• 公開日:2026.04.24
水資源管理の国際認証AWSが基準を改訂 日本企業の取り組みと主な変更点
  • 茂木 澄花
image credit: Unsplash

水資源管理の国際認証団体アライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS)が3月18日、認証規格の改訂を発表した。AWSの認証は、工場などの拠点だけでなく流域全体で持続可能な水の利用・保全に取り組んでいることを確認するもので、サントリーなど日本企業による取得実績もある。今回の改訂では、企業の導入負担を軽減するため、認証要件の枠組みが整理された。また、気候変動や生物多様性といった周辺課題や、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)といった他の報告枠組みとの整合性も高まった。

「AWS」「ウォーター・スチュワードシップ」とは

AWSは、責任ある水資源管理の国際基準を作ることを目的として、2009年に国連、NGO、研究機関などによって設立された非営利団体。2014年に最初の認証規格を公表し、それに基づく拠点単位での認証を始めた。「コア」「ゴールド」「プラチナ」の3段階の認証があり、2026年4月現在、世界で415拠点が認証されている。

「スチュワードシップ(Stewardship)」とは、自らが所有していないものについて責任を持つことを意味する言葉だ。ウォーター・スチュワードシップは、水という共有資源を使うにあたって、生態系全体に影響を及ぼす可能性を認識し、責任を果たす考え方である。工場など自社の範囲にとどまらず、流域全体に目を向けて行政や地域社会と連携し、持続可能な形で水資源を利用・保全することを指す。

日本では企業が取り組みをリード

国内では、サントリーホールディングスと日本コカ・コーラが、それぞれ4カ所と2カ所の拠点で認証を受けている。特にサントリーは、日本で初めてAWS認証を取得し、現在では「サントリー天然水」の4工場全てが最高位のプラチナ認証を取得するなど、国内でウォーター・スチュワードシップ推進をけん引している。

2025年3月には、日本企業5社(下記)によるワーキンググループ「ジャパン・ウォータースチュワードシップ(JWS)」が始動した。AWS本部と連携して、研修などの日本語プログラムの提供、流域における企業間のネットワーク構築、行政との協力強化などに取り組んでいる。

JWSメンバー企業

・サントリーホールディングス

・日本コカ・コーラ

・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス
熊本県での流域治水などを地域の大学や金融機関とともに推進している。また、グループのMS&ADインターリスク総研では、企業の水リスク管理などを支援。

・栗田工業
水処理に関する製品・サービスの提供を通じて、水資源問題の解決に貢献している。自社拠点における持続可能な水資源管理の実践にも注力。

・八千代エンジニヤリング
総合建設コンサルティング企業として、長年、水循環・水資源に関する調査に携わる。国や地方自治体の政策立案、民間企業の支援を手掛ける。

規格改訂のポイント

AWSは3月22日の「世界水の日」に先駆け、認証規格の改訂版を公表した。2019年の改訂に続き、今回が2度目の改訂となる。改訂版の公式発表はサントリーグループの東京拠点で開かれ、AWSメンバー企業やNGOの担当者、専門家などが集まった。

AWSのエイドリアン・シムCEOは、次のようにコメントしている。

「AWS規格バージョン3.0では、要件の明確化や包摂性の向上を図りました。ますます複雑化する水の課題に、より実効性のある対策を可能にします。現在、世界では水循環が激化し(訳注:洪水や干ばつなど)、気候変動によって不確実性が高まり、水質への懸念が増大し、企業に対する監視や消費者からの期待が高まっています。本バージョンは、こうした中でも、企業が自信を持って効果的な対応を取るのに役立つものです」

今回の改訂の目的は大きく3つあるという。1つ目は「適用しやすさ(Practicality)」で、企業がコスト効率よく大規模に導入できるよう要件を整理した。2つ目は「他分野との整合性(Utility)」で、関連する他のサステナビリティ課題との整合性を高めた。3つ目は「経営・開示への付加価値(Value)」で、各企業の報告との整合性を高めた。各目的に対応する主な改訂ポイントは次の通り。

 

①適用しやすさ(Practicality)

・これまでは、「コア」の基準を全て満たした上で「アドバンス」の基準をいくつ満たしたかによって「コア」「ゴールド」「プラチナ」の区分が決まる仕組みだった。改訂版では「ゴールド」と「プラチナ」の要件が明確に区分され、3種類の要件のバランスが見直された。これにより、取り組みの優先順位と改善の道筋が分かりやすくなった。

・重複する要件や重要度の低い要件を削除することで、要件の数を26項目減らし、72項目にした。コア認証を取得するには、50項目のコア要件を満たす必要があり、ゴールド認証ではさらに15項目のゴールド要件、プラチナ認証ではコア要件とゴールド要件にさらに7つの要件が追加される。

・要件に対する解釈の違いを減らすため、「ステップ3:実施(Implement)」の要件について「コア」「ゴールド」「プラチナ」それぞれの具体的な最低水準を設定した。

 

②他分野との整合性(Utility)

・気候変動による影響を把握し、リスクを特定し、気候変動に強い水資源管理の計画を立てるという要件を追加した。

・前のバージョンでは「水資源に関連する重要区域」と題していたアウトカム(認証が意図する結果)のタイトルを、「健全な淡水生態系とそれらの生物多様性」に変更した。淡水の生態系や種を特定し、それらを保護、保全、回復することを重視する要件に改訂した。

・水関連の課題を共有する複数のステークホルダーが協働して取り組む活動(コレクティブ・アクション)に関する要件を拡充した。

 

③経営・開示への付加価値(Value)

・企業が水資源に与える影響と、企業の水資源への依存状況、その両方を明らかにした上でリスクと機会を特定することを求める項目を追加した。これにより、ダブルマテリアリティの考え方を組み込んだ。

・EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づく欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の中の、水に関する開示基準との互換性を持たせた。改訂版AWS規格による認証のために必要な情報は、そのままCSRD報告にも使える。

・一部の用語の定義を、TNFDとCDPに合わせて修正した。

 

改訂版のAWS規格は、1年間の移行期間(監査を受ける企業が新規格と旧規格を選択できる)を経て、2027年3月22日以降は全ての新規認証と更新が新基準に沿って実施される。

今回の改訂によって、責任ある水資源管理のための道筋が一層明確になった。さらに、気候変動や生物多様性など、関連する課題に対する取り組みとの連動が強化されるとともに、他の報告枠組みとの整合性も高まった。日本企業にとって、AWS規格を参考に水資源管理の取り組みを進めることは、義務化も見込まれるTNFD開示などへの備えにもつながるだろう。

【参照サイト】

Alliance for Water Stewardship
https://a4ws.org/

ジャパン・ウォータースチュワードシップ
https://a4ws.org/japan-jp/

サントリーホールディングス
https://www.suntory.co.jp/sustainability/env_water/aws/

written by

茂木 澄花 (もぎ・すみか)

フリーランス翻訳者(英⇔日)、ライター。 ビジネスとサステナビリティ分野が専門で、ビジネス文書やウェブ記事、出版物などの翻訳やその周辺業務を手掛ける。

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