
持続可能性や気候変動、環境に関するイベントが毎月のように行われ、企業はここぞとばかりにグリーンやエコを訴える。しかし、名ばかりのアピールが横行した結果、消費者もグリーンウォッシングに目を光らせるようになった。
慎重さが必要とはいえ、しかるべきタイミングで、中身の伴ったしかるべき環境主張を行えば、効果は絶大だ。企業がイベント時期に環境への取り組みを発信する際、立ち止まって自問自答すべき5つの問いを紹介しよう。(翻訳・編集=遠藤康子)
企業が情報発信で陥るジレンマ
企業がサステナビリティへの取り組みについて情報発信する際に重要なのは、タイミングだ。地球環境について考える毎年4月の「アース・マンス」や、9月の国連総会に合わせて行われる気候イベント「クライメート・ウィーク」、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)のほか、各業界で大きな会合などが開かれている。こうしたイベントの開催時は、責任ある企業活動とは何かを語るのにうってつけであり、自社の進捗状況と関心を集めている話題とを結び付ける絶好の機会だ。
とはいえ、そうした時期には、世間から向けられる目がより厳しくなるのも事実だ。政治的な分極化が進み、ESGへの反発が起き、気候変動対策をアピールする企業の主張に懐疑的な見方が強まったことで、サステナビリティに関する情報は、以前とは違った受け止められ方をするようになった。仏コンサルティング会社キャップジェミニが2025年9月に発表したサステナビリティトレンド報告書「A world in balance 2025」によると、「企業はグリーンウォッシングを行っている」と回答した消費者は62%と、2023年の33%、2024年の52%より増えている。
一方で、サステナビリティへの関心が高まっているのに何のメッセージも発信しなければ、それはそれで問題が起きかねない。調査会社グローブスキャンによると、ESGへの反発を受けて、企業が気候変動やサステナビリティに関する情報発信を差し控えるようになった。それに伴って消費者が企業の取り組みを知る機会が減ってしまい、企業への信頼が低下し続けているという。
中身のある成果を上げており、それを伝えたい企業にとって、サステナビリティへの関心が高まる時期はさしずめ、自社の発信内容が信頼に足るものか否かを検証するチェックポイントだ。十分な裏付けがあり、具体的かつ透明で、いつも以上に厳しい目を向けられても問題がないかどうかを見極める機会にすればいい。
情報発信前に再確認すべき5つの問い
サステナビリティに関心が集まっている時期に自社の取り組みを公表する場合は、本当に準備が整っているかどうかを判断するために、次の5つの問いについて確認してみよう。
1.発信する情報を裏付ける証拠はあるか
気候やサステナビリティについて語る際には、責任や志、道のり、リーダーシップ、ビジョン、改革など、意味が広く具体性に欠けた言葉が多用される。聞こえがよく、文字で見ると説得力があるように思えるが、そうした言葉だけでは、信頼を獲得することなど無理に等しい。
信頼を得たいなら、まずは証拠を見せなくてはならない。進捗状況を公表する時は、何が変わったのか、いつ変わったのか、どうやって測定したのか、結果的にどのような業績や環境的・社会的な成果が得られたのか、を示す必要がある。場合によっては、温室効果ガス排出量のデータや、廃棄物削減の指標、ライフサイクル分析、第三者機関による認証、監査報告、サプライチェーンのトレーサビリティ、現場での取り組み事例などを、裏付けとして公開した方がいいだろう。
パッケージデザインの見直しで材料の使用量が減った、仕入れ先の変更でトレーサビリティが向上した、循環型モデルの導入で削減された資源とコストを数値化した、などの事例を示せば、サステナビリティと事業価値を直接結び付けられる。
開示できる具体的な証拠がないのなら、情報を発信する準備がまだできていないということだ。
2.そのタイミングで求められているのは何か
サステナビリティへの関心が高まる時期だからといって、扱われる論点や焦点は一様ではない。COP期間中であれば、気候テック企業は自社の取り組みと、政策や金融、構造的な脱炭素化とを結び付けたメッセージを期待されるのではないか。包装に関する新規制が導入される直前なら、小売会社は現場での対応準備が整っていることを示す必要があるだろう。猛暑が続く夏であれば、旅行代理店には適応策や顧客の安全、旅行先への環境負荷を網羅した気候レジリエンスに関するメッセージが求められるかもしれない。
何が期待されるかは、注目を集めているイベントや時期によって異なるので、それに応じてコミュニケーション戦略を作り上げなくてはならない。発信しようとしている情報は、自社が積極的に取り組んでいる内容を正確に反映しているか、それとも、単に流れに乗りたいとか、存在感を示さなくてはという反射的な行動にすぎないのか、しっかり判断する必要がある。
それを見極められれば、場当たり的な広報活動から卒業し、目立つことだけが目的ではない、妥当でタイムリーなコミュニケーションを構築できるようになる。
3.社内の足並みはそろっているか
サステナビリティについて情報を発信する際は、法務から財務、調達、製品デザイン、情報開示、顧客体験に至る社内の多くの部門が関与してくるものだ。社内の足並みがそろっていないと、同じ情報でも解釈に差が生じ、裏付けを取ったり、擁護したり、それを基に行動したりすることがいっそう難しくなる。
「より持続可能なパッケージになった」ことを発表するなら、「持続可能」が具体的に何を意味するのかを正確に把握していなくてはならない。パッケージに使われる材料が減ったのか。リサイクル素材の割合が増えたのか。パッケージ製造時の排出量が減ったのか。リサイクルしやすくなったのか。梱包(こんぽう)重量が減ったのか――。全て実現したのかもしれない。いずれにせよ、それぞれの答えは異なるデータや部署、トレードオフによって変わってくる。
そうやって社内の足並みをそろえることは、以前にも増して重要になっている。規制当局が、企業の環境主張に対するハードルを引き上げているためだ。例えば、欧州連合(EU)が企業による曖昧で裏付けのない環境主張から消費者を守ることを目的に定めた「グリーン移行のための消費者エンパワーメント指令(EmpCo指令)」が、2026年9月から適用される。こうしたことからも、サステナビリティに関して情報を発信して信頼を得るためには、企業が外部向けに公表する内容と、社内で測定・管理・検証している内容を一致させることが肝心である。
4.どこまでオープンに開示できるか
完璧な成果を上げていれば必ず信頼を得られるとは限らない。実際、ことサステナビリティに関する情報となると、申し分なく順調だと主張したことが裏目に出て、逆に信頼を失うこともある。難易度の高いサステナビリティ課題に立ち向かおうとすると、どうしても事業プロセスが複雑となり、単一の取り組みで解決することなどほぼ不可能だ。
そうした複雑な事情は、隠したり、弱点だと捉えたりせずに公表すべきだ。例えば、小売会社がサプライチェーンの環境負荷の軽減に取り組む場合は、パッケージの改良や再販事業の拡大、返品の削減、サプライヤーとの排出量データ連携、物流の見直しといった複数の対策を同時進行させたりするかもしれない。その全てが同じペースで進むわけではないだろうし、コストや利便性、商品の供給や顧客の期待と引き換えに、何かを諦めざるを得ないこともある。
取り組みからどのような学びを得たのか、予想より進捗が滞っているのは何か、どう軌道修正を図っているかを公にする方が、完了した成功事例ばかりを前面に押し出すよりも、信頼を勝ち取れる可能性がずっと高い。
5.今は本当に情報発信すべき時か
最後のこの問いが何よりも重要だろう。サステナビリティへの関心が高まっているからといって、必ずそこに参加しなければならないわけではないからだ。
大きなイベントや会合があるという理由だけで情報を発信するくらいなら、先に述べたことと矛盾してしまうが、むしろ何も発信しない方が得策ということもある。参加するか否かは、妥当性や証拠の有無、有用性で決めるべきだ。話題の論点に寄与できるデータを持っているか。関連セクターの進歩を後押しできる見解を示せるか。他社が応用できる教訓を提供できるか。
こうした問いへの答えが「イエス」なら、信頼とブランド価値を強化する機会になるかもしれない。「ノー」なら、無理に参加しても逆効果となりかねず、単に便乗しただけで中身がなく、不誠実だとみなされる恐れがある。
サステナビリティについて盛り上がりを見せるたびに、反応する必要はない。提供できる実質的な価値がある時や、リーダーシップを発揮できる時こそが、情報を発信したり、先頭に立って動いたりすべきタイミングだ。









