世界で最も持続可能な100社発表 1位は仏シュナイダー、日本はエーザイなど3社にとどまる
カナダのメディア・投資調査会社「コーポレート・ナイツ」はこのほど、2025年の『世界で最もサステナブルな企業100社(グローバル100インデックス)』を発表した。売上高が10億ドル以上の上場企業8359社の1位は、フランスの電気・産業機器メーカー、シュナイダーエレクトリックで、脱炭素化などへの投資額と、長期的に安定した収益の高さに加え、経営幹部のジェンダーの多様性が高く評価された。日本企業は前年同様、エーザイ(35位)とリコー(51位)、シスメックス(98位)の3社にとどまった。(廣末智子)
グローバル100インデックスは、毎年のダボス会議に合わせて発表されており、今年は21年目となる。それによると、今回の調査では、世界の主要株で構成するMSCI全世界株指数(ACWI)※が355.0%であったのに対し、グローバル100社の総投資収益率は304.9%と若干下回った。これはAI関連株などの上昇と高金利など一時的な要因によるもので、近年の金利上昇にもかかわらず、グローバル100社は再生可能エネルギーやエネルギー効率化、循環型経済などの持続可能な分野への投資を拡大。2025年の100社全体の総投資額に占めるそうした投資の割合は58%で、それ以外の上場企業の平均15%と比べてほぼ4倍の高率だったという。
※米国の金融サービス企業、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が世界の主要企業を対象に算出する株価指数。先進国23カ国と新興国24カ国の大型株と中型株、約2900銘柄で構成し、世界の時価総額全体の約85%をカバーする。ACWIは、All Country World Indexを指す
トップ 20
1位:シュナイダーエレクトリック (フランス、電気・産業機器)
2位:シムズ (オーストラリア、金属リサイクル)
3位:ヴェスタス・ウィンド・システムズ (デンマーク、機械)
4位:ブランブルズ (オーストラリア、コンテナ・ロジスティクス)
5位:台湾高速鉄道 (台湾、鉄道)
6位:SMAソーラーテクノロジー(ドイツ、ソーラーエネルギー機器)
7位:アルストム(フランス、非道路輸送用機器)
8位:スタンテック (カナダ、コンサルタント・サービス)
9位:オーステッド (デンマーク、発電)
10位:エンフェーズエナジー(米国、半導体・電子部品)
11位:ボルトロニック パワーテクノロジー(台湾、電力供給機器)
12位:エルジー エナジーソリューション(韓国、蓄電池)
13位:ニーオ(中国、電気自動車)
14位:ファースト ソーラー(米国、ソーラーエネルギー機器)
15位:シグニファイ(オランダ、照明機器)
16位:ノルデックス(ドイツ、機械)
17位:ブラジル銀行 (ブラジル、金融)
18位:イー・アール・ジー(イタリア、発電)
19位:ヤディア グループ ホールディングス(中国、電動モビリティ)
20位:ユナイテッド・ユーティリティーズ(英国、水道)
詳細
日本企業
35位:エーザイ(製薬)
51位:リコー(機器メーカー)
98位:シスメックス(電子機器)
前年のランキング
1位のシュナイダーエレクトリックは、100カ国以上にオフィスを構え、建物のエネルギー制御や、オフグリッドの太陽光発電とEVの充電、グリッド自動化など、化石燃料からの移行のための技術を提供する。2023年には360億ユーロの収益を上げ、2024年にも記録的な収益を上げることが見込まれるのに加え、経営幹部や取締役会のジェンダーと人種的多様性の項目でも高い評価を得た。同社は2021年にも1位になっており、グローバル100の中で2回以上首位に立った最初の企業となった。
2位のシムズと、3位のヴェスタスは、どちらも、収益の100%を持続可能な分野のプロジェクトから得るとともに、投資の100%を持続可能なプロジェクトに割り当てている、真に持続可能な企業だという。
日本企業からランクインしたのは前年と同じく3社にとどまった。エーザイが前回同様34位、リコーは前年の72位から51位に躍進、シスメックスも前年の100位から98位にランクが上がった。
地域や国別では、欧州から44社が、米国は15社、カナダは11社がランクイン。アジア太平洋地域では、電気自動車のニーオや電動モビリティのヤディアなど中国の8社を筆頭に、台湾とシンガポールが4社、日本の3社のほか、韓国も2社がランクインした。このほかブラジルと中東から3社、オーストラリア2社、南アフリカ1社という内訳になっている。
政治的な風向きの変化にも、グローバル100企業の姿勢は揺るがない
報告書の中で、コーポレートナイツは、米国で第2次トランプ政権が発足したことで、グリーン・トランジションを巡る世界の税制や規制が変わることを踏まえた上で、今後の企業情勢について、「ほとんどのビジネスリーダーが、気候危機の深刻化に対する懸念は、政治的な風向きの変化に関係なく高まると認識している。気候変動がもたらす高額な影響と、何よりも低炭素技術のコスト低下が、解決策への投資を促し続ける」と述べ、グローバル100企業のサステナビリティに対する姿勢が揺らぐことはないことを強調した。
また同社は、今回の調査にも関連し、トランプ大統領が、DEI(多様性、公平性、包摂性)政策の撤廃を進めていることに関しても、「トランプがDEIを廃止したいからといって、CEOがそうすべきというわけではない」と第した記事を発表。その中で、DEI に投資する企業は、同業他社に比べて、イノベーションや顧客ロイヤルティ、市場関連性といった面で高い競争力を持ち、「今日の二極化した市場において、DEI は政治的な声明ではなく、ビジネスを生き抜くための戦略だ」とする見解を表明している。
評価方法
ランキングは、総売上高10億ドル以上の上場企業が開示する財務報告書やサステナビリティ報告書、ウェブサイトの情報をもとに25のKPI(重要業績評価指標)から各社を評価している。
評価指標に含まれるのは、エネルギー生産性、温室効果ガス排出量、水生産性、廃棄物生産性、揮発性有機化合物生産性、窒素酸化物生産性、硫黄酸化物生産性、微小粒子状物質生産性、クリーンな収益(コーポレート・ナイツのクリーン・エコノミー・タクソノミーに基づき「クリーン」と分類される、環境・社会への貢献度の高い製品やサービスから得た収益)の割合、クリーンな投資(同タクソノミーに基づき「クリーン」と分類されるR&D、設備投資、買収など)の割合、負傷者、死者数、離職率、有給病気休暇、CEOの報酬と従業員の平均報酬の比率、サステナビリティ目標と連動した役員報酬制度、男性以外の執行役・取締役の割合、執行役・取締役の人種多様性、サプライヤーのサステナビリティ・スコア、納税率、企業年金の質、罰金・違約金などの制裁、政治的影響力。
火力発電用石炭、気候政策の阻止、森林破壊などの「危険信号」活動に従事している企業は失格となる。