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ユニー(愛知県稲沢市)は、羽毛布団リサイクルのための下取り企画を実施し、その収益金100万円を、世界遺産保全のために寄付をした。2016年2月9日、和歌山県庁で行われた贈呈式では、ユニーグループ・ホールディングスの百瀬則子執行役員と、羽毛布団のリサイクルを行うエコランド(三重県伊勢市)黒田健取締役社長へ、下宏副知事から感謝状が手渡された。
熊野古道などの参詣道は、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された。参詣道として世界遺産に登録されているのは、この道とスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の2例だけである。
和歌山県では、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を次世代に引き継ぐため、保全活動「道普請」のボランティアとして、多くの企業や団体等の協力を得て、参詣道の修復を行っている。
![]() 左:ユニーグループ・ホールディングス執行役員の百瀬則子さん
右:和歌山県観光局長の山西毅治さん |
日本で唯一、自らの手で世界遺産の保全を
一般の人が世界遺産の保全に携われる場所は、国内でもここだけだ。ユニーの百瀬さんも、保全活動に参加したことで、その必要性を実感した。
「世界遺産は触ってはいけない、大事に見ているものだと思っていた。だんだん傷んでくる熊野古道を、私たちが参加して守れることは感動的。世界遺産に自分が関われることは、めったにないので、何か出来ないかとずっと思っていた」と、羽毛布団リサイクルの企画が始まったきっかけを語った。
スーパーマーケットを展開するユニーは、環境省が認定する「エコ・ファースト企業」として、循環型社会を目指した取り組みを行っている。
羽毛布団は、回収して羽毛をきれいに洗うことで、ダウンジャケットなどに再利用が可能だ。エコランドの黒田さんは、「羽毛は焼くと、二酸化炭素を排出する。1キロ焼くと、1.78キロのCO2が出る。環境のことを考えるならば、要らないものを焼かずに、循環させることだ」と再利用の意義を話した。
世界遺産を次世代に引き継ぐため、多くの人の協力を
羽毛布団の下取りは難しく、ほとんど集まらないことが多いという。百瀬さんも当初は「集まるかどうか不安だった」と言う。しかし、熊野古道などの保全に役立てるためにと協力を求めたところ、予想以上の2,400人が協力をしてくれた。
羽毛布団1点ごとに5円の寄付と、再生利用の収益金を合わせて、和歌山県に100万円の寄付を行うことができた。下副知事は、「循環資源を活用し寄付をいただくことは意義深い。このような運動がもっと広がっていってほしい。」と寄付への感謝を伝えた。
ユニーは、4月に親子向け熊野古道保全ツアーを実施する。「環境と子どもたちがユニーの社会貢献テーマ。自分が動き、昔から伝わる熊野古道を保全することは、子供たちにとっても良い思い出になり、次の世代にきちんと伝えてくれる。」と百瀬さんは語った。
辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)
オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。