• 公開日:2026.07.22
AI時代のデータセンターは都市と共存できるか C40が協定を発表
  • 遠藤 康子
image credit: C40 CITIES

AIは、多くの人にとってなくてはならないテクノロジーとなった。しかし、その利便性を支えているデータセンターについては、環境への悪影響や水と電力の大量消費など、何かとネガティブな評判も付きまとう。また、開発スピードがあまりにも速く、規制や管理体制の整備もまだまだ不十分だ。

そうした状況を打開し、地域社会と足並みのそろったデータセンターの開発を目指そうと、世界各地の都市の首長が立ち上がった。環境を守り、地域の発展にもつながる持続可能な都市型データセンターを実現するにはどうすればいいのか、その道筋を示した協定がスタートした。

急がれる都市型データセンターへの対応

世界41都市の首長が、持続可能な都市型データセンターの実現を掲げて「The Global Urban Data Centres Pact(都市型データセンターに関するグローバル協定)」を結んだ。世界中の都市部でデータセンターの建設が相次ぎ、環境負荷や地域への影響などが懸念されている。

これを踏まえ、データセンターによる経済的なメリットと、地域社会と環境との両立を目指す協定が結ばれた。賛同の意を示して署名したのは、C40(世界大都市気候先導グループ)加盟都市の一部で、ロンドン、コペンハーゲンやミラノなど欧州7都市、ボストンやシカゴなど米国17都市、豪州やインド、南アフリカ共和国、フィリピンなどの都市が名を連ねている。

データセンターは、デジタル化が進んだ現代社会を支えるインフラとして不可欠だ。とりわけ近年は、膨大なデータ処理能力を必要とするAIが爆発的に普及したことを受け、市民が暮らす地域に次々と建設されている。しかし、データセンターの機器設備は、電力やサーバー冷却用の水を大量に消費したり、熱を排出したりするため、地域住民から生活や環境への悪影響を懸念する声が上がることが少なくない。実際、開発側との対立に発展した例も報じられている。

一方で、データセンターは雇用創出などを通じて地域経済を潤すという側面も持つ。利益と影響のバランスを取りながら持続可能なデータセンターを実現するためには、ローカルガバナンスの強化が急務となっている。

急成長に規制が追い付かない

首長らは何も、都市型データセンターそのものを否定しているわけではない。この協定では、クリーンなエネルギーの使用や公平な費用負担、全ての地域住民に有益な開発を求め、各都市がそれぞれの状況に応じて持続可能な開発を進めていけるよう支援することを目指している。

協定が発足した背景には、データセンターが短期間で一気に増えたことで、自治体の対応が後手に回っているという事情がある。ロイター通信の記事によると、C40副議長を務める豪メルボルンのニコラス・リース市長は、データセンターへの投資は「猛烈なペース」で進んでいるのに規制がそれに追い付いておらず、「競争が過熱」して環境審査を迂回するケースも生じていると憂慮する。

同じくC40副議長を務める米フェニックス市のケイト・ガイエゴ市長は公式発表の中で、フェニックス市ではデータセンターの急増により、送電網への負荷が倍増する見通しだと明かしている。そうした状況に対処するため、同市は土地利用規制条例を改正し、データセンターを工業地域外に建設する場合は市議会から許可を得ることを定めた。騒音対策として設備の設置位置を規制したほか、歩道への植樹も義務化したという。

C40は公式発表で、「データセンターの急拡大によって政策に重大な空白が生じ、都市のリーダーは地元の資源を守る必要に迫られています」としている。

協定を支える4本の柱

協定は、4本の主要な柱を基に、世界に共通する都市型データセンターのビジョンを打ち出している。

1.データセンターを戦略的な形で都市に組み入れる

  • データセンターを建設する際は、使われていない工業用地や既に存在する施設をできるだけ転用し、住民が移転せずに済むよう計画する。
  • 立地は地元自治体と協議の上で決定し、コンパクトで省スペースな設計を重視する。
  • 大気汚染や騒音被害、排熱による気温上昇など、地域社会に余分な負担をかけない。

2.資源効率に優れた持続可能な運用を行う

  • 主電源とバックアップ電源の電力は、化石燃料発電所を新設したり、既存発電所の稼働を延長したり、閉鎖された発電所を再稼働させたりすることなく賄う。
  • 敷地内の発電設備では化石燃料を一切使用せず、再生可能エネルギーによる発電・蓄電を新規・追加で確保する。
  • 温室効果ガス排出量や水使用量については、最高水準のサステナビリティ基準を守り、できる限り環境に負荷をかけず、共有資源に依存しない。
  • 施設から排出される熱は回収し、地域社会のために有効活用する。

3.説明責任を果たし、コミュニティを尊重する

  • エネルギーや水の使用量、空気の質、騒音レベルなどの主要な環境指標については、測定可能なベンチマークデータとして公表し、透明性を保つ。
  • 地域社会と対話を重ね、直接的に関与する。
  • 調達は地元企業を優先する。
  • 地元への投資を通じてグリーンジョブ(環境や持続可能性に貢献する仕事)を創出し、目に見える利益を地域経済にもたらす。

4.コストを公平に負担して繁栄を共有する

  • 送電網や水システムといったインフラの改修資金を直接拠出して、コストを公平に負担する。
  • 持続可能性への貢献度に応じた適正負担価格を導入し、余剰利益を地域の社会インフラなどを支える資金として投じることで、地域社会に還元する。

デジタル経済との共存に向けて

ロンドンのサディク・カーン市長は声明で、「AIやデジタルインフラは、都市がこれから繁栄していく上で大きな役割を果たします。しかし、住民が責任ある開発と管理を求めるのはもっともです」と述べた。

実際、裏側では驚くべき変化が進んでおり、それが数字に表れている。国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)が2026年6月3日に発表した報告書によると、データセンターの年間水消費量は2030年までに、サハラ砂漠以南のアフリカで暮らす13億人が1年間に使用する生活用水の量に達するという。また、年間電力消費量は2025年から倍増し、パキスタン、バングラデシュ、ナイジェリアの3カ国の年間電力需要の3倍に相当する見込みだ。

しかし、協定で示された4本の柱に沿ってデータセンターを整備すれば、天然資源やエネルギー価格、気候目標を犠牲にすることなく、効率よく資源を使いながら、誰もがクリーンなエネルギーを公平に利用でき、地域を発展させていける、と声明は訴えている。

デジタル経済は都市の一部として共存すべきであり、都市の営みを圧迫するものであってはならない――首長らはそう宣言している。

この協定は、2026年6月下旬に開催された気候変動問題を話し合う年次イベント「ロンドン・クライメート・アクション・ウィーク」に合わせて発表された。

C40は、気候変動対策に取り組む世界96都市が加盟する国際的ネットワーク。日本からは東京都と横浜市が加盟しているが、C40が公表している今回の協定の賛同都市一覧では、2026年7月13日現在、両自治体の名前は確認できない。

<参照サイト>

「都市型データセンターに関するグローバル協定」
https://www.c40.org/wp-content/uploads/2026/06/Global-Urban-Data-Centres-Pact.pdf

C40のプレスリリース
https://www.c40.org/news/mayors-from-around-the-world-unite-in-call-for-sustainable-urban-data-centres/

Global urban data centres: White paper
https://www.c40knowledgehub.org/s/article/White-paper-Urban-data-centres?language=en_US

ロイター通信(「City mayors from London to Melbourne seek to curb data centre burden on power, water」)
https://www.reuters.com/sustainability/cop/city-mayors-london-melbourne-seek-curb-data-centre-burden-power-water-2026-06-22/

written by

遠藤 康子(えんどう・やすこ)

フリーランス英日翻訳者。英語講師、日本語講師を経て、現在はウェブニュース、雑誌記事、書籍の翻訳を手掛ける。訳書に『子どものためのセルフ・コンパッション』(創元社)など、共訳書に『これからの「社会の変え方」を、探しに行こう。』(SSIR Japan)などがある。

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