• 公開日:2015.12.17
43号 世界のソーシャル・ビジネス(インドネシア) 「ゴミ」で村おこし観光資源化で大成功
    • 瀬戸 義章

    村中に設置されたゴミ箱

    インドネシアのスクナン村は、リサイクルビジネスによる村おこしに成功した農村である。彼らは生ゴミのコンポスト化や資源ゴミの分別回収、リサイクル雑貨の販売のみならず、リサイクル活動そのものを「観光資源化」することで、全世界からの視察・観光客を集めているのだ。(瀬戸義章)

    インドネシアのスクナン村は、コミュニティービジネスをユニークな手法で軌道に乗せた農村である。ジャワ島中部に位置する人口約1100人、300世帯が住むスクナン村は「ゴミ」による村おこしを成功させたのだ。この村では「生ゴミのコンポスト化」「資源ゴミの分別回収」「リサイクル雑貨の製作」などリサイクルに関するさまざまな事業が行われている。

    発展途上国で排出される割合の最も高い廃棄物は生ゴミだが、スクナン村では各家庭に素焼きのコンポスターを設置し、堆肥にしている。残りのプラスチックゴミや瓶、缶、鉄くずなどは分別回収され、定期的に業者に売却されている。

    2カ月分の販売額は約7千-8千円だ。インドネシア都市部の平均月収は約2万円であることから、侮れない金額である事が分かる。また、廃材リメイクも活発であり、飲料のプラスチック容器をリメイクしたバッグや財布が100円から数千円で販売されている。

    ここまでならば、類似の取り組みをするコミュニティーは珍しくない。スクナン村がユニークなのは、こうしたリサイクル活動そのものを「観光資源」にしていることだ。

    ハンドメイドのリサイクルバッグを背負うリサイクルビジネスのイスワント代表

    月600人が視察に

    貧しく小さな村がリサイクルビジネスによってどのように豊かになっていったのか、そのノウハウを求める世界中の人々が月に500-600人見学に訪れるのである。彼らは村が主催するワークショップに参加し、リサイクル雑貨をお土産に買っていく。

    リサイクルビジネスの代表であるイスワント氏がプロジェクトを始めたのは、2004年のことだ。

    「ゴミ拾いで生計を立てる『スカベンジャー』たちが私に教えてくれたのです。ゴミだと思っていたものは、実はお金になるのだと」

    すぐさま生ゴミの堆肥化実験を行うとともに、村民を巻き込んだ啓発活動を続けていった。リサイクルの意義を伝える歌を作り、壁画を描き、ゲーム形式で子どもたちに教えていった。廃材のリメイクは夫人の担当だ。試作品のカバンを作り、縫い方を指導していった。

    村中を巻き込むまでには、数年の歳月を要したと言う。今では、生ゴミのコンポスト化や資源ゴミの分別回収、リサイクル雑貨の製作は、村民が分担して行う「仕事」だ。農村では貴重な現金収入を得られる雇用創出に繋がった。

    スクナンの活動は大きな注目を集め、2012年には映画化もされた。今では200近いインドネシアの農村が、スクナン村を参考に同様の取り組みを始めている。

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    written by

    瀬戸 義章(せと・よしあき)

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