• 公開日:2026.07.01
環境課題に挑む10代のアイデアが集結! アース・プライズ2026受賞プロジェクトを紹介
  • 茂木 澄花

グローバル優勝に輝いたインドのチーム(image credit: The Earth Prize)

13歳から19歳を対象とした世界的な環境賞「アース・プライズ(The Earth Prize)」の表彰式が、5月29日に開かれた。世界7つの地域からそれぞれ地域優勝チームが選ばれ、アイデアの実現に使える1万2500ドルの賞金が授与された。さらに、地域優勝チームの中から一般投票で決まるグローバル優勝には、水中のマイクロプラスチックを回収できる粉末を開発したインドのチームが選ばれた。本記事では、グローバル優勝チームとその他6つの地域優勝チームの取り組みを紹介する。

若者のアイデアを育て、実現を後押し

アース・プライズは、スイスに本拠地を置く非営利団体が2021年から開催している学生向けの環境コンテストで、今回で5回目となった。世界の環境課題を解決するアイデアを持つ若きイノベーターたちを後押しすることを目指している。

全世界の13~19歳の学生が、5人までのチームで応募することができ、今回は136の国と地域から約6150人の学生が参加した。これは前年に比べて4割ほど多い人数だ。初回からの累計では、169の国と地域から2万人を超える学生が参加している。

応募した全てのチームには、環境やサステナビリティに関する学習コンテンツが提供されるとともに、チームごとにそうした分野を専攻する大学生らがメンターとして付く。これらを活用して、アイデアをブラッシュアップできるのだ。こうしてまとめられた最終アイデアが審査を受け、欧州、アフリカ、中東、アジア、オセアニア・東南アジア、北米、中南米の7つの地域からそれぞれ地域優勝チームが選ばれた。各地域優勝チームには、アイデアを実行に移すための賞金1万2500ドルが授与された。

7つの地域優勝チームからグローバル優勝チームを決定する際には、一般投票が行われ、今年は約2万3000票が投じられた。その結果、インドの16歳3人組による「プラスティック(Plas-Stick)」プロジェクトがグローバル優勝に輝いた。

タマリンドの種でマイクロプラを凝集

安全な水インフラが整備されていないインドの農村地域では、飲み水を共有のプラスチック製貯蔵容器に入れて保管していることが多いという。そのため、飲み水にマイクロプラスチックが混入してしまう可能性も高い。

メンバー3人は、実際に農村地域を訪れた際、地元の子どもたちが共有のプラスチック製容器から水を飲む様子を目にしたという。人々が飲み水を通じてマイクロプラスチックにさらされている現状に課題を感じ、解決策を考えようと決心したそうだ。

3人は、通常はごみとして捨てられるタマリンドの種を原料とした生分解性の粉末を開発した(タマリンドはインドで一般的に食べられているフルーツ)。この粉末を水に入れると、マイクロプラスチックの粒子が凝集して目に見える大きさの塊になるという。この塊は磁石に引き寄せられるため、電気や複雑な機械などを使わずに簡単に取り除ける。

粉末を水に入れるとマイクロプラが凝集し磁石に付く(image credit: The Earth Prize)

3人は専門家の助言も受けながら製品の試験を行い、分散型の生産拠点を使ってインド全土の農村地域に展開しようと計画している。世界には安全に管理された飲み水のインフラにアクセスできていない人が22億人以上いると言われる中、さらなる拡大も期待される。

環境中のマイクロプラを減らすプラスチック

欧州地域優勝 アルヤ・サティーシュ(image credit: The Earth Prize)

欧州の地域優勝者は、アイルランドの18歳、アルヤだ。アルヤは「エコパージ」という生分解性プラスチックを開発した。エコパージは、特殊な酵素を組み込める植物由来のプラスチックだ。分解過程でその酵素を放出することで、環境中にある他のマイクロプラスチックの分解も促進できるという。アルヤは、アイルランドの大学や研究機関の研究者と共同研究を実施しており、すでに実用可能なプロトタイプの開発が進んでいる。

土に置くと分解され、酵素を放出する(image credit: The Earth Prize)

アルヤは、今回受け取った賞金を活用して、包装材やコンポストの袋としてエコパージの実用化を目指すという。新たなマイクロプラスチックの発生を防ぐだけでなく、すでに環境中に放出されてしまったマイクロプラスチックを減らすための解決策として注目が集まる。

トウモロコシで自動車の排気をきれいに

アフリカ地域優勝「ヘワサフィ」チーム(image credit: The Earth Prize)

アフリカ地域を制したのは、ケニアの17歳コンビによる「ヘワサフィ(HewaSafi)」プロジェクト。「ヘワサフィ」はスワヒリ語で「きれいな空気」という意味だ。アフリカの都市部では、自動車の排ガスを主な要因とする大気汚染が深刻化している。実際、ヘワサフィのメンバーも、大気汚染によって深刻な肺疾患を患った経験を持つ。この問題を解決するため2人は、トウモロコシ、農業廃棄物、廃棄されたバッテリー、ココナッツの殻、藻類を使ったフィルターを搭載した自動車排気システムを開発した。

排ガスを浄化する従来の装置は、部品が高価で盗難の被害に遭いやすいという。それに対しヘワサフィは、安価に調達できる材料で作られている点が画期的だ。すでに小型の乗り合いバスの協会と提携して実証実験が行われている。2人は今後、交通事業者と連携して都市部での利用拡大を目指したい考えだ。

ガザのがれきから希望を築く

中東地域優勝「ビルド・ホープ」チーム(image credit: The Earth Prize)

中東地域で優勝したのは、パレスチナのガザ地区に住む17歳と15歳の姉妹だ。2人は、自宅が爆撃を受けたことをきっかけに、がれきをリサイクルしてれんがを製造するプロジェクト「ビルド・ホープ(Build Hope)」を始めた。壊れた建物から出たがれきを粉砕して選別した後、粘土、灰、ガラスの粉末といった結合剤と混ぜ合わせ、型に流し込んで乾燥させる。特別な重機や設備は必要ない。こうしてできあがったれんがは、花壇や舗装、間仕切りなどに使える。

れんがの試作品(image credit: The Earth Prize)

2人はワークショップという形で若者を集めてれんがを生産しながら、この技術を伝えていきたい考えだ。その若者たちがさらに他の人にも広めることで、さらに多くの人に届くことが期待される。

野鳥の家を作り、森を守る

オセアニア・東南アジア地域優勝 ヤニン(プラウド)・タンカラバクーン(image credit: The Earth Prize)

オセアニア・東南アジアの勝者は、タイの17歳、プラウドだ。世界的に個体数の減少が進む野鳥、サイチョウの保護プロジェクトに取り組んでいる。タイ・サイチョウ研究財団(Thailand Hornbill Research Foundation)と連携したこのプロジェクトの名前は「サイチョウの家(Homes for Hornbills)」。プラボトルなどからリサイクルして作った人工の巣を設置するとともに、個体数減少の原因となっている密猟や森林伐採を減らすため、地域社会と連携して新たな収入獲得の機会を生み出そうとしている。

設置した巣とサイチョウ(image credit: The Earth Prize)

タイ南部に設置した20個の巣のうち、すでに14個には実際にサイチョウが住んでいるという。2025年には14羽のひなが無事に巣立った。プラウドは今後、受け取った賞金を使い、他の主要な生息地でも地域社会と連携して活動を広げていきたい考えだ。

ビーチに漂着する厄介な海藻を有効活用

北米地域優勝 エレナ・ド=レゴ(image credit: The Earth Prize)

北米地域の代表は、プエルトリコの17歳、エレナ。「サルガッサム」という海藻を使った繊維素材「サルガテックスPR」を考案した。サルガッサムは、プエルトリコのビーチに大量に漂着し、悪臭を放つなど問題になっている。この海藻を有効活用できないかと考えたエレナは、ビーチサンダルやスパ用のサンダルなどに適した生分解性の素材を開発している。

この素材が解決し得る課題は他にもある。プエルトリコでは、年間11万トンを超える繊維製品が廃棄されており、リサイクル率は10%前後にとどまっている。島内の埋立地はすでに容量の85%に達しているという。化学繊維から洗濯時に流れ出るマイクロプラスチックは海洋汚染にもつながっている。サルガテックスPRがこうした化学繊維を代替するようになれば、ビーチの環境改善に加え、廃棄物や海洋汚染の問題も解決に近づくだろう。

人にも環境にも優しいばんそうこう

中南米地域優勝「ハダ」チーム(image credit: The Earth Prize)

中南米地域の優勝プロジェクトは、ブラジルの17歳コンビによる「ハダ(HADA)」。アロエベラとカモミールを原料とした生分解性のばんそうこう開発プロジェクトだ。プラスチックを使用した一般的なばんそうこうは、単に傷口を覆うだけで傷の治りを助ける効果はないことが多い。それに対してハダは、皮膚組織の再生を促進する効果があるという。

ばんそうこうの試作品(image credit: The Earth Prize)

日頃からスポーツに打ち込んでおり、ばんそうこうを使う機会が多いという2人の日常の問題意識が今回のプロジェクトにつながった。2人はアース・プライズの賞金を使ってこの技術の検証と改良を進め、生産を拡大し、学校やスポーツ施設、医療現場などに導入していきたい考えだ。実現すれば、プラスチックの使用と廃棄を減らすことにもつながるだろう。

*******

身近な問題意識から画期的な解決策を生み出したプロジェクトの受賞が目立った今年のアース・プライズ。受賞をきっかけに、実際に社会で生かされていくことが期待される。

2027年のアース・プライズの応募はすでに始まっている。応募締め切りなどについては、最新情報を公式サイトで確認されたい。

【参照サイト】

The Earth Prize
https://www.theearthprize.org/

written by

茂木 澄花 (もぎ・すみか)

フリーランス翻訳者(英⇔日)、ライター。 ビジネスとサステナビリティ分野が専門で、ビジネス文書やウェブ記事、出版物などの翻訳やその周辺業務を手掛ける。

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