2024年は「ポストSDGs検討元年」、経団連や万博協会が日本のこれからを議論
第 6 回未来まちづくりフォーラム
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2015年に採択されたSDGs。2030年の達成期限を前に2027年には、ポストSDGsの議論が始まると予想されている。まちづくりに取り組む企業、団体、研究者らによる「未来まちづくりフォーラム」は、オープニング特別シンポジウム「SDGs2024『ポストSDGs検討元年』を迎えて」を実施。ポストSDGsをどう捉えるべきか、日本企業や大阪・関西万博の取り組みを交えながら議論した。(清家直子)
ファシリテーター
笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長、千葉商科大学 教授、サステナビリティ研究所長
パネリスト
長谷川知子・一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事
永見 靖・公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 持続可能性部 企画局 持続可能性部長
泉谷由梨子・BuzzFeed Japan ハフポスト日本版 編集長
ファシリテーターを務めた笹谷秀光氏は、「2024年からのキーワードはポストSDGs。世界で通用する共有言語でありベースであるSDGsを、今こそ再考するべきだ」とシンポジウムをキックオフ。
笹谷氏は、これまで企業がSDGsの169のターゲットに当てはめて取り組んできたことは「規定演技」であるとし、これからは重点を決め直し、独自の強みを生かす「自由演技」を拡大すべきと提唱した。「企業の“自由演技集”こそが、SDGs18番目の目標となる」と期待を込め、24年を「ポストSDGs検討元年」と宣言。その後、パネリストが各事例を紹介した。
情報開示と主体の共創が不可欠――経団連
まず、経団連の長谷川知子氏は、2023年9月にニューヨークに派遣した「経団連SDGsミッション」の調査を紹介し、「国連関係者はSDGsの達成について非常に強い危機感を持っていた」と明かす。
(講演資料より)
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では、そのなかで国連が日本企業に期待しているものは何か。それは「技術と知見」だという。「日本の技術や知見を世界で発表し、それを共有・普及してほしいと求められた。その技術や知見を積み重ねてきた日本企業や政府がこれからの重要課題について正しく、かつ大胆に決断することこそ、SDGsの達成につながる」と展開した。
長谷川氏
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「Society5.0 for SDGs」を掲げ、経済発展と社会的課題解決の両立を目指している経団連。長谷川氏は「叶えるためには技術革新とともに、多様な人々の2つの “そうぞう力”、クリエイティビティ(創造)とイマジネーション(想像)が不可欠だ」と主張する。
経団連は、政府のSDGs実施指針改定にも参加。そこから見えてきた課題について長谷川氏は「企業の取り組みは一般化してきたものの、市民社会の一部からはグリーンウォッシュやSDGsウォッシュだという批判なども根強い」とし、企業の競争力や価値を向上するために情報開示の充実が必要だと訴える。一方で、サステナビリティ開示基準の乱立に企業は困惑している。「グローバルな場で開示基準の統一化を図る試みがあるので、経団連も積極的に参加し日本企業のニーズを満たす形でベースライン化に協力したい」と語った。
さらに企業や民間、公的機関などによる「多様な主体間の協創」の必要性を挙げ、その活動を国内にとどめることなく、世界で横展開すべきだと締め括った。
万博で出てきたアイデアなどを未来へのレガシーに――2025年日本国際博覧会協会
永見氏
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続いて、2025年日本国際博覧会協会の永見 靖氏はまず、「大阪・関西万博と呼ばれているが、関西のイベントと捉えず、皆さんに関心を持ってほしい」と訴えた。「未来社会のデザインかつ実験場」である同万博。SDGsについて足元の対策を固めつつ、「アイデアやコンセプトを提示し、国際連携できる場にしたい」と語る。
持続可能性の追求としてISO20121適合を視野に、脱炭素や自然循環、生物多様性のほか、調達コードなどに配慮。「過去の万博のレガシーを引き継ぎつつ、サプライチェーン全体を見て、環境や人権への配慮を確認する作業を丁寧に行っている」と明かす。期間中は万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に基づき、地球規模のさまざまな課題を議論する場を設ける。永見氏は「出てきたアイデアやコンセプトを未来へのレガシーにしたい」と意気込む。
永見氏の講演を受けて長谷川氏は、災害や紛争によって多くの人が命を落としていることに胸を痛めていると話す。「改めて命の尊さを実感するとともに分断傾向が著しい時代において、多様性を認め合い、連携の大切さをテーマに掲げている大阪万博は意義が大きい」とし、「経団連も英知を出し合って世界規模のソリューションを見つけ、万博を多様性に満ちた世界をつくるきっかけにしたい」と協力する姿勢を示した。
ユーモア、ポジティブさ、ワクワクを大切にしたい
泉谷氏
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「知るからアクションへ」を掲げ、「知ることから一歩進み、どうやって実現するかという個別の課題に目を向けていく段階にある」と語るのは、ハフポスト日本版編集長の泉谷由梨子氏だ。
「企業に対する市場評価は変わってきている。その評価のベースとなる情報を提供し、個人・企業が課題を解決する具体的な手法を共有することこそ、メディアの役割」だと話す。水谷氏が大切にしたいポイントは3つ。ユーモア、ポジティブさ、そしてワクワクだという。「不安をあおり過ぎず、遅すぎることはないことや自分たちで変化を起こせることを伝えたい」と展望を語った。
笹谷氏
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シンポジウムの後半では、ポストSDGsや「18番目の目標」などについて、それぞれが持論を展開した。笹谷氏は、「SDGsは文明のリトマス試験紙ではないかというほど、国や地域で取り組みが異なる。日本は日本らしく取り組んできたが、ポストSDGsを考える上で、弱いところ・強いところを詳細に分析し、本質的に深める時期に突入した」と語った。
「日本が得意とする分野は、トランジションテクノロジーやサーキュラーエコノミー、資源循環技術。先駆けて少子高齢化に突入した結果の、ユニバーサルヘルスケア※も進んでいる」と長谷川氏。「そういった強みを政府や企業、市民が議論し、世界に発表していくことが、ポストSDGsの18番目として日本が掲げるべき目標につながるのでは。安全保障というSDGsの本質を再考し、課題意識を深めていこう」と訴えた。
※ すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受できること
一方で泉谷氏は、18番目は、「メディアでありたい」と自らの思いを打ち明ける。国際紛争が激しい現代では、偽情報や誤情報が新しい脅威になっているとし、「本当の意味で信頼できる情報を届け、メディアが信頼に足る居場所だと思ってもらえる存在となりたい」と自戒を込めて語った。
最後に笹谷氏は、「発信し、共に考えることがプラットフォームになる。これこそが、『未来まちづくりフォーラム』のテーマ。皆さんそれぞれが違う角度から同じ方向を見ていると実感した。この学びを受け止めて、周りに話すことがもっとも大事な浸透力になる」と締め括った。