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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

持続可能なファッション産業へ 伊藤忠など11社が連携しアライアンス創設

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ファッションおよび繊維業界の共通課題について連携して解決策を導き出し、持続可能なファッション産業への移行を推進することを目的とした「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JAPAN SUSTAINABLE FASHION ALLIAANCE= JSFA)」がこのほど発足した。ファッション産業はサプライチェーン上の製造工程におけるCO2(二酸化炭素)排出量の多さや水質汚染など自然環境への悪影響、縫製工場などでの労働環境の不透明性、深刻な大量廃棄問題などが指摘されており、業界を挙げての早急な対策が求められていた。伊藤忠商事やゴールドウイン、日本環境設計、ユナイテッドアローズなど11社が共同で創設。2050年カーボンニュートラル達成に向け、適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロを推進し、必要な政策提言などを行う。(廣末智子)

正会員には「パリ協定に賛同」など5項目を実施

業界のサステナビリティに関しては、環境省や経済産業省など関係省庁がそれぞれに対策を打ち出しており、今回のアライアンスに関しては昨年12月から今年2月にかけて4回開かれた環境省の「ファッションと環境」タスクフォースによる勉強会に参加した企業が、業界と生活者が一体となってサステナブルファッションを促進していくための企業連携のプラットフォームとして設立を呼び掛けた。

現時点の参加企業は正会員がアダストリア、伊藤忠商事、倉敷紡績、ゴールドウイン、帝人フロンティア、東レ、豊島、日本環境設計、ユナイテッドアローズの9社と、賛助会員がアシックス、良品計画の2社。一般社団法人unistepsと伊藤忠ファッションシステムが事務局を務める。

正会員企業には以下の5つの項目にコミットすることが求められる。

1. パリ協定に賛同し、脱炭素型へのビジネスの移行を促進する(逆行する事業については脱却に努める)

2. 2050年までのネットゼロ宣言や、温室効果ガス排出量削減に取り組む国際環境NGOが主宰するイニシアティブであるRE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す)、EP100(エネルギー効率の高い技術や取り組みの導入を通じて、事業のエネルギー効率を倍増させることを目指す)、EV100(企業による電気自動車の使用や環境整備促進を目指す)などへの参加に努める

3. サプライヤー・顧客に働きかけ、バリューチェーン全体の透明化に努める

4. 適量生産・適量購入・循環利用を促進する

5. アライアンスの一員として、政策関与やサステナブルファッションの協働に賛同・協力する

これらを通じて、業界全体のサステナブルファッションに関する知見を共有し、一企業ではなし得ない規模による、ファッションロスとカーボンニュートラルに向けた協働や、消費者により訴求力の高い、双方向によるコミュニケーションを活発化していく考えだ。

ユナイテッドアローズ 「消費者の視点やニーズを意識した議論を進めたい」

正会員企業の一つであるユナイテッドアローズ(東京・渋谷)は、同社の掲げるサステナビリティ推進のマテリアリティ(重要課題)の方向性がファッションロスゼロやカーボンニュートラルと合致しており、またこれまでサステナビリティを推進する上で自社だけではなくサプライチェーン全体での対応や協働の必要性を感じていたことなどから、同アライアンスへの参画を決めた。正会員企業に課される5つのコミットに関しても、2つ目の「2050年までのネットゼロ宣言」などについては、同社のマテリアリティの中に「低炭素化の推進」や「省エネルギー・再生可能エネルギー利用の推進」が含まれており、現在、その具体的な目標設定などを検討している段階にあるという。

さらに、3つ目の「サプライヤーや顧客への働きかけ」については、サプライヤーに対して、動物素材のうちアンゴラウサギの毛やアンゴラヤギの毛、また羽毛や毛皮を使用した商品の素材の採取方法、製造工程などに関する報告書の提出を継続して求めており、問題が見つかった場合には改善を図りながら、「より信頼のおけるモノづくりと、安心して着用してもらえる商品の提供」を心掛けている。

また、4つ目の「適量生産・適量購入・循環利用の促進」に関しては、手ごろな価格帯の商品を扱う「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」の全国の店舗で、ビジネスアイテムの下取りキャンペーンを展開。これは、消費者に店頭に持って来てもらった衣類をNPO法人に寄付し、それをリユースショップが買い取って、その買い取り金をNPOの災害緊急支援プロジェクトの活動費として役立てるというもので、2010年から年に2回のペースで続けているという。さらに今秋には「長く大切に使ってもらえるようなモノづくりや提案を行う」ことをコンセプトとするECサイトに特化した新ブランドを展開する予定で、実売期に先駆けたタイミングで先行受注会を行うことでアイテムごとの需要を予測し、適量を生産・販売することにつなげる方針だ。

このようにサステナブルファッションの観点から多様な取り組みを進めている同社だが、広報担当者は、同アライアンスに参画することへの抱負を「小売企業の立場からお客さまの視点やニーズを意識した議論を進め、ファッション産業と生活者が一体となったさらなるサステナブルファッションの促進に貢献したい」と話す。

事務局を務める一般社団法人unistepsによると、8月3日の設立以来、同アライアンスへの参画を希望する企業からの問い合わせが多数寄せられている。今後の活動にはパブリックパートナーとして環境省と経産省、消費者庁が参加する方向で調整中で、月1回程度の定例会を予定している。

関係省庁の連携も活発化 「サステナブルファッションの推進に向けた連携会議」発足

一方、アライアンスの発足とともに、パブリックパートナーである環境省と経産省、消費者庁の連携も活発化している。経産省では7月に「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」が取りまとめた報告書を発表し、各企業がサプライチェーン上で起きている労働環境問題などに対してより責任を持って対処するためのデューデリジェンスのガイドラインを業界を挙げて策定するよう提言。8月には消費者庁の声掛けにより、「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携会議」が発足している。同庁の担当者によると、今後はジャパンサステナブルファッションアライアンスとも連携しながら、消費者の行動変容を鍵に、生産段階の課題から回収の仕組みまでを社会全体で変えていくための議論を進める方向で検討中という。

消費者庁と環境省、それぞれに特設サイト開設 消費者に関心呼び掛ける

消費者庁がサステナブルファッションの促進に主導的役割を担うのは、2015年度からエシカル消費を推進してきた流れの一環で、8月には消費者庁エシカル消費特設サイト内に、サステナブルファッションの特設ページを開設。「サステナブルファッション習慣のすすめ」と題し、環境負荷が極めて大きいとされるアパレルファッション産業の現状について説明するとともに、「上手に工夫した、自分だけのサステナブルファッションを楽しみませんか」として、寸法直しも柔軟に行え、小物などの用途にリユースも可能な着物について、「まさにサステナブルファッションの精神を体現したものでもあったと言える」などと紹介。買う時や選ぶ時、処分する時などの「18のヒント」についても提案している。

なおサステナブルファッションについては、環境省でも6月に特設サイトを開設しており、「衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、ファッションのあり方をアップデートして次世代の環境につなげよう」とアピールしている。各省庁が連携しつつ、それぞれの観点から消費者にサステナブルファッションへの関心を呼び掛ける動きの成果がどう表れるか——。同時に、サステナブルファッションにおいては国際社会の厳しい目が向けられるサプライチェーン上の人権問題への取り組みが欠かせない。今後、人権デューデリジェンスにまで踏み込んだ対応について、業界はじめ各省庁がどう連携を強めていくのかを注視したい。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。