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「転職なき移住」推進で政府と企業が連携 テレワークの活性化で地方創生を

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コロナ禍をきっかけに注目が集まった、東京から地方に移住するという選択肢。中でも過去にテレワークを経験した人は、地方移住への関心が高いという。この状況を背景に、政府は地方におけるサテライトオフィスでの勤務など、地方創生に資するテレワークを推進している。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局はこのほど「地方創生テレワーク推進パートナー」としてLIFULL(東京・千代田)、経団連など計9の企業、経済団体と初めて連携協定を締結した。連携によって「転職なき移住」とも言える新たなライフスタイルの浸透を目指す。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

コロナ禍によりテレワークを導入する企業が増え、場所を自由に選ぶ働き方が社会に受け入れられるようになった。ネットワークなどIT環境さえ整えば、遠隔地であっても支障なく業務を行える場合があることが再認識され、特に人口が過密な首都圏では、地方と都内に2拠点を持つライフスタイルも現実的になっている。

首都圏の企業に所属したまま地方に移住しテレワークで業務を行う人が増えることは、日本の大きな課題である東京一極集中の是正にもつながる。そこで地方創生戦略を推し進める政府は2020年12月から有識者による「地方創生テレワーク推進に向けた検討会議」を実施し、企業や働き手へ向け情報を提供するホームページを公開。さらに今年7月8日、内閣府内に設置されている「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」は経団連や経済同友会、日本商工会議所といった経済団体、パソナグループなどの人材会社など計9つの企業・団体を「地方創生テレワーク推進パートナー」として、初めて包括連携協定を締結した。「地方創生テレワーク(地域活性・地方創生に資するテレワーク)」を「転職なき移住」というライフスタイルの一部として、普及を進めている。

「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」地方創生テレワーク推進パートナー

(経済団体・連盟)
・一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)
・一般社団法人 新経済連盟
・一般社団法人 日本IT団体連盟
・公益社団法人 経済同友会
・日本商工会議所
(企業)
・パソナグループ 
・パーソルグループ
・LIFULL
(協会) 
・ハイブリッドワークライフ協会

「転職なき移住」現実的な選択肢になるか

LIFULLの井上高志代表 (左)と坂本哲志特命担当大臣 (地方創生担当)

今回政府との連携協定を締結した9企業・団体の一社、LIFULLはコロナ禍以前から地方創生や地域の関係人口創出を強く意識したサービスを展開している。ワーカー向けのテレワーク体験事業などのほか、1IDあたり月額2万5000円で全国の拠点で暮らすことができるサービス「LivingAnywhere Commons」は、場所やライフライン、あらゆる制約に縛られない働き方を・暮らし方を実現する。

同社広報は「こうした事業を実施する中で、地方拠点に関心を持つ都市圏の企業にも、全国の自治体とも関係を構築してきました。今回、政府と連携し、こうした企業・自治体とのネットワークの中からモデルケースとなる取り組みを生み出し、情報発信していければと考えています」と意欲的だ。運営する地方移住希望者向けの情報プラットフォーム「LOCAL MATCH」についても、サービス拡大を進める姿勢だという。

出典:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

内閣府が2020年12月に行ったインターネット調査によると、東京都23区在住者の地方移住への関心度は高まっているが、中でもテレワークの経験者にその傾向が見られる。この調査ではほかにも、「テレワークの利用などで夫の働き方が変化した場合には、家事・育児での夫の役割が増加する傾向」や「家族と過ごす時間は増加傾向。テレワーク等の経験者はその割合が高い」など、働き方が変化することで、ワーカーが家庭・家族に関わる機会が増加することが示されている。


長期的に見れば、いつかコロナ禍が収束する時が来る。しかし社会の価値観とライフスタイルは確実に変化を続ける。LIFULLの広報は「今後も、テレワークの充実と、地方で働くための環境整備が進めば、『転職なき移住』も現実的な選択肢として選択され、地方創生テレワークも進んでいくものと考えています」と展望を見据えているという。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。