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パリ五輪・パラリンピックの「サーキュラーエコノミー戦略」、大会後の再利用も検討

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Image credit: Paris2024

7月開幕のパリ2024 オリンピック・パラリンピックは、「サーキュラーエコノミー戦略」を運営の柱に掲げる。大会組織委員会はこのほど、同戦略の実施状況を初めて公表した。戦略は3つの原則(1.大会をより少ない資源で運営する、2.エコデザインを推進することで資源をより有効に活用する、3.大会後のリソースの再利用を確実にする)に基づき、組織全体に適用される。パリ大会ではすべての施設でより責任あるモデルを採用することを打ち出しており、大会が始まる前から大会後の再利用方法について検討する。(翻訳・編集=小松はるか)

2021年に開かれた東京2020大会は、循環型の指針を実行した初めての大会だった。表彰台は使用済みプラスチック容器を再利用した素材で、メダルは使用済みの家電の金属から作られた。パリ大会はこうした取り組みをさらに前進させ、可能な限りすべての側面にサーキュラリティ(循環性)を織り込むことを目指している。

大会のマテリアルフットプリントを評価し、削減する

観客席やテント、ベッド、椅子、テーブルからテニスボール、シャトルコック(バトミントンで用いる羽根)、旗、ビブス(ゼッケン)など、世界最大の国際スポーツ大会を運営するには、莫大な量の設備と多くのリソースが必要だ。

パリ大会は、過去の大会(2012年のロンドン大会、2016年のリオ大会)で発生したカーボンフットプリントを半減すると、物議を醸した宣言を行ったのと同様に、大会に先立ちマテリアルフットプリント、すなわち大会開催に必要なすべての資源の総重量を計算することを考えた。これはオリンピック・パラリンピックの歴史で初めての試みだ。

パリ大会では、資源を削減・共有し、さらに大会前や大会中、大会後のライフサイクルを管理することを目的に、大会運営に必要となる資源を記した会場ごとの詳細なマップを作った。

サプライヤーに関しては、「責任ある調達戦略」を適用する。その柱の1つがサーキュラリティだ。入札募集にあたっては、以下の条件に合うサプライヤーを優先してきた。

・製品やサービスにエコデザインの手法を採用している
・備品レンタルや長期寿命の製品を優先する
・リサイクル素材や端材など環境負荷の低い原料を使う
・認定プロセスに尽力する
・製品の次の利用方法や寿命(再利用やリサイクル)を考えた解決策を提案する
・包装材の利用を最小限にし、再利用できる包装材またはリサイクル可能な包装材を推進する

責任ある調達戦略の適用により、使用される600万点の資源の9割は、大会運営に必要なサービスの大部分を管理するパリ大会のサービス提供会社やパートナーが配備し、引き継いでいく。残りの1割は組織委員会が直接、責任を負う。

少ないリソースで大会を運営する

オリンピック・パラリンピックの開催地に立候補をした際、パリ大会の組織委員会は、より責任ある大会を開催する構想を提示した。それは、既存のインフラの95%もしくは仮設会場をフルに活用して、新たな建設を減らし、使う資源を少なくするというものだった。

この資源削減の原則は、40の競技会場とほかの会場の内装デザインにも反映されている。必要なものを審査し、できる限り共有することで、パリ大会は必要となる家具や看板の量を80万個から60万個に減らすことができているという。

さらに、必要なものを削減することに加え、備品を購入するよりレンタルすることを優先している。テレビやパソコン、プリンターなどの電子機器の75%と共に、200万点のスポーツ用具のうち4分の3はレンタル、もしくはスポーツ連盟から提供されるものになる予定だ。最後に、オフィシャルパートナーのGLイベンツ(GL Events)、仮設建築物と設置のオフィシャルサポーターであるアリーナ(Arena)、ESグローバル(ES Global) 、ロザム(Loxam)と連携し、使用するスタンドやテント、バンガローはすべて購入ではなくレンタルする。

ケータリングに関しては、返却可能でリサイクル、リユースのできる容器を使用することで、2012年のロンドン大会と比較して、使い捨てプラスチックを50%削減することを約束している。これを達成するために、ワールドワイドパートナーのコカ・コーラは会場の構造上、可能な場所にはソーダ・ファウンテン(飲料装置)を導入してパッケージフリーの飲み物を提供し、ペットボトルの利用を大幅に削減する考えだ。

より資源効率の良いデザインを採用

パリ大会のサーキュラーエコノミー戦略の第2の柱はエコデザインの推進だ。競技会場やそうでない会場の装飾、看板の取り付け、観客やアスリート、ボランティアエリアの設置とともに、商品のエコデザインはパリ大会の入札募集の重要な評価基準になっている。

車いすバスケットボールや車いすラグビー、ゴールボール、ボッチャなどと共に、ハンドボール、バレーボール、シッティングバレーボールの競技のために、パリ大会は床材を専門に扱うフランス企業のジェルフローを選んだ。同社の供給する3万3466 平方メートルのスポーツ用フローリングは、リサイクル素材が平均35%使われており、100%リサイクルが可能だ。ジェルフローはパリ大会の開催中に使われるすべてのフローリングを大会終了後、スポーツ施設や学校で再利用できるようにすることを約束している。

競技会場や選手村、メディア・ヴィレッジの家具の備え付けは、オフィシャルサポーターのRGS イベンツ(RGS Events)が社会的連帯経済(SSE)分野の企業から一定量の家具を調達する。選手村には、リサイクルしたシャトルコックで作ったコーヒーテーブル、パラシュート生地でできたクッション、瓶のふたで作った椅子が備え付けられる。選手のベッドは、オフィシャルサポーターのエアウィーヴが100%リサイクルした段ボールからベッドフレームを製造し、大会終了後にフランスでリサイクルすることを決めている。

仮設インフラや家具、備品はすべて再利用へ

オリンピックは性質上、つかの間のイベントだ。大会のために集められるリソースが再利用され、廃棄物にならないようにするために、パリ大会では開催前に有形資産の再利用方法について考えてきた。エコデザインと同じく、大会組織委員会は製品を再利用することを考慮したサプライヤーを選定している。

例えば、オフィシャルサポーターのソデクソ・ライブ!(Sodexo Live!)は、選手村のレストランで使われる3万5000枚の皿を再利用するためロゴを入れずに製造する。同じくオフィシャルサポーターのサンゴバン(Saint-Gobain)は、選手村の部屋を住宅に転換するため、また他の場所に取り付けるために再利用できるパーティションを開発した。素材や仮設構造物(テントやスタンド、バンガロー)は再利用もしくはリサイクルされる。

大会施設の再利用方法には、施設が地域やスポーツ界にレガシーを残すことも含まれている。組織委員会は、大会期間中に使用する仮設プールを、地元コミュニティが使えるようセーヌ・サン・ドニ地域に寄贈することを決定している。