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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

広報任せにしないブランディングが企業イメージをつくる――JSBIが示す社会への伝わり方

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企業がSDGsを積極的に推進しても、それがどのように消費者に伝わり、マーケティングにどう生きているのかを見える化することは難しく、大きな課題のひとつでもある。そこでサステナブル・ブランド ジャパンが行った調査がJSBI(Japan Sustainable Brands Index)だ。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜のセッション「サステナブル・ブランドへの海図―JSBI(Japan Sustainable Brand Index)の調査報告とその分析」では、JSBIで高スコアを獲得したスターバックス コーヒー ジャパンのほか、企業の発信に一線で携わる登壇者がJSBIの意義について話し合った。サステナブル・ブランドを形成するのはコミュニケーションとアクションを両輪でまわす、「広報任せにしない」活動だ。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

パネリスト:
山口 久子 電通 第19ビジネスプロデュース局 コンサルタント
高島 太士 一般社団法人 NEW HERO 代表理事
普川 玲 スターバックス コーヒー ジャパン サプライチェーン本部
資材・店舗開発調達部 エシカルソーシング・サステナビリティチーム
チームマネージャー

ファシリテーター:
江戸 克栄 県立広島大学 大学院経営管理研究科
ビジネス・リーダーシップ専攻長 教授

企業のコミュニケーションとアクションを指標化

JSBIは9000人の消費者に対してアンケートを行い、企業への印象を「SDGs貢献イメージ得点」として、実際のアクションへの評価を「SDGs評価得点」として指標化。それらを合わせ、最終的なスコアを算出する。JSBIの構築に中心となって関わった江戸氏は、既存の指標と大きく違う点を「JSBIが専門家の評価ではなく消費者、生活者が評価していること」「そして回答者に対しSDGsを知っているか知らないかをアンケートし、知っている人による評価に重点を置いていること」と説明した。

ブランド戦略やコミュニケーション領域でコンサルタントを行っている山口氏は、企業のパーパスブランディングの重要性に着目する一人。「JSBIはパーパスブランディングに効果的。消費者の反応、評価、期待が反映されたインデックスだ」と話す。

コロナ禍で消費者の価値観が変化していると言われる。山口氏が示した調査では、「いいモノやサービスだけでなく企業の姿勢や志に共感できるのかが重要だ」と答えた消費者は88.8%。「メッセージだけでなく企業として行動していることをより重視するようになった」という消費者は66.4%。「企業が社会に対して何ができるかを発信することが大事だ」と答えた消費者は88.2%に上る。山口氏はパーパスブランディングを「ブランドがパーパスを掲げアクションを起こし、さらにコミュニケーションすることでステークホルダーの共感を呼び起こすことができる」ものと説明した。

参考記事=JSBIの詳細

丁寧な説明で消費者、ステークホルダーに共感広げる

第一回のJSBIにおいて「外食・各種サービス」部門で1位、全業種の中でも25位の高得点を獲得したのがスターバックス コーヒー ジャパンだ。普川氏は同社の取り組みや考え方を紹介した。

スターバックスは1月、グローバルで新たなサステナビリティ方針を発表し「リソースポジティブカンパニー」を目指すことを掲げた。国内でもプラ削減の取り組みとして一部メニューの提供を紙カップに取り換えるなど変革を進めている。また数年来、コーヒー豆かすのリサイクルループを実践する。使い終わったコーヒー豆を店舗から回収し、乳牛の餌や野菜のたい肥に活用。そこで収穫されるミルクや野菜は店舗メニューで提供する。

持続可能な社会に向けてさまざまな取り組みを実行している同社だが、実はCMやインターネット広告などは展開せず、SDGsを全面に押し出したマーケティングも行っていない。にもかかわらず、消費者に対して行ったJSBIではSDGsに取り組んでいる企業として高得点を獲得している。その秘密は何か。

普川氏は「『スターバックス体験』をお客様に届けられるのは、店舗だ。設計や内装尾、空間、商品やサービス、デジタルツールなどを通して発信している」とコミュニケーションの一端を明かす。さらに重要なことは消費者と直接接する従業員(以下、同社内での呼称に準じ「パートナー」と表記)やステークホルダーだ。

スターバックスは全世界の83カ国に約3万2000店舗を展開している。国内では4432人の正社員と35562人のアルバイト、合計39994人(2020年12月末現在)のパートナーが在籍し、1628店舗(同)を営業。1週間の来客数は500万人にもなる。普川氏は「会社をつくるのはパートナー」と話す。プロジェクトやキャンペーン、取り組みを行う時には、来店客に何を聞かれても答えることができるよう、まずパートナーに目的や意義を納得するまで説明するという。前述のリサイクルループの取り組みを開始する際には、社内での反対も多かったと振り返る。物流の関係者にも問題点を指摘されたが、問題をクリアにし、他企業との協業の中で実行の方法のアドバイスを受けたり、模索し、説得を繰り返しながら取り組みを実現した。普川氏は「社会に前向きな変化をもたらしたいという思いがつながって、それが循環していくと気づかされた」という。

普川氏の発表を受けて高島氏は「JSBIで浮かび上がるのは『取り組んでいるのに、消費者に伝わっていない企業』だ。これをどう改善するのか。(スターバックス コーヒー ジャパンのように)丁寧に説明し共感を広げ、まずは周囲とチームになることが大事では」と話した。高島氏はソーシャルグッドに特化したコミュニケーションの企画に長年携わり、企業メッセージの発信にクリエイターとして関わる。P&Gジャパンのパンパース「MOM’S 1ST BIRTHDAY ママも1歳、おめでとう。」など、社会課題に向き合った映像の演出を手掛けてきた。

広報任せにしないブランディングがサステナブル・ブランドをつくる

山口氏は「10年以上前には、社内へのブランディングと社外へのブランディングをまったく変えることがトレンドだった。昨今ではステークホルダーを隔てず社員も生活者として、企業が別人格でコミュニケーションせずに同一のパーパスに基づいてコミュニケーションすることが重要になっている」とコミュニケーションにあり方の変化を解説した。

普川氏は社内で、コミュニケーションよりも実際のプロジェクトの構築、アクションを担当する立場にある。高島氏は「にもかかわらず、(普川氏は)広報のようにコミュニケーションすることもできる。(社内全体でも)広報任せにせずに、ブランドに対する愛をもって表情とともにパートナーが(消費者に)伝えることを重要視しているのでは」と語り、「広報に頼らない、広報だけじゃない(組織横断的な/ステークホルダーを巻き込んだ)サステナビリティチーム」がサステナブル・ブランドをつくるために重要だと説いた。山口氏はこれに「広報とアクションを別に捉えること自体がパーパスの実現につながらないと個人的にも感じる。コミュニケーションとアクションが両輪でまわることが大事」と同調し、それらを指標として表すJSBIへの期待を話した。

江戸氏はセッションの最後に「3つのポイント」を振り返った。

「一つは、サステナブル・ブランドと通常の商品ブランドサービスブランドのつくり方が違うのではないか。組織横断的なブランドづくりが大事だ。そして、従業員や周囲の企業も含めて、いかに巻き込むか。さらに、コミュニケーションをしながらアクションをするという考え方が肝だ」(江戸氏)

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。