• 公開日:2026.05.11
消費される地域から、循環する地域へ。マーケティング視点で考える地域活性
  • 横田 伸治

日本全国に1700以上ある市町村が、それぞれの魅力をアピールし、選ばれる地域になろうと日々奮闘している。しかし、単なるプロダクトアウトでは、持続可能な地域活性化は難しい。

サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内のセッション「マーケティング視点で考える地域活性」では、同会議で地方創生分野のカタリストを務める田口真司氏のファシリテートで、各地域の最前線で活躍する3人が、それぞれの視点から持続可能な地域づくりのヒントを語り合った。

Day2 ブレイクアウト

ファシリテーター
田口真司・サステナブル・ブランド国際会議 カタリスト(地方創生分野) / エコッツェリア協会 コミュニティ研究所長

パネリスト
蓮池幹生・土庄町役場 商工観光課 課長
折茂彰弘・マルキュウ クリエイティブディレクター / マルヒ クリエイティブディレクター
広瀬拓哉・三菱地所 丸の内開発部 統括

公務員の立場から、小豆島を持続できる島に

蓮池幹生氏

香川県・小豆島にある土庄町で公務員を務める蓮池幹生氏は、人口減少という課題に直面する島の現状を語った。小豆島には年間約100万人の観光客が訪れる一方で、人口は過去70年で半減し、現在は約2万4千人となっている。

「私たちは、観光によって『消費されるだけの島』から、『持続できる島』へと転換する決意をした」。小豆島は「サステナブル」をキーワードに掲げ、国際認証機関による「グリーンデスティネーションズ」のシルバーアワードを受賞。さらに国連(UN Tourism)の「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」にも認定された。具体的な取り組みとしては、名産であるオリーブの搾りかすを飼料にする循環型農業で生まれた「小豆島オリーブ牛」や、アニメを活用した聖地巡礼・移住促進などを展開。蓮池氏は「マーケティングをはじめ、外の視点を取り入れ、サステナブルな取り組みで多くのステークホルダーを巻き込むことが重要」と強調した。

既存の要素の掛け算で、地域の価値を再定義

折茂彰弘氏

クリエイティブディレクターの折茂彰弘氏は、東京から地域へと入り込み、マーケティングとクリエイティブの力で新たな価値を創出。佐賀県の採用サイト「公務員という職種はない。」や、ロス食材を活用した「さがふりかけ OTAKARA」、規格外の花を活用した「LOSS IS MORE GIN」など、多岐にわたるプロジェクトを手掛けてきた。

折茂氏は「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」というジェームス・W・ヤングの言葉を引用し、「地域にある当たり前のものを、どれだけ新しい組み合わせで作れるかにマーケティングの余白がある」と指摘する。地域の人々にとって当たり前になっている資源を、外からの目線で客観視し、世の中の文脈に置いて価値を棚卸しする。それも、外から口を出すだけではなく「一緒に肩を組んで前に進んでいくプレイヤーとして、中に入り込んでコミットすることが不可欠」だと折茂氏は語った。

食を起点に、地域と都市を行き交う

広瀬拓哉氏

三菱地所の広瀬拓哉氏は、食を通じて地域と社会を豊かにする「めぐるめくプロジェクト」を紹介した。このプロジェクトは、コミュニティ全体で双方向に資源をシェア・循環していくことを重視した「サーキュラー・コモンズ」という概念に基づいている。

全国各地で開催される「食卓会議」では、他の地域の参加者を交えてフィールドツアーや交流を行い、領域を超えたつながりを生み出しているという。広瀬氏は、人口減少社会におけるサステナビリティの鍵は「行き交うこと」にあるとして、「何かを固着化させるとシュリンクしてしまう。来た人が出ていくのもいいし、その流れをつくり続けることが重要だ」と語る。2026年9月には東京・大手町に「めぐるめく」の新たな活動拠点が誕生する予定で、都市と地域を行き交う拠点としての役割が期待されているという。

キーパーソンと出会い、自分を信じて仲間を増やせ

田口真司氏

セッション後半のディスカッションでは、自治体や企業との連携をどう進めるかが話題に上った。折茂氏は「いかにして一つ目の小さな成功体験を(地域に)持たせてあげられるかが重要」と語り、広瀬氏も「安心材料を一緒につくっていくこと」の必要性を説いた。また、地域の中で、地域の未来を信じているキーパーソンや、「ハンコを押してくれる」熱意ある公務員と出会っていくことが、プロジェクトを前に進める大きな原動力になるという認識で一致。蓮池氏は「まずは私と出会うことだ」と冗談めかし、会場を沸かせた。

セッションの締めくくりとして、ファシリテーターの田口真司氏は登壇者たちの言葉に触れ、「自分を信じきること、自分が何をすべきか自覚されていること、そして仲間をつくっていくこと」の重要性を繰り返した。

地域を単に消費するだけでなく、掛け算によって新たな価値を生み出し、人や資源が絶えず行き交う仕組みをつくる。マーケティングの視点と、地域をけん引する人々の思いが融合したこうしたアプローチは、これからの地域活性化において重要な指針となるだろう。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

Related
この記事に関連するニュース

地域とつくる日本型洋上風力 五島沖で動き出した“浮体式”の現実解
2026.04.15
  • ニュース
  • #地方創生
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
ビヨンドSDGs時代へ 産官学民が集結した「未来まちづくりフォーラム」開催レポート
2026.04.01
  • ニュース
  • #ウェルビーイング
  • #地方創生
楽しくなければ続かない。西伊豆と石巻から学ぶ、テクノロジーと熱意の仲間づくり
2026.03.27
  • ニュース
  • SBコミュニティニュース
  • #地方創生
東日本大震災から15年。美術館「おれたちの伝承館」で問う過去と未来
2026.03.11
  • ニュース
  • #地方創生

News
SB JAPAN 新着記事

消費される地域から、循環する地域へ。マーケティング視点で考える地域活性
2026.05.11
  • ニュース
  • SBコミュニティニュース
  • #地方創生
「100年後も魚を食べ続けるために」学生とシェフが共創するブルーキャンプの挑戦
2026.05.11
  • ニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #リジェネレーション
  • #生物多様性
サンメッセ・Sinc・岐阜信用金庫が包括連携 地域企業の非財務価値を可視化・発信
2026.05.08
  • ニュース
  • SBコミュニティニュース
  • #パートナーシップ
  • #ブランド戦略
  • #人的資本経営
【欧州の今を届けるコラム】第11回 疲れすぎない5つの声の上げ方:企業に潜むジェンダーバイアス<後編>
2026.05.08
  • コラム
  • #人権
  • #ダイバーシティー

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 消費される地域から、循環する地域へ。マーケティング視点で考える地域活性