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「社会の幸せは何か。想像し、周囲と話し合いを」 北陸11校の高校生が議論――SB Student Ambassador 富山大会

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局
基調講演に登壇したNPO法人UMINARIの伊達代表

日本の高校生が、国内外で持続可能性の実現に取り組むトップリーダーとともに「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」に参加し、議論や発表、交流に臨む「第2回SB Student Ambassadorプログラム」。同プログラムの選考に先駆けて昨年10月17日、高校生がSDGsの基礎知識や地域企業の実際の取り組みを学ぶ「SB Student Ambassadorブロック大会 北陸エリア 富山大会」が行われた。オンラインでの開催となり、富山のほか石川や岐阜、静岡の11校から49人の高校生が参加。登壇者と質問を通じて活発に議論を交わした。(横田伸治)

冒頭、富山県の新田八朗知事が登壇し、富山県が「環境エネルギー先端県富山」としてSDGs未来都市に選出され、全国に先駆けた環境施策を行ってきたことを紹介。参加した高校生に「今日は、次世代を担う皆さんが、自分の考えをさらに深める機会にしてもらえれば。持続可能な社会をともに実現していきましょう」とエールを送った。

続いて、海洋プラスチックごみ問題に取り組むNPO法人UMINARIの伊達敬信・代表理事兼CEOが基調講演。高校生たちと同じZ世代である伊達氏は「3つの問い」として、私たちは何者なのか(Who we are?)、私たちが生きる時代はどんな時代か(Where we are?)、私たちにできることは何か(What do we do?)を提示し、Z世代が起点となり、今から未来をつくっていく意義を伝えた。

竹を紙の原料にできないか。社員の気づきから生まれた事業

この後、北陸エリアに本社を持つ企業の講演に移り、はじめに中越パルプ工業の西村修・営業本部営業企画部長が「ソーシャルグッドの作り方~日本の竹100%の紙『竹紙』の話」と題して発表した。

高岡市発祥の同社は年間約80万トンの紙パルプを製造・販売する総合製紙メーカーで、他に類を見ない「竹紙」商品を独自に開発しているという。

西村氏は、同社が竹紙の開発に乗り出した背景にある課題として、全国で放置竹林が増え、健全な森林を荒らして、生物多様性が失われていることを説明。生活様式の近代化に伴い、国内での竹の利用が激減していることもその一因で、「竹林整備で伐採される竹を紙の原料として活用できないか?」という社員の気づきから竹紙が生まれたことが語られた。

実際に竹林面積の多い鹿児島県などの地域から要望もあり、試行錯誤を始めたのが1998年。「会社の命令ではなく、社員個人としての疑問が事業のきっかけだった」といい、地域の農家のノウハウを活用しながら、徐々に集荷量を増やした。現在の集荷量は年間約2万トンにも上り、「日本で唯一、竹をたくさん使っている会社」になった。

西村氏によると、一般に、製紙メーカーは木材の特徴を生かして紙を作っており、太く長い針葉樹は紙袋や封筒に、細く短い広葉樹は印刷用紙に活用される。一方、竹は、広葉樹と針葉樹の中間的特徴を持っていることから幅広い用途に使える紙を製造できる。さらに竹の活用は▽森林や里山、生物多様性の保全▽数億円の竹の買い取りによる地域経済活性化▽未利用資源の有効活用――と、多くの付加価値を生み出す。

仕事の中に“余計な”ソーシャルグッドを取り入れよう

厄介者の竹が、個人の気づきをきっかけに高品質の紙としてビジネスにつながったことを例に、西村氏は「自分の仕事の中に、“余計な”ソーシャルグッドを取り入れることで、社会が良くなる」と強調。与えられる業務を遂行するだけでなく、個人が素朴な疑問に基づき、理想に向けて挑戦することで、個人が起点となって社会にインパクトを生むことができるという意味で、「それは誰でもできることのはず」と呼びかけた。

西村氏自身も仕事を通じて課題解決に取り組んでいる。竹紙は通常の紙よりもコストが高いため、文房具メーカーに商品化採用させるのが難しいが、「それならば、自社でノートを作ればいい」と製品化し、文房具店への営業までをこなすほか、近年は折り紙や短冊も制作し、個人利用だけでなくワークショップ利用や施設装飾に活用してもらうことで、竹紙の認知度を上げる努力を続けているのだ。

聴講していた高校生からの「竹紙を広めるために、今後何をしていきたいですか?」という質問に、西村氏は「会社の考えに反するかもしれないが、竹紙商品が『売れればいい』とは思わない。製品を通して、社会課題に取り組む人が増えてほしい。むしろ、そういうことができる会社であるということを示していきたい」と応じた。さらに「ほかにない取り組みに挑戦する中で、大切にしてきたことは?」との問いかけには、「最初は一緒に活動する仲間がいないし、非難されることすらある。でも、自分でやりたいことは『言い訳せずにやる』ことが大切。自分が折れてしまったら意味がないので、無理をしない範囲で、めげずに続けること」とアドバイスした。

建材を通して社会を幸せにする。樹脂窓が社会を良くすると信じて

続いて、YKK APの三浦俊介・サステナビリティ推進部長が登壇。富山県で1934年に創業した同社は現在、住宅の窓・ドアなどの製造を手掛け、世界11か国に進出している。創業以来、売り上げを関連産業や大衆と分け合う「善之巡環(ぜんのじゅんかん)」という考え方をモットーにしているといい、コロナ禍での社会の変容を受け2021年、「アーキテクチュラル・プロダクツ(建材)で社会を幸せにする」というパーパスを新たに定めた。三浦氏は「建材を通して、どうやったら実際に社会を幸せにできるのかを考えてきた」という。

まず取り組んだのが、日本の住宅が持つ窓の課題にフォーカスすることだ。一つは断熱性能。樹脂窓が世界の主流となる中で、国内では圧倒的にアルミ窓のシェアが高いが、アルミは樹脂に比べ熱伝導率が約1400倍にも上る。実際にアルミ窓の場合、夏場は室外の熱の74%が流入。冬場も室内の熱の52%が流出するなど、断熱性能が非常に悪いという。また室内の熱が逃げることで、高齢者のヒートショックや、窓が結露することによりカビやダニが繁殖し、子どものアレルギー反応の原因になるなど、健康被害も大きい。

さらに「樹脂にすれば当然暖房費がかからなくなるし、CO2削減にも直結する」と指摘した。もっともこれまでシェア率が変わってこなかったのは価格差のためで、三浦氏は「ビジネスとしては、価格がより高いものを買ってもらうことは難しい。だが、樹脂窓が確実に社会を良くすると信じている」と話し、実際に、直近の10年間では樹脂窓の出荷量が4倍以上に伸びていることを明かした。

窓のもう一つの課題が、自然災害への弱さだ。近年は毎年のように巨大台風が被害を残しており、同社では耐風シャッターや割れにくいガラス素材の開発を進めている。また、地震被害も深刻だ。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震の危険性が話題になる中、三浦氏は「窓の設置は建物の壁の面積を減らすことであり、倒壊するリスクが大きくなる。一方で、快適な住まいのために、より窓の多い住宅を作りたい」と、メーカーとして板挟みになる現状を説明。倒壊リスクと快適性のトレードオフを解消するために、耐震補強フレームなど、地震に強い窓の販売を強化しているという。

建物は50年後も残る。「技術を伝える仲介役に」

ほかにも、建築業界全体の課題として人口減に伴う空き家問題や、着工が減ることにより地域産業が衰退し、職人不足が生まれるなど、窓にまつわる課題が紹介された。

YKK APはこうした課題に対し、樹脂窓、耐風シャッターや耐震フレームの開発などの技術を生かし、中古住宅のリノベーションによる再価値化に取り組む。特徴的なのは、住宅の解体、基礎補強、耐震改修・断熱改修といった一連のノウハウを、地域の工務店に開示・共有している点だ。三浦氏は「地域の工務店同士がライバル視するのではなく、仲間として地域活性化に取り組んでほしい。そのためにわれわれが技術を伝える仲介役となる」と意義を語った。空き家問題に対し、YKK APが全国事例を調査して得られた知見と、地域風土に根差した工務店のノウハウを組み合わせ、住みやすい住宅を作り出すことで、購入層も含めた全ステークホルダーに価値が生まれる仕組みだ。

全国の住宅事業者に対し、断熱・耐震などの技術面だけでなく、補助金申請などの業務や営業のサポート、工務店同士のネットワーキングも含めたプログラム「性能向上リノベの会」も発足。2030年度までに1万棟を手掛けるという目標を掲げている。三浦氏は「私たちが頑張れば、建材を通した社会貢献をビジネスとして成立できることを、業界全体として認識できる。将来世代に向けて、良い取り組みの枠組みを残したい」と意気込みを語った。

この講演に対しても高校生や教員から「樹脂窓は実際に、アルミ窓に比べどれくらい高いのか」などと次々に質問が挙がり、三浦氏は「現状では2倍近く価格差がある。だが私たちの努力によって樹脂窓が今以上に普及すれば、もっと安価に提供できるはず」などと回答。また「家の熱の半分以上が漏れているとは夢にも思わなかった」というコメントには、「住宅において一番問題があるのが窓。つまり一番改善できるということでもある。建物は50年後も残るものだから、未来に向けてとても責任ある仕事だと感じている」と胸を張って語り、最後に、「社会の幸せって、どういう状態なのか。それを想像して、周囲と話してみることこそ、高校生だからできることであり、やるべきことではないか」と締めくくった。

プログラム全体に対し、基調講演に登壇した伊達氏は「西村氏、三浦氏ともに共通していたのは、『言う』ことの大切さ。考えを発信することで、仲間づくりにも、自分のビジョンを明確にすることにもつながる」と総括。ここでも高校生から「課題を認知してから、行動に移すために必要なことは何か」と質問が飛ぶと、伊達氏は「情報として入ってくる、大きな話を、どう自分ごとに落とし込むかが大事。課題認識と行動の境目もあいまいでいい。何かインプットして、小さくアクションを起こし、その中でまた何かインプットを得て、次のアクションにつなげていけばいい」と、循環的にアウトプットを発展させていく方法を高校生たちに伝えていた。

サステナブル・ブランド国際会議2022横浜の「第2回SB Student Ambassador全国大会」には、各ブロック大会に参加した高校生の中から、選考によって13校が招待される。

横田伸治(よこた・しんじ)
東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞記者として愛知県・岐阜県の警察・行政・教育・スポーツなどを担当、執筆。退職後はフリーライターとして活動する一方、NPO法人カタリバで勤務中。

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