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CSRブランディング最前線

第24回:フレッシュパーソンに贈る!魅惑の「CSR」の世界

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、‘らしさ’で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

入社式、新年度スタートの季節。今回は、新入社員や新しく「CSR担当」になられた方に歓迎の意を込めて、魅惑の「CSR」の世界へいざないましょう。そして、「CSR」は気になってはいるがとっつきにくいとお考えの方や下記の「問診票」で2つ以上チェックが入った方にも、今や「ビジネスパーソンのコモンセンス」ともいえるCSRの勘所をご紹介します。

「CSR」に関する問診票

□ CSRは、「社会貢献や寄付・寄贈」のことである
□ CSRは専門性が高く難解で、カタカナ・アルファベットが飛び交うので、苦手意識が強い
□ 長らくCSRをやっているが、何かモヤモヤしている。自分が腹落ちしていないので、社内でうまく説明できない
□ 最近、CSR部門の担当になったが、何から手をつけていいかわからない
□ CSRは社内で定着した感はあるが、「コンプライアンス」や「社会貢献」にとどまっている
□ CSRが大事なのはわかっているが、経費はかかるし仕事の負荷や足かせになる
□ CSRが競争力になるとか、ブランドや企業価値に効くというが、つながりがわからない
□ ビジネスパーソンとして、「CSR」を勉強しておきたいが、専門部署向けの本やセミナーばかりで困っている
□ 中期経営計画など経営戦略にCSRを組み入れたいが、切り口がつかめない
□ CSRやCSVやESGなど、ゴチャゴチャになっている

「CSR」は、本質的・体系的に把握する

CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、通常「企業の社会的責任」と訳されます。とりわけ日本人は、この表意文字である漢字の「責任」が目に入りますと、義務や受身と直感し、事業の負荷や重しと捉えてしまいがちです。

CSRは、本質的・体系的に把握することを強くおすすめします。先進のCSRは、経営戦略・事業戦略のアドバンテージとなります。したがって、CSRの草創期のように、他社との横並びや形式的な措置だけでは、あくまで経営や事業とは「別物」となってしまいます。テクニカルな用語や個別概念が多々ありますが、本質を捉え体系を俯瞰してシンプルに考え、骨太の因果関係をつかんでください。すると、経営層をはじめ、社員一人ひとりの自主性・主体性につながっていきます。

CSRの「R」のResponsibilityにこそ、その本質があります。この単語はresponse(反応する、対応する)と、ability(力、能力)から成ります。つまり、「対応する能力」です。いつの時代にも、磐石な経営基盤を確保しつつ、時代の変化に伴うあらゆる変化に「対応」していくことが、CSRの基本です。CSRの核心は、「社会対応力」です。

対応するのは、現代社会からの「要請」や「期待」です。

時代が変わって、企業は社会からの次の2つの視点に「対応」していくことです。

・要請…やってもらっては困る、やってもらわないと困る
・期待…やってもらえると、うれしい

上段の「要請」に対応することが、いわゆる「基本的CSR」。これを怠りますと、「今どき、そんなことをやっているのか」「今どき、そんなこともやっていないのか」という烙印を押され、規模の大小、業態に関わらず、企業存亡の危機を招きます。したがって、時代の「要請」に対応することは、「リスク回避」のための基盤となるCSRです。

下段の「期待」に応えることを「価値共創型CSR」といい、「事業による社会課題解決」の趣旨で普及してきています。ここに、CSV (Creating Shared Value:共通価値の創造)と称されるコンセプトがあります。経済的価値を創出しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創出するというアプローチです。とかくCSRは、事業の負荷やコストといったトレード・オフで認識されがちですが、「先進のCSR」で高次に捉えれば、『トレード・オン』が成立します。こちらは、「機会創出」につながる戦略的なCSRと位置づけられます。

ビジネスは、企業本位で独善的に行えるはずがなく、さまざまな関係者の協力と自発的な交換に基づいて成り立っています。関わる人々(ステークホルダー)は、互いのメリットのために自発的に取引をするのであって、企業から強制されて物を買ったり売ったり、役務を提供したりはしません。お客様はどこから買うか、社員はどこで働くか、サプライヤーは自社の製品やサービスをどの企業に提供するか、そして投資家は自らの資金をどの企業に投資するのかを、それぞれ多くの選択肢から選べるというわけです。

企業は、こうした欠くべからざる人々(ステークホルダー)から信頼してもらって、選んでもらってこそ、持続的な成長が図れます。信頼されたければ、時代にふさわしくステークホルダーからの「要請や期待」に応えることです。愛着をもって選んでもらいたければ、「らしさ(得意技と個性)」を発揮することです。結果として、盤石な経営基盤のもと、新しい価値創造・新しい市場開発が実現できます。そして、「見えざる資産(無形資産)」が高まり、ブランド力や企業価値向上につながります。

ビジネスに、「CSR」と「らしさ」を融合させるフレームワークこそが、「CSRブランディング」です。

※第3回コラム 参照 https://www.sustainablebrands.jp/article/sbjeye/detail/1188025_1535.html

投資家目線の企業評価の新しいモノサシ

こうした文脈から、昨今の投資家目線として、中長期のリターンを求めるにあたって、投資先企業の財務以外、すなわち「非財務」を重視する動きが加速しています。その評価要素が「ESG(Environment、Social、Governance)」です。投資先企業を吟味するにあたり、企業が持続的成長を遂げるには、経営に対して牽制と監督を利かせていく仕組みを担保した上で(Governance)、社会(Social)や地球(Environment)が健全であり続けることが前提となる、という考え方です。企業活動は、「社会」との良き関係があればこそスムーズに事が運び、「自然」あってのものだねということです。目先の利益は大事、ただ目先の利益を将来にわたって続けたければ、「非財務」が不可欠です。ESG投資は、新しい企業評価のモノサシとして、脚光を浴びています。

CSRは、崇高で典雅なる仕事

新成人も、新入社員も、社会人になるに際して望んでいるのは、「社会の役に立ちたい」「仕事を通じて、自分も高めたい」ということが主流にあるようです。日々の仕事で、CSRを心掛けることが、社会のため、会社のため、そして自分のためにもなります。CSR部門はもちろん、ビジネスパーソンとして、CSRにひたむきに取り組むことは、時代が求める「崇高で典雅なる仕事」といえましょう。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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