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「私たちが動かず、だれが未来を変えられるか」大学生ら32都道府県で気候変動対策訴え

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世界の学生など若者が中心となり気候変動対策の早急な加速化を求める「世界気候アクション0925」が25日、世界150カ国以上で一斉開催された。この日、国内でも32都道府県75カ所で同アクションが行われ、東京では国会議事堂前に100人以上が集まった。昨年は東京だけで約2800人が参加。今年はコロナ禍で縮小した形での開催となる中、「#気候危機に特効薬なし」をキーワードにSNSを使ったデジタルアクションも展開した。Fridays for Future Tokyoのメンバーで大学1年生の西村健汰さんは「本当は、気候変動問題に取り組みたいわけではない。でも自分の時間を犠牲にしてでも、今やらなければ命が危険にさらされる問題」と語った。

「FridaysForFuture(未来のための金曜日)」は2018年、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんがさらなる気候変動対策の取り組みを訴えるために毎週金曜日、学校を休み、同国国会議事堂前で座り込みを行ったことから世界の若者たちに広がった運動だ。日本では大学生を中心に2019年2月にFridays for Future Japanが発足した。東京支部には現在、中学生から大学生まで42人が参加している。

16時、東京では小雨が降る中、国会議事堂前の通りを挟んだ一角に、続々と人が集まり、靴とプラカードを並べ始めた。前回は、青山から渋谷までの通りを2000人以上の参加者がプラカードを持ち、気候変動への取り組みの必要性を叫びながら行進した。しかし今回、感染症対策として過密状態を避けるために、その場に長時間いなくてもアクションに参加できる「Climate Shoes Action(クライメイト・シューズ・アクション)」という手法が会場とSNS上で用いられた。全国では、若者のみならず企業や団体、学校などの参加もあり、1800人が「Climate Shoes Action」に参加したという。

若者たちが「世界気候アクション0925」で求めるのは、「1.5度目標の達成と早急な対策の実施」「公正な政策決定のプロセス」「若者の意見の尊重」だ。産業革命前と比べて平均気温上昇を1.5度に食い止めるためには、来年11月に開催されるCOP26で二酸化炭素排出量の大幅な削減目標を掲げる必要がある、と政府に訴える。

神奈川県川崎市で運送会社を営む新井田知成さんは、「昨年末にグレタ・トゥーンベリさんの活動を知って、自分の18歳の子どもの未来のために何かをしなければと思った。それまでは関心があったわけではなかった。私に手伝えることがあれば手伝いたいと思って、今日は参加した。実は、今年2月からは肉などを食べるのを止めて野菜中心の食事に変えた」と語った。

同じくスーツ姿で参加した40代の男性は「ネットで知った。気候変動に関心を持ったのは最近。どんなものかなと思って様子を見るぐらいの気持ちで来たが、子どもと同じ世代の人たちが多くて驚いた。でもこうして若い人が多いことに、日本も捨てたものではないと安心した。気候変動を真剣に考えないといけない時が来たのではないかと思う」と話した。

アメリカの大学に入学したばかりだが、コロナ禍で日本にいながらオンライン授業を受けているという大学1年生は、「国際的な社会問題に関心があった。しかし勉強する中で、気候変動が悪化すると、そのほかの問題も悪化することになると知った。大学では環境科学を専攻している。市民が声を上げることで政治家も動くと思う。私たちが声を上げていくことが大事だ」と力を込めた。

大学2年生の女性は、「1年前にオーストラリアに留学し、授業でキャンプをした時、先生が話していた『人間は自然と共存しながら生きていくんだ』という一言と、水や石鹸などをあまり使わない生活をしたことがきっかけで、これまでの生活って違うんじゃないかと思うようになった。何も考えてこなかったことを後悔しているし、ほかの人にも後悔してほしくない。まわりに気候変動に関心がある人は少ない。(隣にいる)友だちにも無理やり一緒に来てもらった。こうしてアクションを起こしている同世代の人たちに会えたことが嬉しい」と語った。

受験を控えているという高校3年生の2人組みは、「環境問題に関心があり、2人で何かに参加したいと思っていた。受験勉強も大切だが、こっちの方が大事なので放り投げて来た。大学では環境問題と企業の関係やCSRなどについて学びたい」「7歳の時に学校の授業で地球温暖化について知った。特に、人間の活動によってシロクマが生存の危機にあることを知った時は、なんで大人たちはなにもしてこなかったのかと、人間に対する怒りを感じた。中学生の頃は、こうしてアクションに乗り出すことはすごく怖かったが、先輩たちが動いているのを見て、私もやろうと思った」と話した。

このほかにも、7月、モーリシャスで日本企業の大型貨物船が座礁した事故をきっかけに環境問題に関心を持つようなって参加した、と話す人もいた。

Fridays for Future Tokyoのオーガナイザーを務める大学1年生の黒部睦さんは、参加者にこう呼びかけた。

「これから日本のエネルギー政策を決める大きな会議が待っている。それに向けて、私たちは声を上げていかなくてはいけない。今が大事。今、行動しなければ私たちの未来は本当に危ないことになる。多くの人たちにこの危機に気付いてもらい、みなさんに発信してもらいたい。一人ひとりの力は大きい。気候危機について話すだけでも、SNSで発信するだけでも、消費を変えるだけでも、世界や日本を変える力になる」

黒部さんは大学で声楽を専攻する。「将来は、音楽の力を使って世界を変えたい。音楽を極めで、なるべくたくさんの人を幸せにしたい」と語った。

同じくオーガナイザーで大学1年生の西村健汰さんは心理学を学ぶ。「やるべきことと、したいことは違うと思う。やりたいことは心理学で、本当は気候変動問題に取り組みたいわけではない。気候危機の問題がなければ、アルバイトや他のことに使える時間なのだが、自分の時間を犠牲にしてまでやらなければならないと気付いた。本当に時間がない。気温上昇など肌で感じていながらも、なんで多くの人は声を上げないかと疑問を持っている。でも僕は、若者対大人という対立が好きではない。これはお年寄りも子どもも誰もが関わる、命が危険にさらされる問題。みんなで運動をつくり上げていきたい」。

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小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。