• 公開日:2026.05.20
パーパスだけで働けるのは「4年まで」。生きた理念で行動を変えるポイントは
  • 横田 伸治

企業のパーパスはどのように社会や社員を鼓舞しているのか。単なるスローガンに終わるパーパスと、本気で共感と行動を引き出すパーパスの違いはどこにあるのか。

サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内のセッション「なぜ、この企業のパーパスは人々を鼓舞するのか」では、企業経営の現場でパーパスを実装してきたリーダーたちが登壇。同会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏をファシリテーターに、ダノンジャパンの佐々木恭子氏、GPSSホールディングスの目﨑雅昭氏、マザーハウスの山崎大祐氏が、パーパスが機能するための条件を語り合った。

Day1 ブレイクアウト

ファシリテーター
青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー / 駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

パネリスト
佐々木恭子・ダノンジャパン コーポレートアフェアーズ本部 シニア パブリックアフェアーズ&サステナビリティ マネージャー
目﨑雅昭・GPSSホールディングス 代表取締役
山崎大祐・マザーハウス 代表取締役副社長

パーパスだけでなく、行動とリターンを

山崎大祐氏

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」との理念を掲げるマザーハウスの山崎氏は、「トップの行動こそがパーパスを体現すべき」と考え、代表取締役社長の山口絵理子氏とともに、自ら途上国に足を運び続けているという。またプロダクトづくりに実際にパーパスを反映していく必要性にも触れ、視覚障がい者の視点から開発したブラインドサッカーバックパックや、セールを行わず定価で最後の一つまで届け切るプロジェクト「最後の一品店。」など、多角的な取り組みを紹介した。

山崎氏はパーパスと経済合理性に関する冷静な視点も提示した。「(社員にとって)良いパーパスだけで働けるのは4年が限界。一定水準以上の給与やリターンがないと、みんな辞めてしまう」。社員が共感する理念を強固に掲げつつも、それを経済的リターンに結び付けるための確かな経営の必要性を説いた。

幻滅、燃え尽き パーパスの持つ負の側面

佐々木恭子氏

ダノンジャパンの佐々木氏は、1972年にダノン初代CEOであるアントワーヌ・リブー氏が掲げた「社会の発展なくして、企業の成功はない」という理念を紹介。これに基づいて同社が進めてきたBコープ認証の取得や、全子会社の環境面・社会面のサステナビリティを評価するプログラム「ダノンウェイ」など、「パーパスを組織に埋め込む(Purpose in Action)」ための実践を語った。

一方で佐々木氏は、パーパスの持つ負の側面についての研究論文も紹介した。高潔なパーパスと現場の実態がかい離した際の「社員の幻滅」や、野心的な目標による「バーンアウト(燃え尽き症候群)」といったリスクを列挙。「パーパスは、やればやるほど良いわけではない。財務的パフォーマンスとのコンフリクトや、ステークホルダーによる受け取り方の違いに注意を払うべきだ」と警鐘を鳴らし、「社員一人ひとりのウェルビーイングや尊厳を見た上での組織のパーパスであるということを、常に意識したい」と述べた。

「個人の人生とどれだけオーバーラップできるか」

目﨑雅昭氏

太陽光や地熱など自然エネルギーの開発を全国で手掛けるGPSSホールディングスの目﨑氏は、大規模なインフラ事業を推進する上で不可欠な、地域住民との信頼関係について言及した。地域と利益を分かち合う「共同オーナー制度」など、同社の事業モデルそのものが理念の体現であるという。

目﨑氏は、パーパスが機能するための条件を「個人とのオーバーラップ」に見出す。「パーパスというものが、自分の人生とどれだけ本当に重なるか。自分ごととして腹に落ちていけるかが一番重要なポイントだ」。単なる会社の目標としてではなく、現場で地域の人々と向き合う社員一人ひとりが、自らの人生観とパーパスを結び付けて語れることが、困難な事業を前に進める原動力になると語った。

パーパスを行動として説明できるように

青木茂樹氏

ファシリテーターを務めた青木氏は、「パーパスは作ったものの、その本質的な問いがどこにあるかを制度的に、また行動として説明できている企業はまだまだ少ない」として、現代の多くの企業が抱える課題を指摘する。これを踏まえ、セッション後半のディスカッションや質疑応答では、パーパスをいかに自社の中期経営計画や現場での日々の業務に落とし込んでいくかなど、より実践的な課題について意見が交わされた。

パーパスで人々を鼓舞するために、何をするべきか。パネリストらは、組織の内外で共感を生み、行動を引き出す「生きたパーパスの活用」こそが、これからの企業経営における不可欠な要件だと強調した。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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