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3年目の世界気候アクション 日本の中高大学生が求める「システムチェンジ」と「公正な社会の実現」

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グローバル気候ストライキは世界90カ国以上で実施された。写真は国内で「Fridays For Future(未来のための金曜日)」の運動を行う高校生や大学生

グレタ・トゥーンベリさんが2018年に気候危機対策の強化を求めて始めた学校ストライキが世界に波及し、2019年から毎年9月に世界一斉に開催されている「グローバル気候ストライキ(日本では、グローバル気候アクション)」が24日、国内でも行われた。世界の学生らが各国で主導する運動「Fridays For Future(以下、FFF)」を日本で展開するFFF Japanは、これに合わせて国内各地で107の企画を実施した。今回、FFFが世界的に掲げる最大の焦点はMAPA(Most Affected People and Areas)と呼ばれる「既存の政治・経済システム(制度)によって最も影響を被っている人や地域」だ。気候変動の要因にもなり、社会で最も脆弱な人々が最も被害を受ける現行のシステムを根底から変革する「システムチェンジ」を強く訴える。日本では、気候危機やそれにより深刻化する地域や世代、性別間の不平等をなくすために「企業に求める10か条」「政府に求める9か条」も発表された。学生たちに話を聞いた。(小松遥香)

2019年に初めて日本で行われたグローバル気候ストライキは、国内23都道府県で実施され、5079人が参加した。世界では150カ国で展開された。東京で行われた「グローバル気候マーチ」には、大学生を中心に学生、気候変動対策に先進的な企業、長く環境問題に取り組む団体、ビジネスパーソン、官僚などさまざまな背景を持つ約2800人が集まり、「気候正義を」と声を上げながら青山から渋谷までを練り歩いた。昨年9月は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、東京では規模を縮小した形で国会議事堂前に約100人が集まり、全国的には32都道府県75カ所で関連するアクションが行われた。FFF Japanは毎年9月のグローバル気候ストライキの時期以外にも「学生気候危機サミット」や企業・政府に対するアクションを実施している。

国内20以上の地域に広がる、デジタルネイティブ世代がつくるアクション

グローバル気候ストライキが3年目を迎え、FFF Japanの活動は現在、札幌や仙台、東京、京都、大阪、神戸、福岡など全国に広がっている。大学生を中心に高校生、中学生の300人ほどがオーガナイザーとして所属するという。このうち30人ほどがアクションなどの運営を中心的に行っているが、受験や就職で人が入れ替わり、メンバーは固定化されておらず、代表してスピーチする人たちも毎年異なっているのが特徴だ。

9月24日夜、FFF Japanが主催しZoomを使って行われた「グローバル気候マーチ」には幅広い年齢層の約500人が参加し、同時配信したYouTubeの動画は現在(9月30日)までに1500回以上再生されている。『人新世の「資本論」』(集英社新書)で知られる経済・社会思想家の斎藤幸平さん、米国の消費者の変化をいち早く紹介した『ヒップな生活革命』(朝日出版)や『Weの市民革命』(同)を書いた佐久間裕美子さんらも登場し、女優の二階堂ふみさんも動画でメッセージを寄せた。

Uproot the Systemがキーワードに

今年、世界で展開されているグローバル気候ストライキの狙いは、気候危機やその他のあらゆる危機をもたらしている既存のシステムを根底から覆すこと。それを意味する「Uproot the System」が世界共通のキーワードとして使われ、SNSで拡散された。

既存の社会システムによって世界の数十億の人々にさまざまな影響を及ぼしている喫緊の社会的課題や固定化した格差は、気候危機によりさらに深刻化してしまう。気候危機によって最も影響を受ける国は、新型コロナウイルスの影響を最も受けている国でもあるのだとFFFは指摘する。

オーガナイザーの一人、時任晴央さんは「社会問題は横断的であり、MAPAが苦しんでいる背景には先進国が気候危機を助長してきたことがあります。MAPAを考えて行動し、誰も取り残さない未来のために闘い、いろいろな背景を持つ多分野・多世代の若者たちと団結していきます」と主旨を説明した。

欧州発のFFFは、この先進国による気候危機の助長とMAPAへの負の影響の要因について、より明確な言葉で「グローバルノース(北半球)の先進国が植民地主義、帝国主義、システム的な不正義、無慈悲な強欲によって、MAPAの暮らしや住処を破壊してきたことにある」と批判している。

団結することで目指すのは、気候危機の解決、気候正義の実現、そして人と地球を優先する社会を構築していくことだ。学生らは気候変動対策の強化だけでなく、こうした事態を生み、格差を広げる根本的な社会システムの変革を求めている。当然のことながら、世界の遠くにいる弱者が直面する不公正を肯定したり、無関心でいる経済・政治システム、国家や企業のモラルは、国外だけでなく国内の弱者にも適用される。FFFが訴えるのは、大人たちが不満を抱きながらも変えられずにいる硬直した現代社会のシステムの変化でもあり、彼ら彼女らは時代や社会の代弁者でもあるのだ。

気候危機にはリミットがある 見て見ぬふりはもうできない

仙台でのアクションの様子

24日にあわせて、国内各地で独自の気候アクションが行われた。仙台を拠点とするFFF Sendaiは、北米などからバイオマス 燃料を輸入するにあたり森林破壊を行っているとして住友商事東北・仙台本店に申し入れを行い、同本店の入る建物前でプラカードを掲げてのスタンディングを実施した。FFF Osakaは国立環境研究所の江守正多氏をゲストに迎えてシステムチェンジについて議論する動画をYouTubeで配信、FFF Yokosukaは 横須賀石炭火力建設地前と京急久里浜駅前で「石炭火力 見て見ぬふりはもうできない」の言葉を掲げフォトアクションを展開した。FFF Tokyoは「利権優先ではない未来を優先するエネルギー政策を」など各省に対する若者のメッセージを集めインスタグラムに投稿し、総裁選候補者や官邸、各省、大臣のアカウントにダグ付けする形で「若者も頑張るから全部の省も頑張ってねアクション」を実施した。

このほか、twitterでは議論を重ねて決めたというハッシュタグ「#気候危機見て見ぬふりはもうできない」を一斉投稿するツイートストリームを実施し、7956ツイートを記録し、トレンド入りも果たした。

FFF Tokyoの廣瀬みのりさんは、「きっと誰かがどうにかしてくれる。そうやって見て見ぬふりをするのはもうやめないといけません。18歳以上の方は直接的に声を届ける機会があります。選挙です。そろそろ衆議院議員総選挙があります。18歳未満の子どもたちとこれから生まれてくる将来世代の分も気候危機対策をしっかりと考えている候補者に投票してください」と呼びかけた。

メンタルケアしながら取り組む社会変革

インタビューに応じてくれた原さん

FFFに集まる学生はどのような人たちかーー。現在、FFF Tokyoのオーガナイザーを務める中学3年生のTさんと、FFF Yokosukaのオーガナイザーで高校2年生の原有穂さんに話を聞いた。

――今回、企業に求める10か条、政府に求める9か条 を発表しました。これは日本独自のものでしょうか。どのように決めましたか。

原さん:日本独自のものです。議論を何度も重ね、ときには深夜になることもありましたが、中高大学生20人ほどが集まって決めたものです。

Tさん:専門家の方たちにもヒアリングしながら考えました。

――実際に日々の中で企業や政府にどのような疑問を抱きますか。

原さん:今、世界中で企業や政府が気候変動対策を進めていることはとても重要で良い流れだと思います。でも懸念するのはSDGsウォッシュやグリーンウォッシュ です。本気で気候変動を止めないといけない状況になってきているときに、表面的な活動やこれまでの企業の取り組みを少し変えて「エコなことをやっています」というものを、私たちはきちんと見ています。「これはSDGsウォッシュ、グリーンウォッシュだね」という話をよくします。やはり、消費者に過度にサステナブルだと信じさせる表示は気になります。

T さん:政府に対して思うのは、今の2030年度までの温室効果ガス削減目標では間に合わないし、先進国としての義務を果たせないということです。世界からも遅れています。

私たちは本気の気候変動対策を求めていて、もっと野心的で実行力を持って政策を決定してほしいです。4月にNDC(国別削減目標)が46%に決まりましたが、科学に則り1.5度目標を達成するには62%(クライメート・アクション・トラッカーの分析に基づく)まで引き上げる必要があります。

私たちが求めているのは「おぼろげな(「おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が」という小泉進次郎大臣の発言)」大人たちの感覚ではありません。政府には選挙権のない人たちの未来を守れるような政治や社会をつくっていく義務があり、先進国として責任を果たせるような目標や数値を求めています。

――今回のアクションを含めて、FFFの活動を広げ、人にメッセージを伝え、力を合わせて活動をしていく上で、オーガナイザーとして大事にしていることはありますか。

T さん:私たちには話し合いをする上で大切にしているルールがあります。例えば、意見交換を活発にする、発言にはアクティブに反応するといったこと、そしてメンタルケアです。

私たちの活動の成果がすぐに出るわけではありません。政府の決定もあまり納得できなかったり、色々なところから批判を浴びたりします。長い期間続けていると、精神的に萎えてきてしまうということもあります。私自身も弱い人を犠牲にして生活していると思うと嫌気がさすこともあります。

ですので、私たちは活動する上でメンタルケアがとても大事だと考えます。今回のアクションを企画する上でも、それを考慮し「ムーブメントに参加していること自体に誇りを持ちましょう」ということを共通認識として取り組んできました。

原さん: FFFでは、世間に訴えかける手段として学校ストライキやスタンディングなどの手段を使うことが多いのですが、今回はコロナ禍で感染防止という点からも外での大規模なアクションは難しく、また社会正義という観点からも、ワクチンが打てない国や人がいる中で、ワクチンを打てる私たちが外に出てアクションをすることはどうなのかという思いもあり、さまざまな点に気を配りながらアクションを考えました。

基本的には学生だけでプレスリリースを書き、会見の準備などもしていますが、思いを持った学生が集まっているので議論が白熱し、時に意見が対立することもあり、大人のコミュニティ・オーガナイザーの方が中に入ってくれることもあります。

――おふたりがFFFに入ったきっかけは何でしょうか。

原さん:私は今年6月に加わりました。もともと、アフリカや東南アジア、南米の貧困問題に関心があり、高校1年生の頃から世界の社会問題について勉強し始めました。その過程で、フリーランス国際協力師の原貫太さんのYouTubeを見て、私たちが着ている服が生産されても大量廃棄され、食べているお肉には大量の水や穀物が使われていることを知りました。紛争鉱物もそうですが、私がずっと助けたいと思っていた人たちを、私たちが搾取していて、そこで働く人たちが抜け出せないようなシステムになっているということに衝撃を受けました。

私ができることからしなきゃ、そう感じました。服を買わないようにしよう、なるべく牛肉を避けようと決めました。罪悪感が大きな要因でした。一人でそういう活動をしている中で、たまたまFFFの友達に誘われて、ムーブメントに参加するということは考えていなかったのですが、同じ思いをしている人がいて、色々なことを勉強できるかもしれないと考え参加を決めました。

T さん:私は去年の8月に入りました。中学1年生の時に『グレタ たったひとりのストライキ』(海と月社)を読み、気候変動がいかに深刻な状況かということを知ってすごく衝撃を受け、自分が動かないといけないと思ったからです。

ーー友達や同級生も気候変動やFFFに関心がありますか。

原さん:いえ、私は今もまだ、環境問題に取り組んでいると周りの人に伝えることで、誹謗中傷を受けるのが怖いという思いがあります。偏見を持たれる可能性もあり、あまり人に伝えられていません。でも、無理に教えたりすることはないですが、SNSを使って少しずつ気候危機やジェンダー問題そのほかの社会問題について発信していると、友達が関心を持ってくれるようになってきて、小さなことですが良かったなと思っています。

T さん:私もこの活動を始めた時は、周りの人に言うのが怖かったです。社会問題について友達に話すことで人間関係が壊れてしまうのではないかと心配したこともありましたが、そうも言っていられないなと思い、今では話せるようになりました。私が話をしたら、関心を持って聞いてくれます。

――「服を買わないようにしよう」と思ったとおっしゃっていましたが、他に消費や生活の中で行動が変わったことはありますか。

原さん:服を買う頻度はかなり減りました。ただ今は、服をつくる企業が変われば 多くの人が不便さを感じず、環境に負荷をかけない行動ができるようになると考えています。また、服を買うのを我慢するのではなく古着を買うということもできます。環境活動家だから、何かを我慢しなければならないというのはあってはならないと思っています。

T さん:私はペスカタリアン(肉を食べない菜食主義者)になりました。肉は食べませんが、魚介類や乳製品、卵は食べられます。気候危機について調べる中で、工業的畜産について知ったことが理由です。映像で実態を見ると、やはり心が痛みます。私以外の家族は肉を食べ、両親は動物性のたんぱく質も必要じゃないかと考えているようですが、食卓に並ぶ料理は以前よりも魚の方が多くなりました。

消費については、服だけでなく身の回りのもの全てですが、エシカル消費をするというよりも、本当に必要か、今あるもので足りるのではないかをよくよく考えて、本当に何日も何日も考えてから、一番いいと思う、環境に配慮したブランドのものを買うようにしています。やはり大量生産・大量消費の社会システムの上に私たちの生活は成り立っていて、それを変えるのは難しいので、本当に必要かを考えるようにしています。

――これからどんな社会や時代に生きていきたいと思いますか。

原さん:私が物心がついた2011年からの10年間で大きく社会は変化しました。そうした変化を見て、私が未来を考える時に思うのは、それはさすがに変えられないだろうというものでも一度変えてしまえば慣れますし、不便も楽しむこともできます。私たちの生活はあまり変わっていないけれど、地球への負荷は大きく軽減できる未来、世界を変えたら自分が被害を受けるのではなく、今の生活を維持することもできるし、新しい楽しみが増えるというという風に考えていける未来になったら良いなと思います。

T さん:今、若者として危機感を抱いて活動をしているということもあるし、未来の状況を変えられる一人の人間として活動している中で思うのは「なぜ自分が未来のことを考えないといけないのか」ということです。将来の世代に自分と同じ思いをして欲しくないと思います。将来に不安を抱いたり、前の世代がまわしたツケを背負わなければいけない世代や社会になって欲しくないと思って動いています。自分よりも年下の世代が安心して生活できる時代になってほしいと思います。未来の世代から、私が大人になった時に怒られないように頑張っていきたいです。

3年目の取材を終えて

「なぜ自分が未来のことを考えないといけないのか」――。中学3年生のTさんが発信する問いは心に響く。今年のグローバル気候アクションでの学生たちの言葉で印象的だったのは、彼ら彼女らにとっての「将来世代」への言及だった。そうした世代の未来を、私たち大人や、政治家はどこまで見据えて実際に社会をつくっているのだろうか。この取材を定点観測として続けてきた理由は、FFF Japanに参加する学生たちが、どこにでもいる、私の教室にもいたかもしれないような学生でありながら、貴重な時間を使い、この地球環境の非常事態をなんとかしようと勇気を持って立ち上がっている姿が時代の写し鏡だと考えるからだ。ストレスケアをしながら、他人から非難されることを怖いと思いながらも、自ら、そしてその次の世代の未来を見据えて声を上げる学生たちの声に、為政者も経営者も都合のいい時だけではなく、耳を傾け続けなければならない。

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小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。