• 公開日:2026.04.24
高校生が本気で挑むサステナビリティの「社会実装」「第6回 SB Student Ambassador 全国大会」成果発表会
  • 横田 伸治

持続可能な社会に向けたアイデアを高校生が出し合い、互いに認め合う第6回 SB Student Ambassador 全国大会が「サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内」の一部として開催された。全国各地で行われたブロック大会に出場し、動画選考を経た代表校計9校が登壇した。

大会では参加校への順位付けや表彰は行わず、参加生徒同士が刺激と学びを共有する場として機能している。各校の生徒たちは、与えられた発表時間の中で、それぞれの地域や社会が抱える課題解決に向けた独自のアイデアと、未来への熱い思いを語った。

日本文化の核である「中間領域」の再構築

文化学園大学杉並高等学校(東京都杉並区)は、縁側や土間といった、自然を感じつつ安心感も得られる日本の「中間領域」の概念が、都市の過密化などで失われつつある現状に着目。現代の暮らしに合わせてこの空間を再構築するサンルーム「SOLIA(ソリア)」を提案した。透明太陽光パネルを窓に活用し、光を取り込みながら再生可能エネルギーを生み出す仕組みだ。生徒たちは「昔からの価値観を近代のテクノロジーを使って現代社会に再生させたい。価格面などの課題を改善しながら実現していきたい」と語った。

ローリングストックを日常の延長へ変える「FOMA」

修道高等学校(広島市)は、災害大国である日本において、保存食の消費や防災対策が日常生活から切り離されている課題を指摘。中国地方の郷土料理や未利用魚などをおいしい保存食へと変える「FOMA(普段から・おいしく・もしもの時は・安心につながる)」を提案した。普段から食べたくなる付加価値を付けることで、ローリングストックを特別な行動から日常へと変える仕組みだ。生徒たちは「災害大国日本では防災から目を背けることはできない。だからこそ私たちは防災を、人が集い、挑戦が生まれる力に変えたい」と力強く訴えた。

産学官連携で郷土菓子を世界に広める

高知県立高知国際高等学校(高知市)は、種類豊富でありながら認知度が低く、後継者不足にも悩む四国の郷土菓子に焦点を当てた。行政が場を提供し、民間生産者の技術や思いを学生へ直接つなぐ研修イベントを定期開催するとともに、JR四国の観光列車「ものがたり列車」内で試供品と紹介ポストカードを配布する。現状、個別に動いている産学官がつながるきっかけを目指すもので、生徒は「四国内にとどまっていた視野を広げ、郷土菓子を通じて温かな人の輪が生まれることを目指す」と抱負を述べた。

未利用魚のブランド化で「ものづくり大国」を守る

名古屋市立名古屋商業高等学校(名古屋市)は、規格外などの理由で廃棄される「未利用魚」が年間100万トンに上る一方で、漁業就業者が激減している現状に対し、解決策を提案した。旅行会社が企画する豪華クルージングでの食事提供や、広告代理店によるイメージアップなど、あらゆる過程で企業が連携して未利用魚のブランド力を高めることで、漁業者の収入安定と海の生態系保全を目指す。生徒たちは未来を見据え、「日本がものづくり大国であり続けるためには、未利用の資源に付加価値を加えて持続的に成長を続ける必要がある」と熱意を見せた。

規格外ゴボウの化粧水で地域ブランドを創出

青森県立三本木高等学校(青森県十和田市)は、生産量日本一を誇る同県のゴボウの廃棄量に着目し、若者の雇用不足や地域産業の停滞という課題解決に挑んだ。ゴボウに含まれるイヌリンやミネラルなどの美容効果を活かした化粧水を開発し、全国トップクラスの数を誇る県内の温泉地や宿泊施設で販売するビジネスモデルを提示した。農家の新たな収入源を生み出し、地域で持続可能な経済循環を築く狙いだ。生徒は「協力してくださる農家を探して、安定した原料供給の体制を整え、温泉地などの販売先との連携も実際に行いたい」と意欲を燃やした。

NFTとDAOでつくる新しい地域社会の物語

富山国際大学付属高等学校(富山市)は、人口減少と高齢化によって失われつつある砺波市の美しい田園風景を守るため、「地域課題は地域の人が解決すべき」という思い込みからの脱却を提唱した。独自トークンやデジタルアート(NFT)を発行して分散型自律組織(DAO)を構築し、県外に住む人でも、仮想通貨を通じて「デジタル住民」になり、地域の意思決定に参加できる仕組みを提案。生徒たちは「地域にはNFT化できるものが豊富にある。一度地元を離れても、自分の役割を残し続けられるようにしたい」と語った。

リサイクルの見える化で、日本人の倫理観を書き換える

大会初の合同チームとして出場した賢明女子学院高等学校・淳心学院高等学校(いずれも兵庫県姫路市)は、ペットボトルの回収実態が不透明であることがリサイクル意欲をそいでいると指摘した。そこで、ペットボトルとキャップにICタグを付け、専用回収機で読み取ることで「いつ・どこで・誰が何本リサイクルしたか」を地域別にアプリで可視化するシステム「タグループ」を発表。ポイント制で行動を促し、日本人の根底にある倫理観の変容を狙う。生徒は「社会を見える化することで、使い捨て前提の商品はなくなり、消費者は長く使えるものを選ぶようになるはず」と力を込めた。

副産物循環から生まれる「ふりかけインフィニティ」

九州学院高等学校(熊本市)は、九州が抱える農業や漁業の後継者不足と規格外品の廃棄問題に対し、九州7県の名産品や端材を掛け合わせた「ふりかけインフィニティ」の開発を提案した。フードロスを削減しながら経済効果を生むだけでなく、ふりかけの売上の一部を利用して、若者向けに農林漁業の「お手伝いイベント」を開催し、一次産業に触れる機会を創出するという。生徒たちは「ふりかけは実は熊本県が発祥。それを生かし、九州の未来を丸ごと支えたい」と力強く宣言した。

「ギャラクシー食コンテスト」を通じて企業をつなげる

帯広大谷高等学校(北海道帯広市)は、十勝地方の基幹産業である「食」と、大樹町で進む「宇宙産業」を掛け合わせた「十勝・ギャラクシー食コンテスト」の開催を提案した。「宇宙で十勝を思い出しながら食べたい軽食」をテーマに、学生や企業からアイデアを募集。コンテストを通じて、本来つながりのない企業同士を高校生がハブとなって結び付けるほか、入賞者には、宇宙ベンチャーへの取材など、宇宙産業に関わるきっかけを提供する。生徒は「すでに、地域の一次産業や宇宙開発の関係団体に協力してもらえることになっている。応援していただいた分、十勝から未来へ、挑戦を続ける」と熱い思いを込めて語った。

「ここからがスタート」 社会実装への決意

全9校の熱のこもったプレゼンテーションに対し、会場に集まった企業担当者からは、実現に向けたコスト計算やサプライチェーンの構築、マーケティングの視点など、ビジネスの最前線に立つプロならではのフィードバックが寄せられた。

各校の代表生徒による決意表明では、「それぞれの地域によって課題や解決策が違うことを知れた」「自分たちの活動が学校内にとどまっていたことに気付き、ビジネスの視点を取り入れる必要性を痛感した」といった振り返りが飛び交った。

多くの生徒が「大会への出場がゴールではなく、ここからがスタート」「実際に企業や行政に掛け合って、この提案を社会実装していく」と語り、大きな舞台での発表と大人たちとの対話を経て、一回り成長した頼もしい姿を見せた。

大会の最後に、日本旅行の取締役兼執行役員の福岡雄二・ソリューション事業本部統括副本部長が総評を行った。福岡氏は「産官学や地域住民を巻き込んだ具体的な提案が多く、自らの足を使って人から得た情報に基づくプレゼンテーションは非常に質が高かった」と生徒たちの行動力を称賛。「ここで得た情報や人とのつながりを生かし、独自のものを生み出していってほしい」とエールを送り、大会を締めくくった。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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