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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

持続可能な社会の担い手に これから社会に出る学生へのアドバイス

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岡山氏、福島氏、工藤氏

「少女たちには世界を変える力がある(The girls have the potential to change the world.)」という力強い宣言を掲げたセッションがサステナブル・ブランド国際会議2022横浜であった。副題は「サステナブルな仕事をするということ」。国際的に若い女性の権利やエンパワーメントの促進が求められるなか、女性が持続可能な社会の担い手として成長していくために今、改めてどのような視点が必要なのか。仕事との向き合い方、そして企業のサポートのあり方とは?(三谷真依子)

ファシリテーター:
岡山慶子・朝日エル 会長
パネリスト:
福島莉乃・東京工科大学 大学院 バイオ・情報メディア研究科 学生
工藤直保子・GEヘルスケア・ジャパン 超音波製品開発部 部長
福田和代・日本放送協会(NHK) 編成局 展開戦略推進部 部長 (※希望により、記事に発言を反映していません)

セッションは東京工科大学の大学院生であり、これから社会に出ようとする福島莉乃氏に、医療・メディア業界の第一線で活躍する2人がアドバイスを送る形で進行。ファシリテーターは女性・子育て、教育など社会貢献型の事業に取り組む朝日エル会長の岡山慶子氏が務めた。

福島氏はクラシックバレエの経験から化粧品に興味を持ち、大学で環境にも肌にも負担をかけない植物由来の化粧品研究を行っている。研究室の先輩の多くは化粧品業界に進んでおり、自身も同じ道に進むことを考えているという。

岡山氏によると、福島氏の世代は小中学校から学習指導要領にサステナビリティについての学びが盛り込まれてきた。さらに本人いわく、大学の学部も男女の割合は同じであり、「男性も女性も関係なく化粧品業界を志望しているので、ジェンダーギャップなどは感じてこなかった」のが特徴だ。

この違いにリケジョ(理系女性・理系女子)の先輩であるGEヘルスケア・ジャパンの工藤直保子氏は、入社した約30年前は技術系であっても女性には制服が支給されたことに驚いたことなどを振り返りつつ、仕事を続ける中での自身の気持ちの変遷や、社会の変化と共に会社も変化してきた経緯を語った。

それによると、中学生の時に「切らずに、体の中が見える画像診断装置ってすごいな」と思ったことがモチベーションとなって入社し、エンジニアを経て、現在は人材育成や組織運営に携わる。この間、「研究開発そのものよりも皆がつくったいいものを外へ出していきたいという思いが根底にあることに気付いた」という。

会社のビジョンも大きく変わった。GEヘルスケア・ジャパンとしては40周年を迎え、すべての人々が平等に必要とされる医療を受けることができるよう、AIも含めた画像診断装置を一つのエコシステムとして構築することを掲げる。働き方に関してはグローバルな「GE Women’s Network」を通じて女性のキャリアアップがサポートされ、男性も女性も「あらゆる人が受け入れられて実力を発揮できる」会社を目指した取り組みが進む。

思いがあるなら諦めず、いろんな人に言い続けて

一方、これから社会に出る福島氏には、「若い世代が自分の考えややりたいことを伝え、それに対して評価を頂ける企業で働きたい」という希望がある一方、「実際に就職するとそういう機会があるのかどうか」や、「学生時代に学んだ知識や研究能力は、社会で通用しないのではないか」といった不安があるという。

この不安に対して、工藤氏は、「思うことがあるのならば諦めず、いろいろな人に言い続けてほしい」「知識は社会人になっても学び続けなければいけない。学んだことが100%仕事で使えるかというと難しいが、考え方や取り組み方が大事でアプローチ次第で生かせるのではないかと思う」などと回答。

中でも若者の意見に関しては、「例えば会社の3年後のロードマップにあるプランを若者から提案されたら、私であれば『おっ』と思う。先が楽しみだなと。そういう意味でも自分が思っていることはどんどんアピールしてほしい」と話し、背中を押した。

自分の心に忠実にいれば、無限の選択肢がある

サステナブルな働き方とは何か。工藤氏は結婚した時にも働き続けると強く意識していたわけではないが、結果として30年以上、同じ会社でキャリアを積むことになった。その一番の理由を「やっぱり面白いから。自分が興味を、パッションを持てることに対してなんらかの形で貢献できる」と明言。その上で、「せっかく会社に所属して仕事している以上は会社そのものがやっていることに共感し、目の前に与えられた機会をうまく生かすことで働き続けられる。今は化粧品の開発だと思っても、もしかしたら違う広がりがあるかもしれない。自分の心に忠実にいれば、無限の選択肢がある」とアドバイスした。

セッションを通して岡山氏は、35年前に小さな会社をつくり、「会社として利益を出しながら、働いている人たちが自分の人生を見つけられるようにしよう、とやってきた思いが今達成できている」ことを振り返るとともに、「サステナビリティを学び、自分の中にサステナビリティのある人が社会に増えてくることをすごく頼もしく感じる」と福島氏のようなサステナビリティやジェンダー平等を体得する世代への期待を表明。

最後に福島氏は、「私たちには社会を変える力があると信じている」と力強く宣言してセッションを終えた。

三谷真依子 (みたに・まいこ)

高知県出身。文芸創作を経てフリーライター。都内の大学に在学中、友人の誘いで、関東で高知をPRすることを目的とした学生団体の立ち上げに参加。同団体で、高知の食文化をはじめ地域で働く人々の想いや地方の持続性に触れ、記事執筆を始める。