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「Z世代は主役。社会の当事者として提案を」――SB Student Ambassador 岡山大会

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

日本の高校生が「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」に参加し、議論や発表、交流に臨む「第2回SB Student Ambassadorプログラム」。同プログラムの選考に先駆けて11月6日、高校生がSDGsの基礎知識や地域企業の実際の取り組みを学ぶ「第2回 SB Student Ambassador ブロック大会 地域ブロック 中四国エリア 岡山大会 」が行われた。会場は岡山市北区の岡山大学津島キャンパス創立五十周年記念館で、10校から51人の高校生が参加した。高校生たちはまず、海洋プラスチックごみ問題に取り組む同じZ世代のNPO法人代表による基調講演を聴講。さらに、実際に地方創生の観点からサステナブルな社会の実現を目指す地域企業の担当者らの話を聞き、実際に自分たちが主体となって何ができるのか、ワークショップを通じてアイデアを出し合った。(横田伸治)

イベント冒頭では、サステナブル・ブランド ジャパンの鈴木紳介カントリーディレクターが登壇した。各国のリーダーたち1万3000人以上によるグローバルコミュニティであるサステナブル・ブランドの概要を説明し、昨年に続いての開催となるStudent Ambassadorの取り組みも紹介。「高校生が企業や社会のサステナビリティへの知見を深める場であり、同時に次世代の価値観を企業や社会に発信する場である」と強調した。

続いて、会場となった岡山大の高橋香代理事が「岡山から世界へ」という同大のビジョンを披露。「世界共通の課題を解決するには、自分事としてとらえることが大切。皆さんが自分自身のSDGsに取り組んでもらえたらうれしい」と高校生にエールを送った。

Z世代は物事を自ら作り出していく感覚に価値を感じる

「Z世代が主役になる日、というか、そろそろ主役になっちゃっていい」。基調講演に登壇したのは、海洋プラスチックごみ問題に取り組むNPO法人UMINARIの伊達敬信・代表理事兼CEO。「2021年、3つの問い」として、私たちは何者なのか(Who we are?)、私たちが生きる時代はどんな時代か(Where we are?)、私たちにできることは何か(What do we do?)を提示した。

まず「Who we are?」について、伊達氏は自身や高校生たちが該当するZ世代の特徴を3つ挙げた。デジタルネイティブであること、自分らしさ・多様性・ストーリーを重視すること、そして、X世代がモノ消費、ミレニアル世代がコト消費と、所有や体験に価値を見出していたのに対し、Z世代は物事に主体的に参加し、自ら作り出していく感覚に価値を感じる“トキ消費”の世代だという。

「Where we are?」はどうか。伊達氏はSDGs前後の大まかなサステナビリティの流れとして、まず2000年以前、1992年の地球サミットや1997年のCOP3などを契機に、環境問題への意識が高まった段階があると説明。2000年以降のMDGs(ミレニアム開発目標)については、国連・政府が主体となるもので、主に発展途上国が対象である点を強調するとともに、責任投資原則(2006年)とリーマンショック(2008年)に触れ「短期的利益だけでなく、社会的責任をもって投資をしないといけないし、そうしないことはリスクになるということが、経済の崩壊によって実感させられた時代」と総括した。

その後に策定されたSDGsについては「日本ではやっと盛り上がってきたけど、もう6年経っている。ケンブリッジ大のレポートによれば、世界でも、日本国内でも、進捗状況は項目によってまだばらつきがあるのが実情だ」と懸念を示した。

そして「What do we do?」。前述の経緯を踏まえ、今の時代に生きるZ世代が何をすべきなのか。伊達氏は「Z世代は将来の消費者という、いちターゲットではない。今の社会に対して、当事者として具体的な提案ができる存在なんだ」と、Z世代が起点となり、今から未来をつくっていく意義を高校生たちに伝えた。そのためのアドバイスが、「小さく始める」こと。自身も地元の海のごみ拾いから活動をスタートしたことを紹介し、まずは個人としてできることから着手するよう、後輩たちの背中を押した。

午後は、4つのテーマ別での講演が行われた。高校生たちは地元でサステナビリティの実現に取り組む企業担当者の講演を聞いた上で、5人程度のグループを作り、約90分間、与えられたテーマに対してソリューションやアイデアを立案・発表するワークショップに臨んだ。

地方銀行ならではのSDGs戦略「誰かにとって良くなるではなく、みんなが良くなるように」

中国銀行の武田憲和・地方創生SDGs推進部次長は「循環型社会の実現に向けた地域の取り組み支援」と題し、同社の活動を紹介。ビジョンとして「豊かな未来を共創する」、ミッションとして「地域の課題解決や価値の創出により、地域社会の発展に貢献する」ことを掲げており、▽地域経済・社会▽高齢化▽金融サービス▽ダイバーシティ▽環境保全――の5つを重点課題に、「SDGsに通ずる考え方が元来根付いている」という地方主要銀行ならではの性質を説明した。

具体的な取り組みとしては、県中南部に位置する赤磐市の名産品であるブドウに着目し、販売基準を満たさず廃棄される果実から除菌シートを作るプロジェクトを挙げ、同社が地域農家の課題に対し、果実からエタノールを抽出する技術を持ったベンチャーと、課題解決に取り組む地域おこし協力隊をマッチングする役割を担ったという。また、岡山大とのパートナーシップや、地域での創業支援、中高生向けの探究活動発表イベントの開催など、多方面に渡るプロジェクトを披露しながら、「誰かにとって良くなる、ではなく、周囲のみんなが良くなるように、という意識を持ってほしい」と投げかけ、循環型社会を目指す地元の課題解決モデルを考えるというディスカッションテーマを提示した。

高校生たちは模造紙と付箋を用い、アイデアを検討。あるグループでは、ごみによる環境汚染を課題として設定し、「ごみの分別をよりわかりやすい仕組みに変えることで、全世代が分別に取り組めるし時間も短縮できる」「全国でごみの分別を統一することで、引っ越しした際も混乱が無くなる」「公共のごみ箱を増やすことで、ポイ捨てが減るだけでなく、地域の環境意識も高まる」と次々とアイデアを発表。一方で、制度変更に伴うコスト増加の問題に気づくなど、「循環型社会」というモデルの難しさを肌で感じていたようだ。

制服を通して、誰も取り残さない社会を目指す

創業145年を迎え、全国にトンボ学生服ブランドを展開するトンボは、高校生たちにとって身近な制服をめぐるサステナビリティを紹介した。同社の槇野陽介・事業開発本部課長は「つくる責任、つかう責任」をキーワードに、環境配慮型製品比率を2050年までに100%にするという目標を説明。

制服における環境配慮型製品にはいくつかのアプローチがある。まず、原油使用量を削減し、回収したペットボトルを利用した再生ポリエステルを使用するという製法だ。500ミリリットルのペットボトル15本で、ジャケット1着を作ることができるという。また、着用者が成長するという学生服固有の「成長設計」について、各部を必要に応じてサイズアップできる仕様を取り入れ、製品ライフサイクルの長寿命化を実現している。さらに、水とエネルギーの消費に配慮し、「昇華転写」という無水染色技術を活用していることも明かした。

質の高い教育の実現にも意欲を燃やす。そもそもトンボが考える制服の意義とは、▽愛校心や連帯感のシンボルとなる▽学校名が明らかになることで、校外でのトラブル抑止につながる▽貧富の差によるいじめの防止▽服装の悩みを減らし、時間の有効活用になる▽仲間意識が芽生える▽着ることで、学ぶスイッチをオンにする――といった点にあり、いずれも学習に集中できる環境づくりを前提としている。

そうした中で近年は公立中高からの相談を受け、ジェンダーレス制服の導入も手掛けている。重視するのは、すべての生徒にとって最良の形であることだという。槇野氏は「制服を通して、誰も取り残さない社会を実現したい」と締めくくった。

講演を受けて高校生たちは「学校でストレスなく生活できる取り組みを考える」というテーマで、ワークショップに挑み、制服を着る当事者の視点から、「着崩しユニフォーム」というアイデアを発表。現状では、制服を着崩すと学校側から指導を受けてしまうが、「それって、理想とされる生き方が決められているからだと思う。一つの生き方に縛られない制服を提案したい」として、スカートとスラックスなどを選べ、着用の仕方も生徒自身が自由に楽しめるようにすることで、個性を出せると主張した。

これを受け、槇野氏は「メーカーとしては、制服にはTPOを踏まえたフォーマルウェアの側面もあると考えがちだが、一方で個性も大事にしなければならないと改めて勉強させてもらった」と評した。

地域に根差した自動車ディーラーだからこそできること

「いま、わたしたちにできること」について講演したのは、岡山トヨタ自動車の草井智・東岡山店店長だ。講演では自動車販売事業にあえて触れず、同店で開催したマルシェの内容を紹介。コロナ禍も影響し、店舗の顧客である地域住民から「店の知名度を上げるために出店する場が欲しい」「新商品を実際に販売することでニーズ調査につなげたい」といった相談を受けたことから、2021年は「スマイルマルシェ」を開催してきたという。通常販売ができない傷がついた野菜などを安価で販売するほか、地域の郷土料理店が名産品であるアユの加工品を販売するなどし、来場者から好評を受けた。「SDGsを知らない人もまだまだたくさんいる。そうした人が参加しやすい機会を作りたい」。地域に根差した自動車ディーラーだからこそ開催できる、敷居の低いイベントである点を強調した。

また地域防災にも力を入れている。店舗スタッフが近隣の避難所までのルートを調べ、道中に何があるか、車で通行できない範囲はあるか、などをくまなくチェック。店舗内にハザードマップを設置し、スタッフが付箋で情報を書き加えている。草井氏は「いま私にできることが、世界の課題解決につながる。地域のためにチャレンジを続けます」と述べた。

ここでのディスカッションは、「SDGs達成に向け、お店で取り組めることを考える」がテーマだった。あるグループは「廃車の不要パーツを活用してはどうか。子どもが遊べるようなスペースを作り、車と地域をもっとつなげるお店作りを」と提案し、別のグループも車を題材としたテーマパークの構想を披露。草井氏は「どのグループも、車を楽しむという観点が素晴らしい。走ればいいということでなく、わくわくできる、楽しめるイベントを今後も考えていきたい」と称賛した。

公共交通を礎に、歩いて楽しい街づくりを通して価値を高める

岡山県を中心に公共交通機関事業などを手掛ける両備ホールディングスは、持続可能なまちづくりに関して「この街に生まれ育ったことが私の誇りと言われたい」と題して講演した。同社の飯田順子・創夢本部シニアリーダーは、グループ社員数が計9000人、創業111年を迎えているという同社の取り組みを紹介。「公共交通をホールディングスの礎としているからこそ、歩いて楽しい街づくりを通して、岡山の価値を高めたい」と語った。

地域の魅力を高めるための事業は多数ある。例えば、自治体と協働し、観光客向けのフリー冊子を制作。さらに、イギリスのアニメ作品「チャギントン」に登場するキャラクターをモチーフにした路面電車車両を制作し実際に走らせる取り組みや、地元の名産品である黄ニラのPRに際しては、1台だけ特別デザインのタクシー車両を制作し、こちらも実際に市内を走っている。1960年代にロンドンを走っていたタクシー車両を電気自動車に改造したタクシー車両もあるといい、住民や観光客の目を楽しませるための仕掛けは枚挙にいとまがない。

複合商業施設「杜の町グレース」開発も担う。「まちづくりを通して地域の魅力向上を実現することは、地域への恩返しです」と飯田氏は話した。

こうした事業に対し、高校生からは「ラッピング車両や特別電車を作ると、利用者は増える?」との質問も。飯田氏は「特別な車両を走らせたから儲かるということはない。だが、走らせることで、名産品を知ってもらうきっかけになったり、写真を撮ってもらえたりする。そういう投資で、街への自信や誇りを生み出したい」と思いを明かした。

講演後のディスカッションのテーマは「地域に根差した公共交通機関になるためには?」。会場を沸かせたのは、あるグループが発案した、バスなどの「学生専用車両」アイデアだ。客席を簡易に区切り、新幹線のようにテーブルを備え付けることで通学中にも勉強ができるようにするといい、「学生だけが乗車するため保護者が安心できるし、仕切りがあるためウイルス等の感染対策にもつながる」とプレゼンテーションした。飯田氏は「学生の皆さんにとって勉強ニーズがこれだけあるということを知った。気持ちに応えられる会社であるため、努力を続けます」と締めくくった。

各テーマの講演、ワークショップが終わると、それぞれのテーマごとに優れたアイデアだとして選出されたグループによる代表発表が行われ、イベントは総評に移った。またワークショップでは、SDGsアンバサダーを務める岡山大学の学生がメンターとしてファシリテーターを務めた。伊達氏は「どのテーマも、高校生のみんなにとっての価値というものを考えていた。自分たちが未来を作る、という姿勢が素晴らしかった」と、高校生たちの創造力を称えた。

サステナブル・ブランド国際会議2022横浜の「第2回SB Student Ambassador全国大会」には、各ブロック大会に参加した高校生の中から、選考によって13校が招待される。

横田伸治(よこた・しんじ)
東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞記者として愛知県・岐阜県の警察・行政・教育・スポーツなどを担当、執筆。退職後はフリーライターとして活動する一方、NPO法人カタリバで勤務中。