
サーキュラーエコノミーが欧州の制度主導で進む中、日本の製造現場の技術やサプライチェーンを起点にした独自の循環モデルが模索されている。「業界を越えて循環させる 日本型サーキュラーエコノミーの挑戦」と題したセッションには、デンソーの奥田英樹氏、リバーの平野幹尚氏、パナソニック ホールディングスの松田源一郎氏が登壇。自動車と家電の解体・再生の現場から、動脈産業と静脈産業の融合に向けた挑戦と課題を語り合った。
| Day1 ランチセッション ファシリテーター 菅原聡・サステナブル・ブランド国際会議カタリスト(イノベーション分野) / 一般社団法人Green innovation 代表理事 パネリスト 奥田英樹・デンソー サーキュラーエコノミー事業開発部 部長 / BlueRebirth協議会 幹事 平野幹尚・リバー 事業本部 事業統括部 サーキュラーエコノミー課 課長 松田源一郎・パナソニック ホールディングス MI本部 マニュファクチャリングソリューションセンター CE技術推進部 資源循環技術課 課長 |
ファシリテーターを務めた菅原聡氏(一般社団法人Green innovation 代表理事)は冒頭、欧州の制度主導型とは異なり、日本は製造現場の技術とサプライチェーンを生かした独自の循環モデルが模索されていると問題提起。家電、自動車、リサイクルの各現場で実装を進める3氏に、その現在地を聞いた。
高齢化進むリサイクル現場の危機感

リバーの平野氏はまず、関東中心に18拠点を展開する日本屈指の総合リサイクラーとしての事業概要を紹介した。自動車のリサイクルは年間約2万台、家電リサイクルはテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機を約120万台処理し、いずれも国内トップクラスの取扱量を誇る。平野氏は静脈産業の立場から、動脈産業と一体となったサプライチェーン構築の必要性を訴えた。
一方で現場の課題として、人手不足感と高齢化を挙げた。ELV(使用済み自動車)事業所の平均年齢は46歳と製造業平均の40.5歳を上回り、40〜50代が合わせて7割を占める。「現場に行くと、肩が痛い、腰が痛い、目がよく見えないというような状況で、処理能力が年々落ちている。省人化、機械化と再生材の質の向上は業界の急務だ」と、平野氏は危機感を語った。
純度99%の壁を超える精緻分解技術

パナソニック ホールディングスの松田氏は、資源循環が重要になる中、モノを長く使ってもらうことも考えながら、リサイクルを「きっちりやり切る」重要性から切り出した。同社は家電リサイクルを自社工場で手掛けるが、手解体で純度100%を達成できるのは一部で、多くは機械による破砕・選別に頼る。「一度崩すと純度99%が限界。自社の製品に戻る水平リサイクルにはならず、他用途に使うカスケードリサイクルにとどまっている」と率直に打ち明けた。
そこで同社が進めるのが「Design for Circular Economy(DfCE)」に基づく「精緻分解」技術の開発だ。そこでは分解シミュレーションで手順やコストを事前予測し、CADデータから自動精緻分解ロボットを動かす。さらにAIが設計変更を提案するシステムも開発しており、洗濯機を皮切りに業務用機器や自動車への展開も視野に入れる。「破砕・選別の欧州型ではなく、日本人らしく丁寧に、精緻に分解し、そもそもまぜないようにする技術開発に取り組みたい」と松田氏は語った。
Car to Carを支える自動精緻解体

デンソーの奥田氏は、自動車部品メーカーとしての生産技術・ロボティクス・材料技術を生かし、新規事業としてサーキュラーエコノミー事業を立ち上げた経緯を語った。目指すのは動静脈融合のバリューチェーンの実現だ。Car to Carのバリューチェーンを作ろうと、同社などが発起人となり、2025年6月にBlueRebirth協議会が発足。完成車・部品・材料・再生原料の各メーカーから研究機関まで、幅広い体制を組む。
技術面のブレークスルーとして、奥田氏は「3万点もあると言われる自動車部品が、わずか5種類の締結(ネジ、クリップ、スナップフィット、カシメ、圧入)を繰り返し解除することで、約80%が単一素材になる」点を挙げた。手術支援ロボットの技術を応用し、AIでプログラムを生成する。環境省の産官学連携事業では4車種160台を分解し、10部品の試作を実施。奥田氏は「破砕後選別によるカスケードリサイクルから自動精緻解体による水平リサイクルに移行すると、ELV1台あたり約630キログラムのCO2削減に寄与する」とのデータを示し、「クルマからクルマへの再生」の実装へ意気込んだ。
「憧れの職業」へ共感で仲間を集める
クロストークは、多様な関係者をどう巻き込んだかという問いから始まった。平野氏は「業界の課題は総合リサイクラー各社で共通している。省人化・機械化と再生材の利用促進のために一致団結した」と結束の起点を説明した。
奥田氏は、立ち上げ当初を「3万点をロボットでバラバラにしたいと言っても、できるわけないだろうという反応ばかりだった」と振り返る。その上で「『できる』を分かりやすく見せる活動と、もう一つは共感だ」と示し、「サーキュラーエコノミーの主役である解体・破砕事業者に人が集まらない。その現状でいいのか。製造業の中でも一番かっこいい仕事にしよう、子どもたちの憧れにしようという思いで、仲間を集めている」と熱を込めた。これに対して松田氏は「素材メーカーまで踏み込む点はBlueRebirthから学ぶところが大きい。電機業界も負けていられない」と呼応した。
議論は家電と自動車業界の協業可能性にも及んだ。奥田氏は「自動車は輸出産業で資源が国内に残りにくく、家電は輸入中心で国内に廃棄される」と指摘し、部品レベルでの共通性にも言及。平野氏も「家電と自動車のリサイクルを同じプラントで効率化できれば、より安定した再生材供給につながる」と展望を語った。
再生材の価値を高める社会づくりへ

クロージングで菅原氏は、制度面の課題に議論を引き戻した。松田氏は「家電リサイクル法は不法投棄の抑制が起源で、禁止事項が多い。再生材をモノづくりの材料供給のスタートにするには、経済合理性を軸にもう少し自由に検討できる制度が望ましい」と指摘。奥田氏も「再生材の価値を高める施策が必要。再生材使用車を5万円、10万円高くても選ぶような価値観を、国と共に考えたい」と応じた。
最後に3氏は目指す未来像を語った。平野氏は「再生材が当たり前に使われる社会を、バリューチェーンを持つ企業や国と共に作りたい」と述べ、松田氏は「家電リサイクルを廃棄物処理からモノづくり直結へと変えていきたい」と続けた。奥田氏は「サステナブルとクリエイティブが共存する、日本型サーキュラーエコノミーこそ目指すべき姿だ」と熱く語り、セッションを締めくくった。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。













