
環境省は2026年3月、「環境表示ガイドライン」を改定した。2月に公表した改定案について意見募集(パブリックコメント)を実施し、確定版を公表したもの。国内外でグリーンウォッシュ対策への関心が高まっていることを背景に、国際的な動向やISO規格の改訂を踏まえて内容を一部見直した。
あいまいな表現の排除や国際水準への適合を一層強調する内容となり、「持続可能」といった言葉の安易な使用にも歯止めがかけられた。企業は自社のコミュニケーション手法の見直しを迫られそうだ。
13年ぶりの改定
「環境表示ガイドライン」は、主に第三者認証によらない自己宣言で環境に関する主張を行う事業者と事業者団体が対象で、国際規格(ISO/JIS Q 14020シリーズ)に準拠した表示を求めるもの。景品表示法が定める商品やサービスについての表示に加え、事業活動や企業の姿勢全般についての表示、イメージ広告も適用範囲だ。
また、環境ラベルなどの認証制度を運用する機関や非営利団体に対しても、同ガイドラインを参考に事業者を指導するよう求める。2008年に初めて策定され、2度の改定を経て今回13年ぶりの改定に至った。
以下、改定の主なポイントを抜粋する。
5つの基本項目をイラスト付きで整理

従来版でもISO規格の要求事項を5項目で説明していたが、改定版ではその説明の前に「5つの基本項目」としてイラスト付きで提示した。直感的に内容を把握できるようにする狙いがあるという。
ライフサイクル全体を考慮するよう強調
また基本項目の内容も見直した。「製品のライフサイクル全体を考慮すること」を③として追加し、従来版の⑤「評価及び検証のための情報へのアクセスが可能であること」を④に統合した形だ。

「環境表示ガイドライン 令和8年3月改定版(見え消し版)」を基に筆者作成
従来版ではISO規格における要求事項②の説明の中で言及されていた内容を、基本項目に格上げすることで強調している。
改定版ガイドラインは、一つの環境影響を減少させる過程で他の環境影響を増大させる可能性(トレードオフ)を考慮し、ライフサイクル全体で影響を評価することを求めている。トレードオフがあるにもかかわらず、特定のライフサイクルの段階で環境負荷を低減したことだけを強調することは不適切だとして注意を促す。また、製品の中でごく小さな部分(例:製品重量の1%未満)に関する環境主張を、製品や事業全体に関するものとして表示することも誇張に当たり、不適切とされている。
トレードオフが確認された場合は、その事実も隠さず表示すること、また特定のライフサイクルの段階における環境負荷低減を表示する場合は、主張の範囲を明確にすることが求められる。
説明無きあいまいな「持続可能」はNGに
従来版から、「①あいまいな表現や環境主張は行わないこと」の説明文中に「自己宣言による環境主張に使用できない表現」の例が列挙されていた。今回の改定では、それらが下記のように枠囲いで強調された上で「持続可能」「〇〇を含まない」が追加された。
| 環境に安全 環境にやさしい 地球にやさしい 無公害 グリーン 自然にやさしい オゾンにやさしい 持続可能 〇〇を含まない(特定の物質の量が、広く認められた微量の混入物質又はバックグラウンドレベルを超えない場合にのみ使用可) 注)上記は例示であり、これらに相当する表現も使用を避ける必要があります。 |
このように注意すべき表現を挙げ、「あいまいな表現や環境主張は行わないか、行う場合は単独では行わず、必ず合理的な説明文を付けることが求められます」としている。
なお、2月の改定案の時点では「あいまいな表現や環境主張は行わないことが求められます」と言い切っていたが、パブリックコメントでこの点について複数の質問・意見が寄せられた結果、「行う場合は」以降が追加された。
「持続可能」「サステナブル」などの表現を、商品やブランド、企業姿勢などの説明に使用する企業は、具体的にどのような点が「持続可能」なのか示す必要がある。合理的な説明ができない場合はそれらの表現を使用すべきではないということが、一層明確になった。
カーボン・オフセットの正当化利用を忠告
「①あいまいな表現や環境主張は行わないこと」の説明文中には、参考情報として「カーボンフットプリント(CFP)に関する主張」と「カーボン・オフセットに関する主張」の項目も追加された。CFPとカーボン・オフセットについては、該当するISO規格に加え、環境省や経済産業省のガイドライン(下記)に準拠するよう求め、各ガイドラインを引用して説明している。
| CFP ・「カーボンフットプリント表示ガイド(2025年2月、環境省・経済産業省)」 ・ISO14067 カーボン・オフセット ・「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)-第4版-(2024年3月6日、環境省)」 ・「カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0(2024年3月6日、環境省)」 ・ISO14068-1 |
この中で特に強調されているのが「カーボン・オフセットが、自ら排出削減を行わないことの正当化に利用されるべきではない」ということだ。オフセットは、GHG排出量の把握・削減の努力をした上で、どうしても削減できない分について埋め合わせる手段であることが明記されている。
グローバルな規制・ガイドラインへの対応も
今回の改定の背景には、欧州をはじめ、世界的にグリーンウォッシュに対する視線が厳しくなっていることがある。文書冒頭の「本ガイドラインの目的」に、国際動向についての記載が追加された。欧米で巨額の制裁金や、消費者団体などによる集団訴訟に発展するケースも増える中、日本の環境技術や環境に配慮した製品が国際競争力を維持するためには、適切な環境表示が必要だとしている。国内でも2022年に景品表示法に基づく措置命令が下された例に触れ、ガイドラインへの準拠を求める。
さらに、別冊の参考資料には、国際機関を含む海外のガイドラインや自主基準の概要とリンク集が掲載された。海外で環境主張を行う場合には、必ず該当国・地域の法律やガイドラインに準拠するよう呼びかけている。
環境省はパブリックコメントへの回答の中で、「出来るだけ可能な範囲で早い時期に、本ガイドラインに準拠した表示に切り替えていただくことが望ましい」としている。同ガイドライン自体に法的拘束力はないとはいえ、新基準に抵触していれば、グリーンウォッシュ企業との批判は免れない。企業には自社のコミュニケーションを速やかに点検することが求められる。また、現在も関連するISO規格の改訂作業が進められており、引き続き動向を注視していく必要がある。
| 【参照サイト】 環境省「環境表示ガイドラインの改定について」 https://www.env.go.jp/press/press_03660.html |
茂木 澄花 (もぎ・すみか)
フリーランス翻訳者(英⇔日)、ライター。 ビジネスとサステナビリティ分野が専門で、ビジネス文書やウェブ記事、出版物などの翻訳やその周辺業務を手掛ける。









