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「気候危機」への関心高まった2019年――若者、学会、自治体など声上げる

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2月のデモに参加したグレタ・トゥンベリさん(左から2人目)©︎Michiko Kurita

気候の変化に関心が高まった1年間だった。「グレタ効果」の影響は国内にも及び、若い世代が積極的に声を上げた。深刻化する問題への危機感が国内でも高まり、「気候変動」から「気候危機」へと認識が変化。環境経営学会の呼びかけに呼応して、気候非常事態を宣言する自治体も現れ始めた。一方で9月に入閣した小泉進次郎環境相の発言など、国としての対応には不安の声も聞かれる。気候危機をキーワードに2019年の国内の動きを振り返る。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

スウェーデンの高校生活動家、グレタ・トゥーンベリさん。2019年、日本国内で「気候危機」の機運が高まった背景に彼女の存在は無視できないだろう。

2018年COP24で注目を集めたグレタさんの活動「Fridays For Future(FFF、未来のための金曜日)」は世界中の若者の共感を集め、一気に拡大した。2019年2月には世界の科学者224人が支持する声明を発表。3月15日のストライキでは世界の100を超える国と地域で、大きなデモが行われた。

記事:「未来のための金曜日」の小中高生デモ、世界に拡大

このとき日本では100人以上がデモ行進を行い、以降、国内でも活動は急速に拡大した。9月20日の「気候マーチ」の参加人数は2800人以上になった。セールスフォース・ドットコムやパタゴニア日本支社、ラッシュジャパンなど、賛同する企業では同時間帯に店舗営業を取りやめて参加を促すといった対応も見られた。

記事:「いますぐ気候正義を!」学生主導で都内2800人が気候マーチに参加、23都道府県でも開催

環境課題の論客・アル・ゴア氏のプロジェクト国内で開催

日本でプレゼンを行うアル・ゴア元米国副大統領

若い世代は突然声をあげ始めたわけではない。気候変動はもちろん、かねてより重要な課題だ。世界中で気候変動を訴え続けている論客、米国のアル・ゴア元副大統領は自身が主催する「クライメート・リアリティ・プロジェクト」のリーダー養成プログラムを、43回目にして初めて日本で開催した。「気候危機を引き起こす温室効果ガス排出量の削減について、日本はもっと多くのことに取り組むことができる」と警鐘を鳴らした。

記事:アル・ゴア元米副大統領が来日、気候変動について2時間半の熱弁

記事:世界の潮流に遅れる日本「再エネ転換急ぐべき」:気候変動プロジェクトで警鐘

学会が呼びかけ、自治体が危機感を宣言

国内で若い世代の活動が活性化した同時期、学会や学閥も行動を起こした。環境経営学会は8月、「気候非常事態宣言(CED)」を発して連携することを広く呼び掛ける声明を発表。CEDはオーストラリアに始まり、欧州やカナダを中心に拡大しているが、日本の自治体や団体が単独で宣言を発する例はこの時点ではゼロだった。

記事:環境経営学会が気候非常事態宣言、「危機的状況」に連携呼びかけ

いち早く反応したのがSDGs未来都市でもある長崎県壱岐市だ。同市は9月25日、国内の自治体で初めて宣言を発表。2019年8月の「50年に一度」と言われる集中豪雨での被害など「気候危機を実感している」とした。続いて10月は神奈川県鎌倉市が宣言を議決し、SDGs未来都市を中心に波及の予兆を見せる。

2019年末時点でCEDを発した自治体、大学は以下の通り。

宣言/議決/採択日 主体 概要
9月25日 長崎県壱岐市 国内自治体初の宣言
10月4日 神奈川県鎌倉市 「実態を全力で市民に周知する」
11月6日 千葉商科大学 「気候変動は人間活動の影響大きい」
12月4日 長野県北安曇郡白馬村 高校生の嘆願がきっかけ
12月6日 長野県 副題「2050ゼロカーボンへの決意」
12月12日 福岡県三潴郡大木町 2030年に公共施設の電源100%再エネ化
12月20日 鳥取県北栄町 バイオマス活用しゼロカーボン目指す
12月20日 大阪府堺市 「SDGsに則り宣言、行動」
環境経営学会特別顧問/東京大学名誉教授 山本良一氏

これらの自治体・大学はいずれも将来的に「CO2排出ゼロ」をコミットしている。東京都は12月27日、CEDより一歩踏み込み、より具体的な戦略を策定。行動することを宣言した。

記事:東京都が「ゼロエミッション東京戦略」を策定、気候危機の認識と行動を宣言

自治体に危機感の認識の表明、行動を働きかけるのは、東京大学の山本良一名誉教授が特別顧問を務める環境経営学会(会長=後藤敏彦氏)だ。キーワードになるのは「エマージェンシー(非常事態)」と「モビライゼーション(社会動員)」だという。

記事:「気候非常事態宣言」が政府を動かす――環境経営学会が意義を強調

拡大する認識「気候危機は身近で喫緊の課題」

9月の「未来のための金曜日」デモの国内の参加者は約2800人、世界では400万人の規模だ。CEDを発した自治体・団体は国内で8(東京都を含めると9)だが、世界では2019年12月28日現在、25カ国で1288にのぼる。9月に入閣した小泉進次郎環境省の発言や行動は日本の国としての認識の遅れを如実に表していると言われる。石炭火力発電への投資も依然続けている。国内で気候危機の認識が浸透したとはまだ言えない状況だろう。

しかし2019年、確実に潮目は変わった。SDGs未来都市を中心に、2020年以降に宣言や行動を起こす自治体が増加すると見られ、若い世代は引き続き声を挙げ続ける。台風など一つひとつの災害が気候危機の影響によるものだと説明されるように、それはすでに身近で喫緊の課題だという認識が広まりつつある。以下に山本良一名誉教授が8月に発表した論文「急速に拡大する世界の気候非常事態宣言についての考察」の冒頭部分を抜粋する。

満員の映画館の中で誰かが「火事だ!」と叫んだらどうすべきだろうか。辺りを見回して本当に火事なのかどうか、先ず自分で事の真偽を確認するのではないか。どこにも火や煙が見えず臭いもしないようなら、隣席の人にこの警報の真偽について尋ねるかも知れない。その内「火事だ、逃げろ!」と何人もが叫び出したら躊躇なく席を立って争って脱出口に向かうはずである。あるいは消火のために火元に向かって突進するかも知れない。(中略)

地球温暖化問題にこれを当てはめてみるとどうなるだろうか。気候非常事態宣言(Climate Emergency Declaration = CED)は「火事だ!」という警報に相当する。地球には脱出口は無く、人間活動起源の温室効果ガスによる地球温暖化はたとえ排出量をゼロにしても千年は継続することを考えると、直ちに全員で排出量を削減し(消火)、既に現れ始めている極端気象に対応しなければならない。(後略)

(2019年8月2日 「急速に拡大する世界の気候非常事態宣言についての考察」東京大学名誉教授 山本良一)

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。