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イギリス

ユニリーバなど英150社・団体、首相に書簡「SDGsを復興計画の根幹に」

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ユニリーバなど英国の150以上の企業・団体のリーダーらは9日、ボリス・ジョンソン首相に宛てた書簡で、復興計画の根幹にSDGs(持続可能な開発目標)を据え、危機を機会として捉え、より良い未来を構築するよう求めた。同国ではすでに1日、207の企業・投資家らが首相に対し、気候変動に取り組み、持続可能で競争力のあるレジリエントな経済の復興を求める書簡を出している。EUが環境・社会・経済の持続可能性に重点をおいた復興計画「グリーン・リカバリー」に乗り出す中、1月に離脱した英国でも同様の動きが起きている。

150以上の企業や団体などの代表が署名した書簡は、SDGsを推進する「ukssd」(持続可能な開発を推進する英国のステークホルダー)と「国連グローバル・コンパクト・ネットワークUK」の2団体がまとめた。ユニリーバやボディショップ、HSBCグループ、インターコンチネンタルホテルズグループ、EY、スコットランド王立銀行、ネスレUK&Ireland、シェルUK、キヤノンUK&Ireland、NECヨーロッパのほかに、FSC(森林管理協議会)などの団体や大学、市長、国会議員、伯爵などが名を連ねる。

書簡の文面で、企業などは「われわれは一丸となって、新型コロナウイルス感染症の拡大による危機から立ち上がり、すべての人が健全な地球でよい暮らしをおくれる未来を築いていかなければならない。SDGsはその実現の助けになる。SDGsが示す未来は、企業コミュニティを含め英国社会全体で支持されている」と説明する。

ジョンソン首相は5月末、国連の会合で「緊急事態を乗り越えたら、将来世代のためにも、より良い状態に社会を戻し、より公正で環境に優しくレジリエントな経済を構築する」と発表した。150以上の企業や団体のリーダーらはそれを歓迎するとし、「復興のために新たな枠組みや協定を作り直す必要はない。SDGsが英国をはじめその他の国においても社会の公正とグリーン・リカバリーの基盤になる」と助言する。

書簡には3つの提案が書かれている。

1. より強く、よりレジリエントな経済を築くために、SDGsを活用してすべてのセクターを団結させる

新型コロナウイルスの発生により、私たちの生活の多くの側面は二度と同じようには戻れないことが明白だ。この危機から立ち上がれない産業もあるかもしれない。この困難な状況を機会として捉え、SDGsを中心に置いた、より強く、よりレジリエントな経済を築くために、国内外のパートナーと協力していく必要がある。

2. SDGs を活用して、社会で最も脆弱な人たちを優先し、地域・社会的な不平等をなくす

新型コロナウイルスは、不平等の根深さを露呈し、さらに多くの家族を所得の困窮やそれによって生じるさまざまな問題に直面するリスクを生み出している。私たちは英国全土の繁栄に努めるという政府のコミットメントを歓迎すると同時に、より広い範囲で社会的不平等を解決するためにも同様に取り組むことを求める。SDGsは、国の成功の基準として、繁栄やGDPと並び、健康やウェルビーイングを優先する枠組みを提供している。パンデミックからの復興において、誰ひとり取り残さず、現在と将来の世代の健康とウェルビーイングを第一に考えることを確実にしていく必要がある。

3. SDGs を活用し、健全な地球を育むための一貫した政策を作り、ネットゼロ社会への移行を促進する

新型コロナウイルスは、私たちの社会が生物多様性や生息地の喪失、気候変動によって直面するリスクを浮き彫りにした。私たちは、社会・経済的ニーズと地球のニーズとのバランスをとり、自然を保護・管理し、温室効果ガスの排出量を減らしていかなければならない。それぞれの目標は同じ方向である必要がある。SDGsは、英国政府の掲げる2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという目標と首尾一貫した政策設計を通して、共益をどう生み出すのかを示してくれる。

書簡は「復興のスケールが大きいため、政府はさまざまな課題に直面するだろう。しかし、この危機は企業や政府、市民社会が持続的でポジティブな変化を生み出すために協力することが可能で、今後もそうしていけるということを私たちに突きつけている」と締めくくっている。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。