project」には、300を超える企業・自治体が参加。全国の自治体と連携し、家庭系の廃食用油の回収や鉄道・不動産会社との協働による回収拠点の展開を進めている。西村氏は「同調行動の喚起が重要になる。まずハードルを下げ、仲間を広げてきた」と共創の背景を語った。

コストと制度の壁をどう越えるか

足立氏の「コストの内部化をどう考えるか」との問いに対し、瀬戸氏は「リサイクル材でなければ売れないという合意形成ができれば大きく進む」と応じた。西村氏は「環境コストの負担が当たり前になるには時間がかかる。連携で機運を作り、制度設計につなげる必要がある」と答えた。

両氏に共通していたのは、活動の原点が「一人の思い」だったこと。その上で、瀬戸氏は「思いだけでは独りよがりになる。巻き込む力、調整する力が欠かせない」と話し、西村氏は「強烈なリーダーシップを示し続けることで、信頼と人の輪が広がっていった」と自身の体験を交えて振り返った。

「誰と循環を動かすか」を議論

後半は「自社だけでは動かない循環を、誰と動かすか」をテーマにワークショップを実施。参加者はグループに分かれ「自社・自業界でまだ循環できていないもの」を書き出し、「循環」が止まっている理由を分解した。さらに「誰と組めば循環が動き出すか」を議論。イベント建材のシェアリングプラットフォーム、販促物のデジタル化、ユニフォームの肥料化、同業他社間での素材統一によるリサイクル促進、衣料品の国内循環など、多彩なアイデアが次々と生まれた。

2つの分科会も始動

本会に先立ち、2つの分科会も第1回が開催された。「AIと統合報告」をテーマとする統合報告分科会(オーガナイザー:Sinc統合思考研究所副所長、山吹善彦氏)ではウィルズの山本章代氏と間宮孝治氏をゲスト講師に迎え、AIを活用した統合報告書の作成について議論した。マーケティング分科会(オーガナイザー:サステナブル・ブランド国際会議カタリスト、高島太士氏)ではSB Pull Factor Workshopを体験し、AI時代のサステナブル事業の創出について考えた。いずれも全4回のプログラムとなる。

全プログラム終了後にはネットワーキングの時間が設けられ、参加者同士の名刺交換や意見交換が活発に行われた。

今年度のSB Japan Forumは、全4回のプログラムと1回のフィールドワーク(予定)で構成される。第2回は9月15日に開催予定で、「企業と地域・自治体の連携」をテーマに取り上げる。サステナブル・ブランド ジャパンでは、フォーラムの法人会員を募集している。問い合わせ先は以下の通り。

SB Japan Forum事務局(株式会社Sinc)
E-mail: forum@sustainablebrands.jp

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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