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ドイツ

独の2政党が肉の税率アップを提案、畜産に伴う温室効果ガスを減らす

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欧州ユニリーバは植物性肉専門ブランド「ベジタリアンブッチャー」を展開

ドイツの社会民主党と緑の党の議員らが8月、肉の税率を7%から19%へと大幅にアップすることを提案した。これまでドイツでは肉製品に軽減税率を適用していたが、その廃止を求めたものだ。この背景には畜産に伴う温室効果ガスを減らして気候変動に対応するという狙いとともに、肉や乳製品を食べない「ヴィーガン」の人口が国内で大きな割合を占めてきたという事情もある。米マクドナルドも北欧に次いでドイツで4月からヴィーガンバーガーの販売を展開するなど、企業のヴィーガン、ベジタリアン対応も拡大している。(環境ライター 箕輪弥生)

肉の消費を抑えて気候変動対策を

動物性食品は植物性食品と比べて多くの土地と水を必要とし、排出される温室効果ガスの量も非常に多い。たとえば最も環境負荷の高い牛肉の場合、温室効果ガスの排出量は米や小麦に比べて10倍以上だ。

これは牛の餌となる野草や牧草を育てるのに水、土地、肥料を多量に必要とする上に、牛は食べ物を消化する際に温室効果ガスであるメタンを排出するためと言われる。

IPCCの報告書も、気温上昇を1.5度以内に抑えるために、牛肉のような温室効果ガスを大量に発生させる食べ物から、より健康で環境にやさしい食事への世界規模の転換が必要だと指摘している。

このような理由から肉の消費量を減らすために、ドイツでは社会民主党と緑の党の2つの政党が8月、肉製品への軽減税率を廃止すべきだと提案した。

増税で得られた税収は動物愛護(アニマルウエルフェア)に使い、家畜の飼育方法の改善を支援するとしている。しかし、より安い肉を求めて、かえってアニマルウエルフェアに気を使わない畜産業者や小売店に消費者が流れるのではないかという反対意見もある。

欧州で急拡大するベジタリアン&ヴィーガン市場に企業が対応急ぐ

そしてもうひとつ見逃せないのが、ドイツ国内で拡大するヴィーガンやベジタリアンの増加だ。ドイツでは、全人口の約10%がベジタリアンもしくはヴィーガンだ。肉の消費量が多い反面、菜食人口の割合は世界でもトップレベルと言われる。健康と環境の面から肉食を減らしたいという層の意見も無視できなくなってきている。

ドイツに留まらず欧州、米国で菜食主義者は増え続けている。BBCニュースは、イギリス国内におけるヴィーガン人口は10年間で3.6倍に増加したと報じている。

そのニーズに応えるために企業も対応を急ぐ。米マクドナルドは4月末からドイツでヴィーガンバーガーを販売し始めた。これはネスレが開発したIncredible Burger(インクレディブルバーガー)とコラボした商品で肉の代わりに大豆や小麦を使っている。

ユニリーバ(欧州)も昨年、植物性肉専門ブランド「ベジタリアンブッチャー(Vegetarian Butcher)」を立ち上げるなど代替肉の市場は急拡大している。

気候変動対策と菜食主義者の拡大によって、肉の消費を抑制するためのさまざまな動きが今後も加速しそうだ。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/