
企業のサステナブル戦略を支援し、継続的な議論と実践の場を提供するコミュニティ「SB Japan Forum」の2026年度第2回が9月15日、都内で開かれた。今年度のテーマは「ALL RISE 障壁を突破するコレクティブ・アクションの場へ」。今回は「企業×地域のコレクティブ・アクション」を軸に、サントリーホールディングスとLOCAL BAMBOOが、自治体や地域と進める資源循環の取り組みを紹介した。ペットボトルと放置竹林。扱う資源は異なるが、循環の仕組みを地域でどう回し、その価値を社会にどう伝えるかという共通の課題が浮かび上がった。
冒頭、ファシリテーターを務めたSB国際会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏(駒澤大学教授)は「サステナビリティというと、脱炭素や海洋プラスチックなどグローバルな課題が中心に語られてきた」と振り返った。その上で、資源やエネルギーを「地域で循環させるという仕組みを今一度考えるべきだ」と問題提起し、2社の実践へと話をつないだ。
サントリー、自治体と水平リサイクル
サントリーホールディングスでサステナビリティ経営推進本部の部長を務める平野隆之氏は、使用済みPETボトルを再びPETボトルに戻す「ボトルtoボトル」水平リサイクルを紹介した。2024年度の国内PETボトルの回収率は91.9%、リサイクル率は85.1%。平野氏は「非常に優秀な容器だと考えている」と述べ、PETボトルがリサイクルに適した素材だと強調した。

サントリーは自治体などと「ボトルtoボトル」に関する協定を結び、連携先は200を超える。「高い意識で分別された資源が、きちんとペットボトルに戻る。それが自治体の方々のやる気にもつながる」と平野氏。協定拡大の原動力になったのは、往年の酒類営業で培った現場力だ。担当者が一つひとつ自治体を訪ねて回り、水平リサイクルの意義を伝えてきたことが広がりにつながったという。
国内清涼飲料事業では、全PETボトル重量に占める「サステナブル素材」の使用比率が2025年に62%となった。平野氏は技術や仕組みを業界全体に広げる重要性にも触れ、「競争から協調へ」と力説。一企業の取り組みにとどめず、社会全体の仕組みにしていく姿勢を示した。
延岡メンマで竹林管理を事業に
LOCAL BAMBOO代表取締役の江原太郎氏は、管理されなくなった竹林を地域資源として活用する「延岡メンマ」の取り組みを紹介した。「竹が悪いのではなく、管理されなくなったことが問題だ」と説明。規格外のタケノコなどを地権者や農家から買い取り、メンマとして商品化することで、竹林管理を継続できる仕組みをつくってきた。

江原氏は「どうやったら続けられるかと考えた時に、やっぱりお金だと思った」と振り返り、竹林整備に経済的なインセンティブを持たせる発想を語った。買い取り量は最初の年の1tから、翌年8t、その次の年には15tに増加。「お金にすることで、地権者や農家も喜んでくれる」と、地域に利益を戻すことが次の竹林整備につながる手応えを語った。
取り組みは他地域にも広がる。東京都町田市では包括連携協定を結び、メンマの商品化や学校給食への導入などを進めた。江原氏によると、学校給食への導入は3自治体に広がっている。「行政の事例が大事だ」とし、先行事例を示して他自治体へ提案することで、地域コミュニティや環境教育にもつながる展開が「竹の地下茎のように広がっている」と表現した。
価値をどう伝え、どう売るか
2社に共通したのが、サステナビリティへの取り組みを市場でどのように「価値」に変えるかという課題だ。
平野氏は、100%リサイクルPETを使った自社商品と、そうではない、より安い商品が同じ棚に並ぶ売り場を例に挙げた。「環境に配慮して頑張った分だけ、その価値を価格として認めてもらえる市場には、まだなっていない」とした上で、「資源循環には価値があるのだということを、どうやって伝えていくかが、これからの課題だ」と、消費者や社会への発信の重要性を強調した。

江原氏にも同様の悩みがある。延岡メンマは売れ行きが好調な一方、各地域の竹を使った「クラフトメンマ」の販売はあまり伸びていない。売れなければ地域の作り手に収益が戻らず、次の地域にも広げられない。この問いは、そのまま後半のワークショップへ引き継がれた。
参加者が「価値化」の策を議論
後半は参加者がグループに分かれ、両社の課題への解決策を考えた。サントリーに対しては、小売りと連携した売り場づくり、リサイクル率の可視化、メーカー横断のポイント制度などが提案された。平野氏は「いかに分かりやすくコミュニケーションするかは、まだまだ改善の余地がある」と応答。また競合企業との連携についても、「もはや競争するところではない」とし、「組めるところはしっかり組んでいく」と話した。

LOCAL BAMBOOに対しては、ホテルの朝食での提供、有名シェフとのコラボレーション、地域ごとのアンバサダー制度、子ども向け商品の開発、小容量パッケージなどの案が出た。中でもアンバサダー制度に江原氏は関心を示し、「明日にでもみんなに共有したい」と応じた。
本会に先立ち、2つの分科会も第2回が開催された。
「AIと統合報告」をテーマとする統合報告分科会(オーガナイザー:Sinc統合思考研究所副所長、山吹善彦氏)では、シェルパ・アンド・カンパニー サステナビリティ&インパクト本部の奈良雄介氏をゲスト講師に迎え、AIを使ったESG評価について情報共有し、議論した。マーケティング分科会(オーガナイザー:サステナブル・ブランド国際会議カタリスト、高島太士氏)では、業務でAIを使う上での課題の共有や、マーケティングでどのようにAIを生かすかなどについて議論した。
第3回のSB Japan Forumは11月10日の開催予定で、テーマは「企業×NPO/NGO」。10月6日には、初めてとなるフィールドワークを「TAKANAWA GATEWAY Link Scholar’s Hub」で実施する。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。














