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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

企業が主導するサーキュラーエコノミーへの転換――小田急電鉄、イオン、大日本印刷の取り組み

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SB国際会議2024東京・丸の内

Day1 ブレイクアウト

人口増加を背景とし、資源の大量消費・廃棄をもとにした「直線型経済」は持続可能な経済モデルではなくなってきている。欧州グリーンディールではサーキュラーエコノミー(CE)を中核政策として位置付け、2023年には企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が発効された。日本では2023年に、国内の資源循環システムの自律化・強靱(きょうじん)化と国際市場獲得を目指した「成長志向型の資源自律経済戦略」が発表されるなど、CEへの転換は急務とされている。本セッションでは、CE実現に向けて取り組む先進企業が集い、現状と課題、展望を語り合った。(横田伸治)

ファシリテーター
甲賀大吾・PwCサステナビリティ合同会社 ディレクター
パネリスト
作田有沙・小田急電鉄 デジタル事業創造部 ウェイストマネジメント事業WOOMSリレーションシップマネジャー
鈴木隆博・イオン 環境・社会貢献部 部長
西村知子・大日本印刷 情報イノベーション事業部 ソーシャルビジネスセンター ソーシャルビジネス本部 環境ビジネス推進部 部長

小田急電鉄、地域の産廃事業者をサポート

作田氏

まず、循環型社会の実現を目指して発足させた「WOOMS事業」について、小田急電鉄の作田有沙氏が紹介。地域事業者が独自に廃棄物の再生処理先を見つけるのは難しく、また運搬が少量ずつであるため負担が大きいという現状を背景に、同社が中心となって地域事業者のサポートするのが「WOOMS CONNECT」だ。より最適な資源循環フローの提案や、より輸送距離の短い処理施設の提案などを実践している。

現在は、「海老名地区食品リサイクルループ」と名付けた、海老名・座間エリア(神奈川)の食品残渣(ざんさ)排出事業者の廃棄物をまとめて運搬し、コストを削減する実証に取り組んでいる。作田氏は「皆さまと協力することで、ごみの無い世界が実現できると思っている」と連携を呼びかけた。

使い捨てから繰り返し使うライフスタイルへ、イオン

鈴木氏

イオンでは、2030年までに使い捨てプラスチックを半減するなどの内容を盛り込んだサステナビリティ基本方針を定め、約2万店舗の回収拠点を活用したプラスチック資源の回収に力を入れている。ペットボトルの回収量は直近10年間で6600トンから1万3500トンへ倍増、うち2000トンがペットボトルに再生されているという。

容器のリユースプログラム「Loop」も特徴的だ。これは購入した飲料の容器を消費者が店頭で返却すると、検品・洗浄後、再び製品を詰めて店頭に並べる仕組みで、同社の鈴木隆博氏は「リサイクルだけでは全てを解決できない。使い捨てから繰り返し使うライフスタイルへの転換を、お客様に訴求する必要がある」とサプライヤーや自治体と協働して取り組みを進める狙いを語った。

他事業者のCE促進を支援、大日本印刷

西村氏

大日本印刷の西村知子氏は、2020年に策定した「DNPグループ環境ビジョン2050」で、循環型社会が取り組みの柱の一つに位置付けられていると紹介した。

同社は印刷事業以外に、他の事業者のCE促進の伴走支援も手掛けている。例えば、同社が複数の工場を置く埼玉県では、県が設立した「プラスチック資源の持続可能な利用促進プラットフォーム」に参画。参画企業7社によるマテリアルリサイクルグループに対し、プロジェクト管理やシステム提供しているという。西村氏は「トレーサビリティがどこまで実現できたかをデータで可視化しているが、それだけでは無機質な情報。県民に分かりやすいようウェブページを制作し、取り組みの意義を発信している」と補足した。

各社がそれぞれ取り組みを紹介した後、甲賀氏が小田急電鉄の取り組みについて「地域事業者の協力を取り付ける課題は」と問いかけた。作田氏は「事業者側が『できるなら焼却よりリサイクルしたいが、負担が大きい』という状態であることが課題。収集運搬するトラックの積載率を高め、コストを軽減していくために、複数の事業者が連携したルートを作らなければならない」と回答した。

甲賀氏

また甲賀氏は、紹介された各取り組みの収益化について質問。鈴木氏は「資源をより高値で再生工場に売り渡すことではなく、再利用した商品の価格でも(資源循環サイクルの)コストを回収していきたい。出口側のニーズを高められるよう、私たちが社会的なインフラになることが必要だ」と語った。

西村氏は、「弊社も100社以上から資源循環システムについての相談を受けているが、企業ごとに取り組みへの温度差はある。やはり最初の一歩は企業ブランディングとして企業価値を高めることにつなげることだと思うが、なんとかその先で、資源循環の取り組みが次の(ビジネスの)きっかけになればと考えている」と苦心する本音を明かした。

甲賀氏は各社の意見を踏まえ、「各社の拠点ごとに、リジェネレイティブ・ローカルを体現した取り組みで素晴らしい。CEのためには『クローズドループ』(水平リサイクル)が必要だが、(コミュニティは)オープンに広げていく視点が重要だと認識した」と締めくくった。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。