スターバックス、植物由来のメニュー拡大――野心的な新サステナビリティ目標
IMAGE: Connor Surdi, STARBUCKS
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米スターバックスは21日、サステナビリティに関する新たな方針を発表した。2030年までに二酸化炭素の排出量や埋め立てごみの量を50%削減するほか、植物由来のメニューを増やし、環境再生型の農業への投資を行うなど自然資源の活用を見直す方針を掲げる。ケビン・ジョンソンCEOは「今ほど環境の持続可能性のために立ち上がるリーダーシップが求められている時代はない」と表明し、来年の創業50周年を前に、同社のビジネスにとって転換点となる決定を下したとしている。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松 遥香)
今月24日に閉幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「環境」は主要テーマとなった。同会議に先立ち発表された「グローバル・リスク報告書2020」でも、世界が抱えるリスクトップ10のうち上位5位を異常気象や生物多様性の喪失など環境リスクが占めた。スターバックスのみならず、2020年は、経営の主軸に地球環境の持続可能性を置く考えが世界のスタンダードになるだろう。
スターバックスは今後、数十年をかけて、地球から奪う量よりも還元する量を増やす「リソース・ポジティブ」を実現していく方針だ。ジョンソンCEOはスターバックスのパートナー、顧客、すべてのステークホルダーに向けた書簡でこう記す。
「われわれが暮らす地球のために、スターバックスはこれまでのスターバックスを超える挑戦をし、今までよりも広い視野で考え、さまざまなステークホルダーとさらなる連携をしていかなければならない。目標を達成する過程で、多くの課題に直面するだろうし、大きな変革が求められると理解している」
ケビン・ジョンソンCEO IMAGE: STARBUCKS
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地球環境の持続可能性についても、「政府や企業、個人などすべての人が大きな行動の変化を起こさなければ、将来、気候変動によって生じる影響に適合するのはより難しくなり、大きな代償を支払うことになる」と警鐘を鳴らす。今、行動を変えなければ、自社のビジネス、コーヒー農家をはじめとするすべてのビジネスパートナー、消費者、出店する地域コミュニティにとっても大損害をもたらすことになると危機感を表明した。
スターバックスは今回初めて、WWFなどの協力の下で、全世界の事業やサプライチェーン上で発生した二酸化炭素の排出量や廃棄物の量、水の使用量を測定。その結果を受けて、「リソース・ポジティブ」を実現するための5つの環境戦略を掲げた。
1. 植物由来の食品の選択肢を増やし、より環境に配慮したメニューに移行していく。
2. 使い捨てプラスチックから再利用できるプラスチックに変える。
3.
サプライチェーンにおいて、革新的で再生型の農業や森林再生、森林保全、水の補充に投資していく。
4.
店舗と事業に関連するコミュニティの両方において、食品廃棄物をなくし、再利用やリサイクルを進めるために、より良い廃棄物管理方法の構築に投資していく。
5.
より環境に配慮した店舗、運営、製造、配達を開発するために改革を行う。
同社は他社と足並みをそろえ、気候科学に基づいた温室効果ガスの削減目標を掲げるSBTi(Science Based Targetsイニシアティブ)に参画する。今後は、目標達成に向けた進捗を報告していく考えだ。その第一段階として、2030年までに達成を目指す以下の暫定的な目標を掲げた。
1. 同社直下の事業とサプライチェーンにおける二酸化炭素の排出量を50%削減する。
2. 事業やコーヒー生産に使われる水の50%を保全または水リスクの高い地域や流域に補充する。
3. 店舗や製造過程で発生する埋め立てごみの量を50%削減し、サーキュラーエコノミー(循環経済)に大きく舵を切る。さらに、サーキュラーエコノミーを推進する英エレン・マッカーサー財団の「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」に参画し、包装材の循環利用を進めるための野心的な目標を設定する。
同社は創業50周年を迎える2021年までに、マーケットリサーチや再利用可能なボトルの利用促進などさまざまな調査や試験的な取り組みを行い、2030年目標を公式発表する方針。
ジョンソンCEOは、こうした環境の持続可能性への取り組みは、企業責任として行う必要があるだけでなく「ブランド・レレバンス(顧客とブランドのつながり、共感性)」にとっても重要であり、最終的には業績にも関係することだと説明。株主らに対して、環境の持続可能性への取り組みと業績の拡大を両立すると語り、新たな経営方針への理解を呼びかけている。