• 公開日:2026.08.20
9カ国・約30都市が横浜に集結 アジア太平洋循環型都市フォーラムを初開催へ
  • 眞崎 裕史

気候変動や資源の枯渇といった地球規模の課題が深刻化する中、環境と経済の両立を目指すサーキュラーエコノミー、そしてその実装の舞台としての「循環型都市」への関心が世界的に高まっている。そうした中、9月3、4日の2日間、パシフィコ横浜ノースで「アジア太平洋循環型都市(APCC)フォーラム」が初開催される。テーマは「アジア太平洋地域における循環型都市移行への道筋~都市の結束と具体行動をGREEN×EXPO 2027とその先へ~」。横浜市の主催(共同主催:一般社団法人イクレイ日本)で、9カ国・約30都市のリーダーや国際機関、企業関係者ら約1000人が参加する見込みだ。フォーラムの責任者である山下朋美・横浜市グローバル都市戦略担当理事に、背景や見どころを聞いた。

interviewee
山下 朋美(やました・ともみ)

横浜市政策経営・国際戦略局 グローバル都市戦略担当理事

14回の積み重ねから生まれた

——横浜市は2012年から14回にわたりアジア・スマートシティ会議(ASCC)を開催してきました。今回、テーマを「循環型都市」に絞ったAPCCフォーラムに発展させた背景を教えてください。

循環型社会の実現は世界的な要請であり、日本最大の基礎自治体である横浜市がリードしていくのは、使命であり責務だと考えています。循環型社会の考え方自体は30年前から議論されてきましたが、気候変動や生物多様性の損失といったグローバルな課題が山積する中、もう「待ったなし」の状況です。議論する段階から、「いかに実装するか」という段階に入っている。そこで最大のテーマとして循環型都市にフォーカスしました。

世界が循環型社会に移行できるかどうかは、人口・経済活動・資源需要の増加が集中するアジアにかかっています。一つの都市だけでは解決できないので、都市間の連携が必要です。そこで「アジア循環型都市宣言制度(ACCD)(※)」という、都市が知見を共有し、連帯して行動に移す新たな枠組みをつくりました。その枠組みを軸に、同じ志を持つ都市のリーダーや実務者が一堂に会し、国際機関や企業などさまざまなステークホルダーとの知見共有によって、「宣言」を実際の行動につなげていく。そのためにAPCCフォーラムを立ち上げました。

ACCDの設立が発表された「アジア・スマートシティ会議2025」

アジア・スマートシティ会議の第1回は100人ほどの参加でしたが、回を重ねるうちに知見共有の大切さが理解され、大都市の首長や国際機関のキーパーソンにも参加いただけるようになり、2000人規模にまで成長しました。14回の蓄積があったからこそACCDができましたし、今回のAPCCフォーラムにつながっています。

アジアの多様性に合わせた独自枠組み

——ACCDの制度設計にあたり、先行する欧州の循環型都市宣言(CCD)から参考にした点は何でしょうか。また、アジア独自の工夫はどこにありますか。

かなり欧州のCCDに倣った形になっています。サーキュラーエコノミーへの移行戦略の策定や公共調達の促進など、10項目で構成されており、都市が共通の理念や方向性を共有しながら互いに学び、取り組みを加速させるという目的は共通しています。

一方で、アジアは経済発展の段階や産業構造、行政体制もさまざまです。人口急増への対応が必要な都市があれば、高度な都市サービスを展開している都市もあります。そのようなアジアの多様性を踏まえ、ACCDでは「都市は、開発レベルや利用可能な資源によって効果的なアプローチは異なる」という文言を明記しました。これは欧州のCCDにはない文言です。

もう一つ意識したのは、都市だけの賛同ではなく、国連機関や世界銀行など、都市の取り組みを資金面などで支援できる機関にも賛同を求めたことです。一つの都市では解決が難しい課題に対して、世界の支援機関を巻き込むスキームをつくっていきたい。

アジアには、経済発展の途上にある都市が多くあり、成熟したインフラの上に循環経済を構築するのではなく、廃棄物回収など静脈側から循環型の都市システムをつくっていく必要があります。ある意味、「これからつくる」やりやすさもあるのではないかと思います。欧州をモデルにしつつも、アジアはアジアの枠組みで取り組むことが重要だと考えています。

半世紀の国際協力が信頼の土台に

——2026年5月末時点で、7カ国26都市(人口規模で約5700万人超)がACCDに署名しています。横浜市が発起都市として、このネットワークを主導できた要因は何でしょうか。

正直に申し上げると、枠組みをつくるだけであればそれほど難しくありません。難しいのは、成長に目が向きがちなアジアの国々に循環型都市の必要性を理解していただき、賛同を得ること。そして国際機関にも賛同いただくことです。

横浜市は半世紀以上にわたって、都市づくりの知見を生かした国際協力を続けてきました。タイのバンコク、フィリピンのセブ、ベトナムのダナンなど、長年、1対1の都市間協力で培ってきた信頼関係が土台になっています。今回の宣言都市にも、横浜市が国際協力をしてきた都市がかなり含まれています。少し大げさかもしれませんが、横浜市だからこそできたことだと思いますし、われわれがリードしなければいけないという思いがあります。

各都市のリーダーと直接つながれる場

——今回のフォーラムでは、建設、製造、包装、DX、廃棄物インフラなど多様な業種の企業も参加すると聞いています。参加する企業にとってどのような機会がありますか。

国内外の約30都市のリーダーや実務者に加え、国連や世界経済フォーラム、エレン・マッカーサー財団など、世界の循環経済のキープレイヤーが来てくださいます。意思決定権を持つ都市のリーダーから、その都市の課題や次に何を実装しようとしているかを直接聞くことができる。それは企業の市場予測や投資判断にも直結するものだと思います。

まさに「フォーラム」であることの醍醐味ですね。閉じられた会議ではなく、普段は会う機会のない方々と名刺交換ができますし、ネットワーキングランチやポスターセッションなどの交流の場や「仕掛け」も設けています。循環型都市の国内外のキーパーソンがこれだけ集まる機会はなかなかありません。

横浜市の国際協力は、市内企業の技術を海外の課題解決に生かすこととセットです。企業の方々が求めているのは、現地の最新動向と、都市がこれからどうしようとしているかという意思を確認でき、キーパーソンとつながれること。このフォーラムは、まさにそれが実現する場です。

企業が都市に求めるものを可視化する

——9月4日のビジネスセクター・セッション「循環経済に向けた産業変革と都市の役割~循環経済を推進する企業は都市に何を求めるか~」では、竹中工務店やヤマハ発動機、日本テトラパックなど、異なる分野の企業が登壇します。何を議論し、どんな成果を期待していますか。

企業の実践事例を紹介するだけでなく、循環経済に取り組むリーディング企業がどのような課題に直面し、都市や自治体に何を求めているのかまで踏み込みたいと考えています。国は制度やルールをつくり、企業はサービスやソリューションを提供する。それらが実装される場所が都市であり、実装環境をつくるのが自治体です。自治体は資源の回収、公共調達、実証フィールドの提供、市民啓発など、さまざまな政策手段を通じて循環経済の市場形成に関わっています。その役割を企業の目線から語っていただくのが、このセッションの大きなポイントです。

サーキュラーエコノミーは一つの業種では完結しません。建築、製造のサプライチェーン、包装、静脈物流の効率化など、上流から下流まで密接に関わり合っている。業種間の接続性を重視し、経済活動と都市政策の接点を見出していきます。

このセッションの後には「官民対話セッション」を設け、横浜市の実務者が登壇します。企業の課題と横浜市の取り組みを重ね合わせ、より良い政策を公開の場で議論する仕組みです。企業との対話を通じて、行政としても気付きを得て、政策形成につなげていきたいと思います。

——もう一つ、特に注目してほしいセッションを教えてください。9月3日はオープニングに続き、プレナリーセッション、シティネット(アジア太平洋都市間協力ネットワーク)主催の「ゼロウェイスト都市に向けた実践」セッションなどが予定されています。

まさにその9月3日のメインセッション全体ですね。この日は終日、アジアの都市リーダーによるプレゼンテーションやディスカッションが行われます。企業の方々の日常のビジネス活動の中で、国内外の都市リーダーの考えをまとめて聞く機会はあまりないのではないでしょうか。各都市のリーダーがどのような課題認識を持ち、どのような未来像を描いているのかを直接聞ける機会は貴重です。都市のビジョンや政策の方向性を、ぜひ今後のビジネスに生かしていただきたいと思います。

「Yokohama Circular Week 2027」への布石

——2027年にはGREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)やAPUF-9(第9回アジア太平洋都市フォーラム)が横浜で開催されます。今回のフォーラムをどう2027年につなげていきますか。

2027年は、横浜が世界に循環型都市への移行を発信する絶好の機会だと考えています。GREEN×EXPOの開催期間中に、APCCフォーラムとAPUF-9を開催します。さらに「国際サーキュラー総合展」(主催:RX Japan合同会社、特別協力:横浜市)も同時期に開催されます。これらを「Yokohama Circular Week 2027」として打ち出し、相乗効果を最大化したい。APCCフォーラムは毎年開催していきますので、この第1回をぜひ2027年、その先へつなげていきたいですね。

昨年11月の「アジア・スマートシティ会議2025」の様子。APCCフォーラムにも多くの学生が参加する予定だ

APCCフォーラムでの議論とアクションは、GREEN×EXPOで発信される未来のグリーン社会の姿を、都市を舞台に実現させることにもつながります。APCCフォーラムがGREEN×EXPOのレガシーとなるようにしていきたい。2027年もぜひ企業の皆さんには楽しみにしていただきたいと思います。

横浜が担う「リーダー」と「ハブ」

——最後に、APCCフォーラムを通じて横浜市が果たしたい役割をお聞かせください。

大きく2つあります。一つはリーダーシップです。横浜市は、ACCDというアジア都市による国際枠組みを発起し、第1号都市として署名しました。率先して議論を政策に還元し、実装する姿を見せていくこと。それがアジアにおける横浜市の役割であり、期待されていることだと思います。

もう一つはハブの役割です。各都市の成功事例をアジアの共通財産にしていくナレッジハブ。そして自治体だけでなく、企業や大学、市民社会、国際機関など、異なる主体をつなげて共創を生み出す、出会いのハブ。議論で終わる会議ではなく、実証実験や新たな投資、国際連携が生まれる実装のハブとしてAPCCフォーラムを育てていきたいと考えています。

10年後、ACCDの宣言都市が広がるとともに、国際機関などの支援が入り、具体的なプロジェクトが生まれている。今の賛同の輪が具体的な形になっていれば、それが一番の成果です。

(※)ACCD(アジア循環型都市宣言制度/Asian Circular Cities Declaration):欧州の循環型都市宣言をモデルに、横浜市を発起都市として2025年11月にイクレイ日本が設立した、アジアにおける循環型都市の推進枠組み。横浜市が第1号署名都市となった。署名都市はサーキュラーエコノミーへの移行戦略の策定、公共調達の促進など10項目に取り組む。2026年5月末時点で日本、韓国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシアの7カ国26都市(人口規模で約5700万人超)が署名している。

◾️開催概要

名称:アジア太平洋循環型都市フォーラム2026(Asia-Pacific Circular Cities Forum 2026 / APCC Forum 2026)
テーマ:アジア太平洋地域における循環型都市移行への道筋~都市の結束と具体行動をGREEN×EXPO 2027とその先へ~
日時:2026年9月3日(木)〜9月4日(金)
会場:パシフィコ横浜ノース
主催: 横浜市 / 共同主催: 一般社団法人イクレイ日本(ICLEI Japan)
参加費:無料(事前登録制)
言語:英語(セッションにより日英同時通訳、日本語のみのセッションあり)
参加登録、詳細はこちら

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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