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サステナブル・マーケティングの構図-JSBI指標を活用したCustomer Journeyの構築-(2)

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SB-J コラムニスト・青木 茂樹

サステナビリティを実体化する指標

さて、上記が私の考える「サステナブル・マーケティング(Sustainable Marketing)の構図」だ。企業と市場(消費者)の関係において、戦後のモノ不足の時代であれば、モノを作れば売れるという①プロダクトアウト(Product Out)で十分であった。しかし、高度経済成長以降、競争が激化していく中で、市場の声を聞いて製品開発を行う②マーケットイン(Market In)が始まった。その方向性が正しいかどうかは③売上げ(Sales)が裏付けることになる。

企業が社会貢献や社会的責任を果たすべきか否かには学会でも色々な議論があり、市場競争が最も効率的であるから、政府などの人為的な介入を避けるべきだとするフリードマンやハイエク。反対にストックホルダー(株主)だけではなく、取引先や従業員、地域社会までのステイクホルダーを重視したフリーマンやキャロルがいる。後者の立場では、④社会的責任(CSR)が重視され、2003年が日本のCSR元年と言われた。

しかし、それだけでは掛け声で終わってしまう。今日、SDGsを達成するためにも、社会課題を積極的に企業課題として取り込んでいくMarket Inならぬ⑤ソーシャル・イン(Social In)やアウトサイド・イン(Outside In)が求められている。しかしその指標がなければ何をどうやることが経営効率的であるのかがわからない。今日、様々なサステナビリティの認証評価やランキングはあるが、⑥JSBIではサステナビリティに関心のある消費者からの評価をベースとした。JSBIをもとに、感覚ではなく、ファクトとしての消費者からの企業評価を知り、SDGsを目指し、ESGを戦略的にマネジメントしていく。

なぜならばSDGsの認知度の高まりに伴い、今後、消費者からの企業のサステナビリティの評価がますます高まることが予想される。そうなればサステナビリティへ向けたイノベーションやマーケティングを実践している企業こそが消費者から選択されることとなるだろう。

JSBIからカスタマーエンゲージメントへ

社会課題に取り込むというのは、ややもすると義務的・偽善的になるようにも思われる。しかし、陰徳を積むというよりは、堂々と声を挙げ、仲間を巻き込んでサステナビリティを進めていこうというのが昨今のやり方ではなかろうか。そこでは生活者が求める価値観に直に触れ、創造していこうという企業姿勢が求められる。

SBでは2019-2020年の3年にわたって、世界中で「Good Life(グッド・ライフ)」を議論してきた。物的所有を強く欲するGoodlife1.0に生きる人もいれば、人間関係や精神性を重視し、サステナブルな生活を志向するGoodlife2.0の人もいる。後者はサステナビリティに強い関心を持ち、サステナビリティに取り組む企業を求めている。だから、サステナビリティを実現できる⑧顧客体験(Customer Experience)やカスタマージャーニー(Customer Journey)を戦略的に設計することが企業には重要事項となる。そのための指標として構築したのが⑨カスタマーエンゲージメント(Customer Engagement)因子だ。これは顧客と企業ブランドとの感情的な繋がりを言い、高いエンゲージメントを持った消費者は、より多くの商品やサービスを購入し、そのプロモーションに貢献し、高いロイヤリティを示す。

今回の調査では、JSBI上位50社のSDGs貢献イメージ得点に影響を与えている「社会性(25社)」「エコ(20社)」「参加(8社)」「評判(8社)」「労働環境(7社)」「ブランド(4社)」「パーパス(2社)」の7因子を取り上げた。例えば、JSBIトップのトヨタは「社会性」が高く、「参加」や「ブランド」というエンゲージメント因子を得ている。「労働環境」が良いスターバックスは「評判」のエンゲージメント因子も高い。「社会性」や「エコ」がSDGs貢献イメージ得点に繋がっている企業が多くとも、「ブランド」や「パーパス」がこれには繋がっていないのが現状である。

特にサステナブルな消費者は、積極的な行動をする消費者像へと変化してきていると言われる。これを獲得するために、サステナビリティへ向けた⑧顧客体験やカスタマージャーニーの設計が鍵となってくるだろう。

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青木 茂樹
青木 茂樹 (あおき・しげき)

サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー
駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、
University of Southern California Marshall School 客員研究員を歴任。
多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。
2022年4月より、デンマークに渡り現在 Aalborg University Business School 客員研究員を務める。

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