• 公開日:2026.07.15
「きれい事を勝ち筋に」nestがタキヒヨーと描く2040年のサステナビリティ 
  • 眞崎 裕史

サステナブルな未来の担い手となる若者が集うサステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティ「nest」。第5期の6月定例会は、1751年創業の繊維専門商社タキヒヨー(名古屋市)をゲストに迎え、「2040年のニュースを考えよう」をテーマに開催された。同社サステナブルPRチームの森康智氏から、サステナビリティを事業成長の手段に変える発想を学んだ後、メンバーはタキヒヨーの社員になりきって他社との協業による2040年のサステナブルアクションを構想。身近なファッションを切り口に、ビジネスと社会課題解決の両立に挑んだ次世代の姿をレポートする。

「創る商社」が説くサステナの実利

タキヒヨーは年間約5000万枚の衣服を手がけ、企画デザインから生産・品質管理・物流まで一貫して担う「創る商社」だ。中国やASEANに広がる生産ネットワークを通じて、消費者の手元に届くまでの工程のほぼ全てをコントロール。森氏は「サステナビリティは、昔はきれい事で、今は義務と言われるが、僕たちからするともう勝ち筋だ」と語り、コストではなく投資として事業に組み込む重要性を説いた。

背景には、繊維産業を取り巻く構造変化がある。国内衣料市場の縮小が進む一方、ESG投資は急拡大している。大手ブランドはサプライヤーの「見極めと絞り込み」を始めており、サステナビリティに対応できない企業は取引の土俵にすら上がれなくなりつつあるという。森氏は制度対応や国際認証の要請といった「守り」と、新素材開発やLCA(ライフサイクルアセスメント)を活用した付加価値創出という「攻め」の双方を、国内外の事例を交えて解説した。

森康智氏

海運に関わる会社のユニフォームを海洋プラスチック由来素材で刷新し「海のゴミを、企業の誇りに」変えた事例や、アウトドアブランドのファンとともに衣類回収・再生の循環を築いたプロジェクトを紹介。その核にある考え方を「ブランドの持つ背景と社会潮流を掛け合わせた、ストーリーのあるサステナビリティ」と説明した。

サステナビリティが「意識高い系」と見なされがちな現状にも触れ、量販店でリサイクル素材や子ども向けのエシカル企画に取り組んだ経験も紹介。「自分の好きなブランドが、そのブランドらしい理由で取り組んでいたら、一緒に関わろうとなる。企業らしさと社会の文脈をつなげて初めて、受け入れられる取り組みになる」と語り、「それが社会をちょっとだけ良くする」と結んだ。

タキヒヨー社員になりきり2040年を構想

ワークショップでは、メンバーがタキヒヨーの社員になりきってパートナー企業を選定した。選んだ企業のブランド背景を調査し、2040年の社会潮流を予想した上で、両者を掛け合わせたサステナブルアクションを開発。最終的にプレスリリースの形にまとめ、チームごとに発表した。

5チームの提案は多彩だった。スポーツブランドと組んで子どもの成長に合わせた衣服リユースの仕組みを構築する案、大手外食チェーンの廃油から繊維を生み出しスタッフの制服に採用する構想、地方のビールメーカーが地域住民から回収した衣類で看板Tシャツを再生する提案、コーヒー豆かすから機能性インナーを開発し全国のコンビニやネット通販で届ける企画、鉄道会社と温度調節機能付きの座席シートを繊維循環で実現するアイデア。

「2040年は夏に42度から45度が日常になる」という想定から出発した提案もあり、気候変動という第5期の年間テーマを自分たちの構想に落とし込む力が発揮されていた。

企業の最前線をうならせた着想

発表後、メディア賞にはサステナブル・ブランド ジャパンの記者が「記者目線で最も取材したい」と感じた提案として、大手外食チェーンとの協業案を選出。記者は「全国数十万人の制服が一気に変わるインパクトと、14年後には社会の常識が変わっているという希望を感じた」と評した。

タキヒヨー賞には、地方のビールメーカーとの衣類循環を提案したチームが選ばれた。森氏は「ひとつの品番を変えるのではなく、ボディそのものをリプレースするのは企業姿勢の表れ。地域住民の歴史が乗ったTシャツを観光客が手に取る。打ち上げ花火ではなく、取り組みとともに企業が歩んでいくストーリーが築けている」と講評した。

全チームの発表を聞いた森氏は「もしかしたら、どれかをまねるかもしれません」と笑い、メンバーの着想に手応えを感じていた。食品系の素材をアパレルに転用する提案が複数出たことについても、「実は自社でもコーヒー染めの実績がある」と明かし、食品とアパレルの親和性に着目した発想を高く評価。サステナビリティの最前線で奮闘するプロをもうならせるアイデアが、次世代の自由な発想から生まれた。

次回7月の定例会では、愛知県春日井市の王子製紙春日井工場を訪問。日本製紙連合会との共創による製造現場の視察が予定されている。「ストーリーのあるサステナビリティ」を学び、自ら体現し始めたnestの探究は、現場のリアリティとともに深まっていく。

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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