• 公開日:2021.05.24
コロナ禍の電気自動車普及で欧州自動車産業のCO2排出量は昨年12%減少
  • 廣末 智子

コロナ禍の2020年は自動車産業にとって、予想外の挑戦と、大きな変化の年だった――。自動車産業の世界的な調査会社であるJATOダイナミクスはこのほど、欧州21カ国を対象とする2020年の自動車販売台数を加味した平均の二酸化炭素(CO2)排出量は1km当たり106.7gとなり、前年の121.6gに比べて12%と大きく減少したとする最新のレポートを発表した。要因には新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、各国が自動車市場の持続可能な回復を目指す中で、電気自動車をはじめとする低公害車の普及が進んだことが挙げられ、消費者のモビリティに対する考え方も根本的に変わり、持続可能な選択肢を求めるようになったことを示唆している。(廣末智子)

調査の対象国は、オーストラリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スェーデン、イギリスの21か国。

EVなど販売台数 前年の46万台から121万台へ 全体の10.6%占める

レポートによると、21カ国全体のピュアEV(BEV:バッテリー電気自動車)およびプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の2020年の販売台数は、市場全体の10.6%を占める約121万台。前年2019年には市場全体のわずか3.1%、46万6000台であったのが急増した。これには、乗用車などの燃費やCO2および大気汚染物質の排出レベルについて国際的に整合した標準試験方法を定めたWLTP(Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure:乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)による燃費規制の施行など政府の規制強化や、電気自動車を支持する消費者の意識の変化などを背景に、各メーカーが販売車種や台数を大きく増やしたことに起因するが、同レポートでは、とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大が電気自動車の普及を後押ししたことが大きいとみる。

コロナ禍で打撃を受けた自動車市場の完全回復に向け、欧州各国は環境に配慮した持続可能な復興を目指しており、一部の政府は経済刺激策の中で新たな購入奨励策を打ち出した。欧州各地でロックダウンが実施される中、多くの政府がゼロエミッション車(ZEV)や低公害車への優遇措置を提供し、各メーカーは消費者をEVやPHEV車に誘導するために商品やマーケティングを変化させてきたのだ。

その結果、多くの消費者がコロナ禍で従来のガソリン車など内燃機関車に代わり、低排出ガス車を購入した。これによって内燃機関車の台数は2019年の1470万台から2020年は860万台にまで減少し、このことが前年に比べて約15g、12%も減少した、1km当たり106.7gというCO2排出量になって表れたと考えられる。

1km当たりのCO2排出量が100gを下回ったのは、オランダ、デンマーク、ポルトガル、スウェーデン、フランス、フィンランドの6国。これはそのまま電気自動車の販売台数が多い国のランキングを反映しており、1位2位はスウェーデン(32%)とオランダ(25%)で、以下、フィンランド、デンマーク、ポルトガルの順になっている。これに反して、スロバキアとチェコ、ポーランドではCO2排出量の平均値が最も高く、電気自動車の普及率も低いという傾向が見られた。

成長の原動力はSUV 電動化の次のターゲットに

一方、車種別ではSUVが成長の原動力となり、過去に人気のあったハッチバックやセダン、MPV、ワゴンなどの販売台数の減少を緩和した。2020年のSUVの販売台数は乗用車全体の40%を占め、車種別のCO2の平均排出量でみても、SUVは前年比で1km当たり16.2g減少しており、5つのメガセグメント(普通車、MVP、スポーツカー、SUV、バン)の中でも最高の結果となった。これは、PHEVおよびBEVの中型や大型のSUVのラインナップが充実してきたことが一因になっていると考えられる。

もっともSUVが乗用車セグメント(シティカー、サブコンパクト、コンパクトカー、ミッドサイズ、エグゼクティブ、ラグジュアリー)よりも大きな排出量を生み出していることに変わりはない。平均してSUVは他の自動車より18%多くCO2を排出し、スモールSUVでさえ乗用車より平均排出量が多いのが現状。SUVは電動化の次のターゲットであり、今後数カ月のうちにさらなる進展があることが予想されるという。

今回の調査結果に対し、JATOのグローバルアナリストであるフェリペ・ムニョス氏は、「欧州委員会の排出量削減目標(2030年に1990年比で少なくとも55%とする)の達成に向け、業界はまだ多くのことをする必要があるが、各メーカーは2020年に販売車種や台数を増やすことで大きく前進したことを証明した」と総括した上で、「何百万人もの潜在的顧客が家から出られなかった年に、CO2の平均排出量が前年に比べて1km当たり15gも減少したことは注目に値する。これは私たちのモビリティに対する考え方が根本的に変わり、持続可能な選択肢を求めるようになったことを意味している」と指摘。さらにSUV市場に大きな可能性があることを含め、「自動車メーカーには、混乱の1年を経て前向きになれる理由がある。自動車メーカーは消費者が今求めているもの、つまりゼロエミッション車や、低公害車のSUVに注力することで、販売台数の減少を速やかに相殺できるだろう」と話している。

written by

廣末 智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年から2025年までサステナブル・ブランド ジャパン編集局でデスク兼記者を務めた。

Related
この記事に関連するニュース

EVは本当に「低迷」しているのか? データで読む世界市場の正しい現在地
2026.06.04
  • ワールドニュース
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
猛暑とエネルギー危機にどう挑むか 気候変動から命を守る「緩和と適応」を議論
2026.06.03
  • ニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
脱化石燃料に向け、「全会一致」で停滞する国連枠組みを補完する「有志国」
2026.06.02
  • ワールドニュース
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
「環境かコストか」の二項対立を乗り越える 三井化学が捉えた「エコバリュー派」の実像
2026.05.27
  • インタビュー
  • スポンサー記事
Sponsored by 三井化学株式会社
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

News
SB JAPAN 新着記事

「Pride Action30」賛同が100社を突破 LGBTQ+支援で企業が連帯
2026.06.19
  • ニュース
  • #パートナーシップ
  • #人権
  • #ダイバーシティー
TNFDがCFO向け指針公表 自然リスクを防ぐ「社内に問うべき11の質問」とは
2026.06.18
  • ワールドニュース
  • #生物多様性
JICAとLIXIL、SATOで連携 アフリカに「衛生経済」創出へ
2026.06.17
  • ニュース
  • #エシカル
  • #パートナーシップ
世界平均気温、近く観測史上最高を更新か 国連機関が予測、気象予報の基盤整備急ぐ
2026.06.16
  • ワールドニュース
  • #気候変動/気候危機

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • コロナ禍の電気自動車普及で欧州自動車産業のCO2排出量は昨年12%減少