• 公開日:2021.07.05
ガーデニングと気候変動:米バックトゥーザルーツ、泥炭を使わない培養土を販売
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Sandie Clarke

泥炭地は地球上の陸地のわずか3%の占有率であるにもかかわらず、世界の土壌に固定されている炭素の3割を蓄積している。最近では、家庭菜園やガーデニングで使用する鉢植え用の土として、泥炭が好まれ、多く使用されている。一方で、視野を地球全体に広げてみると、ガーデニングにおける泥炭の人気の高まりは、泥炭地・泥沼の急速な減少という環境問題を引き起こしているという事実に気が付く。米国のガーデニング企業「バックトゥーザルーツ(Back to the Roots)」は、こうした泥炭の問題に対し、環境負荷をかけないような家庭菜園を普及するために泥炭を使わないガーデニング用の土を開発し、販売を開始した。(井上美羽)

家庭菜園の人気が広がる一方で、業界では「汚い」小さな秘密が顕在化した。それは泥炭だ。泥炭は、ほとんどの商業店舗で販売されている鉢植え用の土の主原料となっている。その泥炭を採掘することは、気候変動に壊滅的な影響を与えることを意味する。なぜならば、それが人為的な温室効果ガス排出量のおよそ6%を占めるからだ。

有機の家庭用菜園キットや米国産の種子などを販売する米国のガーデニング会社「バックトゥーザルーツ(Back to the Roots)」は、この問題を解決するために、泥炭を使用しない鉢植え用の土(ピートフリー培養土)を開発。良質な鉢植え用の土としては初めて、誰もが入手可能な商品として、2021年5月、全国のウォルマートの店舗で販売を開始した。

泥炭地は地球上の陸地のわずか3%の占有率にも関わらず、世界の土壌炭素の3割を蓄積している。商業的に製造された鉢植え用の土に含まれる泥炭が人気になるということは、われわれの生態系を維持する上で重要な役割を持つ泥炭地、つまり泥沼が急速に消えつつあることを意味する。泥炭地は一度採掘されてしまうと、年間10億トン以上の二酸化炭素が排出される。これは世界の自動車の排気ガスによる二酸化炭素排出量とほとんど同じである。

「もし正しい方法で行えば、つまり、有毒な化学物質や炭素を放出する泥炭を使わない方法をとれば、ガーデニングや家庭菜園は、誰もが取り組める最も簡単で持続可能なことの一つになる可能性もあります」と、バックトゥーザルーツ共同代表のニヒル・アローラ氏は述べる。「新世代のガーデナーたちが植物だけでなく、地球全体にとっても最善のやり方で家庭菜園を楽しめるようにしたいです」。

バックトゥーザルーツは、泥炭を使わずに土を作ることに挑戦した。その挑戦は同時に、土中に十分な水分を保持しつつ、利用者が求める機能性も提供するという2つの要素も考慮する必要があった。彼らはココナッツコイア繊維(ココナッツを精製する際に出るカスをアップサイクルしたもの)と干ばつに強いユッカという植物から得られる天然サポニン抽出物を土に含ませることで、泥炭中心の土壌と同じ程度の水を確実に保持することに成功した。

「われわれの新しい鉢植え用の土は、泥炭地と気候に壊滅的な影響を与えることなく、環境課題に関心の高いミレニアル世代のガーデナーたちも満足できるガーデニングを楽しむことができます」と、バックトゥーザルーツ共同代表のアレハンドロ・ベレス氏は話す。「次世代のガーデナーは植物を育てたいとは思っていますが、それと同時にお金を投じる際に、気候変動に影響を与えないことを重要視しているのです」。

二人は、まずは屋内用の栽培キットで培養土を試した後に、商品化することを決めた。彼らは理想の土を完成させるために何年もかけて研究を重ねた。そして、顧客はその動向に注目していた。

「どうすれば大きなロット単位でわれわれの培養土を買いたいと思うかを知るために、ユーザーヒアリングを行いました」と、ベレス氏は言う。「これまでも、われわれの栽培キットを買ってくれる既存顧客のために、最高の土にこだわってきましたが、そのことについて大きく打ち出してはいませんでした。そして今、その土を前面に出し、全国のガーデナーたちが手に取ることができるようになったのです」。

アローラ氏は、この泥炭を含まない土の開発を商品ラインナップの「自然な進歩」と説明している。

「これまでわれわれは、ガーデナーの経験や庭の大きさに関係なく、どんな家庭でも簡単に栽培を楽しめるように有機栽培のガーデニングを国内で普及することをミッションに掲げてきました。これからは、さらに新しい世代がガーデニングに興味を持ってくれることを期待しています」と、アローラ氏は語った。

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