「エコ」「グリーン」といった曖昧な環境表示への規制が欧州を中心に強まり、日本でも環境省が環境表示ガイドラインを改定する中、認証型・自己宣言型の環境ラベルはどう機能し、消費者にどう伝わるべきか。サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内のセッション「製品の環境情報を伝えるためのラベルの有効性―認証・自己宣言―」では、グリーン購入ネットワーク(GPN)の深津学治氏がファシリテーターを務め、日刊工業新聞社の松木喬氏、横浜国立大学の松葉口玲子氏、日本生活協同組合連合会の松本哲氏が登壇。ラベルの信頼性担保と消費者コミュニケーションの在り方を議論した。

Day2 ブレイクアウト

ファシリテーター
深津学治・グリーン購入ネットワーク(GPN)事務局長 

パネリスト
松木喬・日刊工業新聞社 編集委員 
松葉口玲子・横浜国立大学 教育学部 教授 
松本哲・日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室

自己宣言型ラベルの「乱立」をどう見るか

セッションは深津氏の問いかけに、各パネリストが応え、議論を深める形で進行した。

深津氏はまず、景品表示法やISO 14021、欧州のグリーン訴求指令案など国内外のルールを整理。「環境に配慮されたマークのある食品・商品を選ぶ」と答えた消費者が23.9%となった環境省調査も紹介した。GPNが調べたところ、企業が新たに自社の環境ラベルを作ったリリースは、2023年前後で40件近くに上った。「ある種乱立というのか、どんどん増えてきている」流れをどう捉えるかを最初の論点に据えた。

最初に応じた松木氏は、認証型と自己宣言型の双方に懸念を示した。CDPやSBTi、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など企業に対応を求める枠組みが増えていることを念頭に、「認証料や審査料がかかっている。もしコンサル料も払っているのであれば、太陽電池を付けたほうがCO2は減るから、そっちの方がいいのではないか」と率直に語った。一方で自己宣言型については、「乱立すると見分けがつかず、消費者が困る。ただ、まだその段階ではない」と冷静に見立てた。

松木喬氏

松葉口氏は、海洋エコラベルを例に「最初はMSCが出てきて、その後ASCなどいろんなものが出てきた。ラベルの違いが何なのか、よく分からなかったりする」と指摘。「私も混乱するぐらいだから、一般の消費者はもっと混乱するのではないか。まずは一度、整理してほしい」と続けた。

実際に商品にラベルを付ける側の松本氏は、日本生協連が1990年代の独自環境統一マークから、2010年ごろに外部基準採用へ方針を転換した経緯を説明。その上で、「第三者認証の方が、審査の基準や評価の報告書がウェブサイトなどで公開されるので、われわれにとって頼りがいもある。自社で基準を作って自社で審査するのは、もう今は無理だと思う」と語った。

ラベルから企業へ、信頼の重心が移る

議論は「信頼性の担保」に移った。松葉口氏は「消費者の側からすれば、ラベル一つ一つを見るよりも、『生協が選んでくれているから大丈夫』というような安心感」が働くと述べた。詳細はQRコードで誘導する方法も有効だと提案した。

松葉口玲子氏

松木氏も同様の見方を示した。自身は再エネ電気契約や、再エネを使う家電メーカー、障がい者雇用に取り組むコーヒー店での購入など、ラベルではなく「企業の中身」で選んでいると明かした上で、「ラベルのマークよりも企業のブランドの方が発信力がある。企業の中身が大事ではないか」と語った。FSC認証のパッケージを使っていても製造工程で大量の廃棄物を出すなら、ラベルの価値は損なわれるとも指摘した。

「環境にやさしい」より「自分ごと」へ

2つ目のテーマ「企業と消費者のコミュニケーション」では、松葉口氏が問題の核心に切り込んだ。環境ラベル付き商品を選ぶ層が23.9%に上ったとの調査結果を「ある意味二十数パーセントしかいない」と捉え直し、「『環境にやさしい』『環境のためにこれをやりましょう』といったフレーズではなく、なぜそれをやらないといけないのかを伝える。やらないと資源が取れなくなるし、子どもや孫の世代が息苦しくなっていく。結局は自分のところに全部、負荷がかかってくるんだということを、もっと認識してもらう必要がある」と訴えた。

松本哲氏

売り場での実装について松本氏は、5000人規模の組合員調査の結果を紹介した。MSCラベルの認知度は、2016年の約16%から2025年には約4割まで上昇。一方、2021年春に始めた共通ロゴ「コープサステナブル」は、半年後の認知度が6%だったが、2年後には対象商品が250品ほどに増え、認知度も46%まで上がったという。松本氏は「普段使っている商品にラベルが付いているかどうかで、消費者の認知は変わる。よく売れている商品にラベルを付けるのが、一番効果的ではないか」と語った。

認証を取って終わりではなく、伝え続ける

クロージングで松木氏は、ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を扱う福岡のハウスメーカー、エコワークスの事例を紹介した。ZEH対応で値段が高くなる理由を営業担当が丁寧に説明し、10年前の2倍の売り上げを実現したという。「ラベルを取って終わりではなく、伝えるということが大事」と語った。

松葉口氏はラベルを学習の入口に位置付け直すことを提案。「『これ何だろう』と調べていくことで、いまこういう問題があって、これを解決するのにこういう方法があるのか、と学習が始まっていく」と語った。松本氏は「水産でいえば生産現場では認証を取っているけれども、最終消費者に届くところにはラベルが付いていない商品も多い。生協だけでなく、いろんな企業にラベルが広がってほしい」と流通側への広がりを課題に挙げた。

深津学治氏

最後にファシリテーターの深津氏は、「自己宣言型は自己宣言型としての良い面があり、企業としての取り組みを示す良いツールの一つ。第三者認証も含めて共通して言えるのは、基準や運用プロセスがきちんと開示され、消費者に分かりやすく示されているかが大事なポイントだ」とまとめ、「認証型、自己宣言型それぞれの特徴を補完しながら、消費者への情報発信、信頼して選べる市場づくりにつなげてほしい」と締めくくった。

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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