• 公開日:2026.06.02
脱化石燃料に向け、「全会一致」で停滞する国連枠組みを補完する「有志国」
  • 茂木 澄花
写真提供:Transitioning Away from Fossil Fuels 公式ウェブサイト

南米コロンビアのサンタマルタで、4月24日から29日、化石燃料からの脱却を目指す国際会議の第1回が開かれた。全会一致を必要とする国連の枠組みが停滞する中、それを補完するための有志国の集まりとして、コロンビアとオランダが共同で主催したものだ。「脱化石燃料の是非」ではなく「どのように脱化石燃料を実行するか」に特化した会議で、57カ国の代表などが参加した。公表された成果には、脱化石燃料に向けたロードマップ(工程表)の策定支援や、作業部会・科学パネルの設置など、今後につながる具体的なものが目立った。

COPの限界と「有志国連携」の加速

「化石燃料からの脱却」という文言自体は、2023年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の合意文書に明記されている。2025年11月のCOP30では、脱化石燃料に向けた具体的な道筋であるロードマップの策定で合意できるかが焦点となった。議長国ブラジルの呼びかけに80カ国以上が賛同したものの、一部の産油国などの強硬な反対を受け、成果文書での化石燃料に関する言及自体が避けられた。

全会一致を原則とするCOPの枠組みの限界が露呈した形となり、議長国ブラジルは、COPの枠組みの外でロードマップ策定を主導すると発表した。今回の国際会議も、そうした有志国による取り組みの一つだ。会議の概要ページでは「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)やCOPに代わるものではなく、それらを補完するもの」と強調されている。

また、脱化石燃料に懐疑的な立場の者を説得したり、化石燃料に関する新たな条約締結に向けて交渉したりする場ではないことも明記されている。あくまで、脱化石燃料に前向きな主体を後押しするため、共通の理解や行動指針を生み出すことを目指す会議と位置付けられる。第1回会議には、世界のGDPの約3分の1を占める57カ国の代表のほか、地方自治体、専門家、NGO、国際開発金融機関なども参加した。米国、中国、ロシア、インド、日本、中東の産油国などは参加しなかった。

議論は、「化石燃料に依存した経済からの脱却」「需要と供給の変革」「国際協力と気候外交の推進」を中心にまとめられた。その中から、主な成果を紹介していく。

ロードマップ策定に向けた取り組み

今回の会議での議論は、COP30議長国ブラジルが進めているロードマップ策定に生かされる。また、各国が国別削減目標(NDC)に沿ったロードマップを策定できるよう支援する作業部会の設置も確認された。NDCの策定・実施を支援する協力枠組みであるNDCパートナーシップや、今回会議で設置された科学パネル(後述)などと連携する。

国ごとにロードマップを策定する動きはすでに始まっており、フランスは同会議でロードマップを発表した。石炭は2030年、石油は2045年、天然ガスは2050年までに、エネルギー用途での利用を終了するという目標を掲げた。

他の枠組みとの連携

第2回以降の会議につなげるため、第1回会議と第2回会議の共催国などで構成される「調整グループ」が設置された。このグループは、COP30で議長国ブラジルが立ち上げた「公正で秩序ある、公平な化石燃料からの移行」に関する作業部会とも連携するという。

今回の会議の報告書は、COP31本会議の準備会合として6月に開催されるUNFCCCのボン会議に共有される。国連総会期間に合わせて9月に開催される気候イベント「クライメート・ウィークNYC」では、国連事務総長にも提出されるという。世界最大級の独立系気候イベントである「ロンドン・クライメート・アクション・ウィーク」でも発表が予定されている。国連の枠組みに加え、非国家アクターによる取り組みとも幅広く連携を深める意図が見える。

経済・金融システムの改革

化石燃料依存からの脱却に向けた制度改革などを検討する作業部会の設置が決まった。カナダに本拠地を置く独立系の国際シンクタンク国際持続可能開発研究所(IISD)と連携する。金融システム、投資促進、資金動員、債務問題、補助金などの問題を扱う予定だ。

多くの国で財政や経済が化石燃料に依存していることから、脱化石燃料を実現するには経済の構造転換が必要になる。また、多くの途上国が債務危機に陥っていることや、再エネ投資の資金が不足していることから、各国内の制度だけでなく国際金融アーキテクチャを改革する必要性も指摘された。

生産国と消費国の協力強化

経済協力開発機構(OECD)の支援のもと、化石燃料の生産国と消費国の協力のあり方を検討する作業部会も設置されることとなった。化石燃料に依存しない貿易体制や経済の実現に向け、人や地域経済に配慮した移行を検討する。

世界人口の約75%が化石燃料の輸入に依存する国に住む現状から脱却するには、生産国と消費国が連携し、段階的に縮小することが必要だ。需要や供給の急激な変化は、エネルギー価格高騰や雇用崩壊といった混乱を招くためだ。今回の会議は、世界有数の石油・石炭輸出国であるコロンビアで開催された上、豪州、ブラジル、カナダ、アンゴラなど供給側の国が多く参加した点で、画期的と言える。

科学パネル設置

同会議中に、「グローバルなエネルギー転換のための科学パネル(SPGET)」が発足した。1.5度目標に整合するロードマップ策定を支援し、法制度、金融、政治といった面での障壁を克服するため、科学に基づいた助言を提供する役割を担う。

 

第2回会議は2027年に、ツバルとアイルランドが共同開催することが決まっている。有志国の取り組みが世界的にどれだけの影響を及ぼすのか。世界がエネルギー危機に直面する中、脱化石燃料を加速できるか。日本の立場はどうなっていくのか。既存の枠組みを補完する新たな多国間連携に注目が集まる。

【参照サイト】

Transitioning away from Fossil Fuels
https://transitionawayconference.com

フランス 脱化石燃料ロードマップ
https://www.ecologie.gouv.fr/sites/default/files/documents/202604_France%27s_roadmap_to_transitionning_away_from_Fossil_Fuel_EN.pdf
written by

茂木 澄花 (もぎ・すみか)

フリーランス翻訳者(英⇔日)、ライター。 ビジネスとサステナビリティ分野が専門で、ビジネス文書やウェブ記事、出版物などの翻訳やその周辺業務を手掛ける。

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