
教育現場において「探究学習」の重要性が高まる中、学校という枠を越えて、社会のリアルな課題やリソースをいかに学びに接続していくかが問われている。
サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内の特別企画として2日間にわたり開催された「ESD Teacher’s Camp」。全国から教育関係者が集い、これからの教育の在り方を議論する本プログラムの2日目は、大学、クリエイティブ企業、グローバル企業という異なる立場からの実践的なインプットと、それを踏まえた参加教員たちによる白熱したグループワークが実施された。
| Day2 ESD Teacher’s camp ファシリテーター 住田昌治・学校法人湘南学園 学園長 パネリスト 原賢二・東京工科大学 工学部 応用化学科 教授 中里洋介・博展 クリエイティブディレクター 鷲谷僚子・ネスレ日本 コーポレートアフェアーズ統括部 |
教室の枠を越える、三者三様のアプローチ
セッション前半では、次世代の「伝える力」と「課題解決力」を育むための、多様な教育アプローチが紹介された。

東京工科大学の原賢二氏は、規定のカリキュラムにとどまらず学生の主体性を引き出す「戦略的教育プログラム」を紹介。小中高生に科学の楽しさを伝える「サイエンスコミュニケーター」の育成や、AI技術を活用して社会課題に切り込むプロジェクトを展開しているという。原氏は「実社会には決まった答えがない。大学生が試行錯誤するリアルな姿自体を、中高生に向けた探究学習の『教材』として提供し、世代を超えた学びの連携を生み出したい」と共創を呼び掛けた。
続いて、空間やイベントなどの体験デザインを手掛ける博展の中里洋介氏は、教育におけるアプローチとして「好奇心をデザインする」ことの重要性を強調した。卓球用品を扱うタマス、新渡戸文化学園と協働した「Ping-pong Block Project」では、卓球のラケットグリップの端材を再活用。パズルのように遊べる卓球台などを生み出した。「主体性を無理に伸ばそうとするのではなく、素材の面白さから生まれる生徒の好奇心を引き出し、1つの体験へとデザインしていくサポートがしたい」と語る。
ネスレ日本の鷲谷僚子氏は、全国1100校以上の中学・高校で導入されている探究学習教材「ネスレ サステナビリティ プログラム」の実践例を紹介した。キットカットの紙パッケージ化や気候変動下でのコーヒー農家支援など、自社が直面する社会課題を動画教材として提供。「社会課題は1社では解決できない。次の世代にも身の回りのことに目を向け、主体的に協力して考える力をつけてほしい」と語り、生徒たちを本社に招いて開発担当者と直接対話する機会を設けるなど、企業と教育現場のリアルな接点創出に力を入れていることを共有した。
企業連携の鍵は「Win-Winの関係」
後半では、登壇者たちも各テーブルに加わり、参加教員たちとのグループワークが行われた。各学校での探究学習の現在地や課題が共有されたほか、登壇者への質問も飛び交った。

あるグループでは、「かつての企業による『出前授業』は単発で終わってしまい、継続的な学びにつながりにくかった」という学校現場のリアルな悩みが共有された。これに対し、登壇者と教員たちは、単なる「お客さん」としての企業訪問ではなく、お互いが「Win-Win」になれる継続的な連携の形を模索。企業や大学のリソースを「教え込む」ために使うのではなく、子どもたちの「内発的な学びのきっかけ作り」としてどうデザインするかが白熱して議論された。
ワークの終了後には、さらに教員同士や登壇者と自由につながり合う「フリーネットワーキング」の時間が設けられ、全国から集まった教育者たちが名刺交換や具体的な協働の相談を行う熱気に包まれた。
教育は「共に育ち合う」時代へ

ファシリテーターを務めた湘南学園学園長の住田昌治氏は、「教育」という言葉の再定義について語った。「エデュケーションを『教育』と訳したところに間違いがあったとも言われる。(本来の意味は)教えて育てるのではなく、共に学び合う『教学』であり、共に育ち合うということだ」と、一方的な知識伝達から双方向の学びへの転換を強調する。
「学校の中に閉じこもっていてはできない。壁を低くし、シームレスに社会とつながりやすい関係性を作っていくことが、ESDや探究学習の本質だ」と住田氏が総括したように、企業・大学・学校がフラットな関係でつながり、「共創」の土壌を育むことの重要性が確認された、実りある時間となった。
横田 伸治(よこた・しんじ)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。









