• 公開日:2026.05.13
肌は社会とつながるインターフェイス。花王・ビオレがBtoB参入で描く適応戦略とは
  • 横田 伸治

Sponsored by 花王株式会社

スキンケアブランドとして長年BtoC市場をけん引してきた花王「ビオレ」ブランドがいま、新たにBtoB事業へと本格参入し、働く人々の暑熱対策を支える「社会インフラ」への進化を遂げようとしている。

背景にあるのは、「地球沸騰化」と呼ばれる気候変動だ。企業活動や人々のライフスタイルに不可逆的な変化が生じている中、企業はいかに適応し、社会課題の解決に寄与できるのか。今回は、2026年2月のサステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内に登壇した花王の小林達郎氏に、気候・市場・ビジネスモデルとそれぞれの次元で進むビオレの「適応」について話を聞いた。

interviewee
小林達郎

花王 ヘルスビューティケア事業部門 スキンケア事業部 ブランドダイレクター

2005年花王入社。セールス部門や、スキンケアブランドのキュレルとビオレ、ヘアケアカテゴリーのマーケティング担当を経験したのち、2023年にビオレのブランドマネジャーに就任。製品イノベーションを通じた社会課題解決型のマーケティング活動を推進。2026年より現職。

「環境ストレス」が人間らしい喜びを奪う

――先日のSB国際会議ではありがとうございました。改めて、今回のセッションやネットワーキングを通じて、どのような手応えがありましたか。

非常に有意義な場でした。例えば、セッションをご一緒したサントリーさまとは、登美の丘ワイナリーの農園で働く方々の熱中症や紫外線対策について深刻な課題を伺い、ビオレの「冷サポート」がお役立ちできるのではないかと、具体的な対話が生まれました。すでに農園で実際に製品を使っていただくべく、サンプルもお送りしています。

また、学校の先生方からも熱心にお声がけいただきました。「屋外での授業時など、教育現場でも暑さ対策は深刻な課題になっている」と相談をいただいて。ビオレが貢献できる場面が社会にはまだまだたくさんあるのだと、強く実感する場になりましたね。

 

 

――セッションでは、気候変動への適応がテーマになりました。その旗振り役となる日焼け止めなどのUVカテゴリーは、経営戦略「グローバル・シャープトップ」の中でも成長の軸として明確に位置付けられていますね。

実は花王の中期経営計画策定以前に、ビオレの事業部チーム内では2019年頃から議論が始まっていました。私たちが着目したのは、紫外線や過酷な暑さ、乾燥、摩擦など、肌を取り巻く「環境ストレス」です。

温暖化が進み、この環境ストレスが強まっていけば、人々は「焼けたくない」「暑い」と外に出ず、家にこもってしまう未来が来るのではないか。すると、人と人が触れ合う機会が減り、人間らしい喜びや実感のない社会になってしまうのではないか、という強い危機意識があったんです。

――そこで、UVケアに単なる「日焼け防止」以上の価値を見出されたと。

はい。そのときに出たのが、「肌とは、人と人、あるいは人と社会が触れ合うための『ヒューマン・インターフェイス』なのではないか」という考え方です。だとするならば、ビオレのプロダクトで肌を環境ストレスから守ることで、人と社会のつながりを広げていくことができるはずです。もちろん経営戦略とも連動していますが、私たちビオレチームの根底には、事業を通じてグローバルな社会課題を解決していくのだという強い思いがあります。

UV市場の成長を支える「生活者理解」

――気候変動という環境への適応は、プロダクトの進化にも直結していると思います。実際に、ビオレの日焼け止め関連商品の売上は飛躍的に伸びていると伺いました。

おかげさまで、2025年度の出荷金額実績で見ると、前年度比で112%、2022年度比では200%と3年間で2倍に伸びており、ビオレ全体をけん引するカテゴリーに成長しました。「365日、日焼け止めを塗る」という習慣が、SNSの普及などを通して定着してきたことも背景にあると思います。

――プロダクトの適応と変化は、どのように進んできたのでしょうか。

生活者の不満足や行動を徹底的に観察し、アップデートを繰り返してきました。例えば2023年に全国発売し大ヒットした「ビオレUV アクアリッチ 瞬感ミストUV」は、猛暑の外出先での「塗り直しが面倒」という不満を、ミストタイプにすることで解消した商品です。

また、2026年2月に発売し、すでに累計出荷本数135万本を突破(2026年4月現在)した「ビオレUV アクアリッチ 呼吸感ベールUV」は、汗をかきながら日焼け止めを塗る不快感そのものをターゲットにしました。湿度に応じて塗膜が厚みを変化させるため、屋外の蒸れた環境でも、屋内の乾燥した環境でも、常に快適でいられます。気持ち悪いものは絶対に使ってもらえませんから、「いかに簡単で気持ちいいものにするか」を追求したんです。

――生活者目線で発想を転換していく。1980年のブランド誕生時、中性の洗顔フォームで新たな習慣を作ったビオレならではですね。

おっしゃる通りです。花王石けんで始まった会社で、固形石けんからの脱却に挑戦したのがビオレですから。常に、その時々の生活者や社会の変化に合わせてプロダクトを適応させ、貢献し続けていくスピリッツは、ブランドのDNAとして脈々と受け継がれています。

「商流が全く違う」BtoB市場への挑戦

――そして現在進めているBtoB事業への本格参入は、ビジネスモデル自体の適応とも言えます。

労働現場向けの酷暑対策、「ビオレの冷サポート」ですね。コア商品となる「ビオレ 冷タオル」自体は数年前から発売していたのですが、コロナ禍と重なったこともあって、大きなムーブメントにはなりませんでした。

BtoB事業に発展したきっかけの一つは、2024年に花王の自社工場の暑さ対策として「冷タオル」を使ってもらったところ、現場から「非常に助かった」と反響が大きかったことでした。折しも2025年に労働安全衛生規則が改定され、職場での熱中症対策が義務付けられたタイミングも重なり、「過酷な環境で働く方々を、ビオレの技術で直接サポートできるのでは」と考えたのです。

2025年に約100社で試験的に導入いただき、手応えを得たことで、本格始動となる今年はすでに200社で採用が決定、年間500社の導入を目指しています。

――BtoCで圧倒的な認知度を持つビオレとはいえ、BtoB市場の開拓には苦労もあったのではないですか。

大変でしたね。BtoCとは商流が全く違いますし、何より商談相手が「現場の生活者」ではなく「企業の労務担当者さま」になるので、当初は相手のインサイトがつかめず苦労しました。

――その壁をどのように突破されたのでしょうか。

大きなブレイクスルーとなったのが、清水建設さまとの先行事例です。建設現場のお話を伺う中で、「すぐに暑さ対策を講じたいが、大きな設備投資は難しい」という悩みが浮き彫りになりました。そこで、小回りが利き、コストを抑えて導入できる冷タオルの強みが生きたのです。

さらに、「空調服」さまにご協力いただき、ファン付きウェアと冷タオルを併用することで「マイナス6度の肌温度低下が30分続く」という実証データも取得しました。確かなエビデンスとメジャーな現場での導入事例を提示できたことで、多くの企業からの信頼を一気に獲得することができたと感じます。

世界の暑熱課題を解決する共創パートナーに

――BtoBでの事業展開が、BtoC事業に良い影響をもたらすことはありますか。

もちろんあります。研究担当者と一緒に建設現場などへ足を運ぶことで、「過酷な環境下で製品をどう改善すべきか」というユーザー目線のアイデアが得られます。BtoB向けに製品を進化させれば、それは必ずBtoC向けの過酷な暑さ対策にもプラスになると感じています。

逆に、職場で支給された冷タオルの効果に驚き、休日のレジャー用に個人で購入してくださる方もいます。BtoBとBtoCのシナジーが回り始めたことで、ビオレは社会インフラとしてさらに強くなると確信しています。

――最後に、サステナブル・ブランド ジャパンの読者に向けて、今後の展望と共創のメッセージをお願いします。

地球沸騰化による暑さや紫外線の課題は、日本だけでなく世界共通です。BtoBの取り組みを通じて得た日本の先行事例は、グローバル展開を加速させる武器になると感じています。

従業員の安全や健康、そして社会課題の解決を真剣に考えている企業さまであれば、必ず私たちが提供できる価値があるはずです。プロダクトの提供だけでなく、我々が持つノウハウやメソッドを掛け合わせることで、可能性は無限大に広がります。暑さ対策や紫外線対策にお困りの企業さまはぜひ、一緒に課題解決に向けたアクションを起こしていきましょう。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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