• 公開日:2026.05.29
共創でひらくサステナビリティ SBオープンセミナー&BoFレポート
  • 松浦 緑子
  • 眞崎 裕史

「Adapt and Accelerate」をテーマに、国内外のブランドリーダーやサステナビリティ担当者、次世代を担う学生らが熱い議論を展開した「サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内」。エリア内では特別企画「SB OPEN SEMINAR & EXHIBITION」が同時に開催され、サステナビリティに関する学びや発見につながる展示やセミナーが実施された。ここでは、オープンセミナーと最終日のBoF(Birds Of A Feather、交流会)の様子をレポートする。

サプライヤーと共に築くサステナブルな品質

日本国内に約3000店舗を展開し、約22万人のクルーを抱える日本マクドナルドは、食事を提供する場であると同時に、雇用を生む場としての責任も担う。本セッションでは、サプライチェーンと人権への取り組みを中心に語られた。

同社執行役員 サプライチェーン本部 本部長の渡邉健太郎氏は、創業時から大切にしている「3本脚の椅子」の考え方に基づき、サプライヤーとゴールを共有し、共にビジネスを拡張する道を一緒に考えることの重要性を強調した。

日本マクドナルドにパッケージを提供するHAVIグローバルソリューションズの保母俊彦氏は、2022年の木製カトラリー導入を皮切りに、サラダ容器やバーガーケースなどを順次サステナブル素材へと移行してきた経緯を紹介。グローバル基準と国内法・自社基準の高いハードルを越えられたのは、目指す姿への共感があったからだと振り返った。

日本マクドナルド 食品安全品質システム部 部長の吉澤恒治氏は、農場から物流まで全ての工程で行動規範を求め、労務環境や人権面でもサプライチェーンの安全性を担保していると説明した。

同社ソーシャルインパクト部の儀賀柚奈氏は「企業価値と従業員、お客さまの笑顔を生み出せるように、サプライヤーやフランチャイジーとの『3本脚の椅子』で日々取り組みたい」と語った。

使い終わりから始まる、紙の循環

資源循環をテーマとしたセミナーでは、日本製紙クレシアと連携する2社が紙資源リサイクルの取り組みを語った。

日本製紙クレシア マーケティング総合企画本部 マーケティング部 部長の長谷川敏彦氏は、紙パックがティッシュペーパーやトイレットペーパーの強度を支える針葉樹パルプ100%の優れた原料となること、これまで焼却されてきた使用済み紙コップや紙皿も、新たな回収スキームの構築によってリサイクルが可能になったことを紹介した。

日本紙通商 物資本部 古紙部 課長の中静大樹氏は、回収キットやQRコードシールを活用し、紙コップを少量から手軽に回収できる仕組みを構築したと説明。回収パルプはトイレットペーパーへの再生だけでなく、紙コップへの水平リサイクルや紙糸からのタオル「choito」など多様な製品に生まれ変わる。

鹿島アントラーズFC アライアンスセールスチームの島袋隼人氏は、リーグ戦平均約2.7万人の来場者が集まる本拠地メルカリスタジアムで、紙コップを洗浄・回収できるコーナーを設置したと紹介。スポーツの力で地域と連携し、教育現場への啓発も進めていると語った。

長谷川氏は「鹿島アントラーズとの連携を通じ、地域住民、自治体、パートナー企業などあらゆるステークホルダーと協力し、環境への取り組みを推進したい」と語った。

相互理解でひらく、女性が活躍する職場

DEI(多様性、公平性、包括性)と女性活躍推進をテーマとしたセッションでは、健康課題を個人の問題で終わらせないという思いから生まれたサービス開発の経緯が紹介された。

パナソニックは、女性特有の体調変化に寄り添う体調ナビゲーションサービス「RizMo(リズモ)」をリリースした。睡眠やホルモンバランスなどのデータから体調を可視化し、アドバイスを得られるという。

パナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 主幹の井上貴美子氏は「データで客観的に体調不良の理由が分かると気持ちが楽になる。自分をケアし、自分らしく生きることや自己効力感につながる第一歩になるはず」と話した。

同社 DEI・組織開発室 室長の小泉朱里氏は、自身が出産を機にキャリア形成に悩んだ経験から、女性が活躍しづらい職場に課題感を抱き、「アンロック」(社員一人ひとりの能力を開花させる)をキーワードに組織開発を進めている。幹部登用要件の緩和や深夜勤務制度の整備、性別を超えた対話イベントの開催など、制度と文化の両面から変革を推進していると紹介。RizMoの企業導入にも期待を寄せた。

YUIDEA SX戦略推進 サステナビリティ・プロデュース部 セクションマネージャーの内藤真未氏は、男女がともに参画してこそイノベーションが生まれる、と指摘。意思決定の場に女性が加わるためにも、多様性を認め、優秀な人材が働き続けられる組織づくりが大切だと締めくくった。

自然体験が育む、行動する人材

アウトドアブランド、キーン・ジャパン(以下、キーン)のリージョナルマネージングディレクター ヒルダ・チャン氏は、「世界を少しでもポジティブに変えたい」という思いから生まれた環境活動「KEEN EFFECT」を紹介した。災害支援やビーチクリーンなど幅広く活動するほか、2024年には全ての商品でPFASフリーを実現し、環境負荷の小さいものづくりを推進している。

キーンの創業者は2016年、NPO法人リーブノートレイスジャパン(以下、LNT)の活動に共感し、KEEN EFFECTの一環として支援を開始。現在では多くの社員がLNT指導者の資格を持つという。

LNT代表理事の岡村泰斗氏は、LNTが世界96カ国で展開する野外倫理プログラムで、「ごみの適切な処理」「野生動物の尊重」など7原則に沿って行動することで、アウトドアにおける環境への影響を最小限に抑えられると説明した。

LNTの考え方は、日常生活やビジネスに必要な思考や知識を養うことにもつながり、人材育成の観点でも効果が高いという。チャン氏によると、キーン社員は店頭で接客する際にも靴の性能だけでなく、アウトドアでの行動哲学を自然と伝えている。自然環境の大切さを体験を通じて自分ごと化し、ブランドの本質を体現する人材が育つことは、企業にとって大きな価値になる。

3テーマで深める、垣根を超えた対話

サステナブル・ブランド国際会議のスピーカーと参加者らが交流するBoFは、「サーキュラーエコノミー」「サステナビリティとデータ」「次世代共創」の3つのテーマ別に開催された。それぞれのテーマに興味・関心が深い参加者が集い、飲食を交えて意見交換。積極的な交流から、ブランドの垣根を超えた「共創の芽」が生まれていた。これら3つのBoFは、パナソニック ホールディングス、UL Japan、LIXILの協賛で実施された。

written by

松浦 緑子

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 パートナー

2020年〜2025年までSB JAPANのイベントディレクターとして携わる。現在は、イベント会社の広報に携わる傍ら、SB-Jのほか、サステナビリティ・エシカルを軸に活動中。アウトドアが趣味。

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