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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

実践から学ぶコレクティブインパクト 日本における新潮流とは

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左からファシリテーターの番野氏、久富氏、マクティア氏、船木氏

社会課題の解決に用いられる「コレクティブインパクト」という概念を掘り下げた分科会が行われた。複雑化する問題を解決するには立場の垣根やセクターを超えたコラボレーションが欠かせないとコレクティブインパクトは定義する。では実際に、新たに行動を起こす人が参考にすべきものは何か。サステナブル・ブランド国際会議2020横浜 2日目、コレクティブインパクトに取り組む4者が登壇した。(やなぎさわまどか)

特定非営利活動法人エティックの番野智行氏はファシリテーターとして、冒頭でコレクティブインパクトについて説明し、その特徴などを紹介。「これから紹介する多様な実例を見て感じ取ってほしい」と話した。

新宿から箱根・湘南まで、広範囲で人々の移動を支える鉄道会社の小田急電鉄から、経営戦略部長の久富雅史氏が登壇した。交通インフラを担う同社は、まちのインフラや住民の暮らしを考えて、ゴミの運搬を軸としたサーキュラーエコノミー(循環型経済)事業を行なっている。循環型社会の実現に向けた具体的な課題や地域ごとの特徴を整理し、行政との協定締結や、子どもたちに向けた教育の機会の提供、ゴミ回収のスマート化といった事例を紹介。

久富氏は「創業以来、まちのインフラをつくり、地域の発展と持続可能な社会づくりに貢献してきた自負がある。地域のさらなる発展のために社会課題の解決に取り組むのもわれわれの使命」と話した。

一般社団法人Social Innovation Japanのマクティア マリコ代表理事は、プロギング(ジョギングしながらのゴミ拾い活動)や、「SDGs」「サーキュラーエコノミー」をテーマに定期開催するワークショップ・イベントを紹介し、どんな人も参加しやすい取り組みを意識していると話す。

また、ペットボトルの消費を減らす具体的な提案としてマイボトルの活用と、マイボトル推進のために開発したアプリ「mymizu(マイミズ)」を紹介。アプリはスマホなどにダウンロードし、簡単な操作で現在地から最も近い給水場所を示してくれるなど、世界約20万カ所の給水場所を登録したマッピングツールだ。公共の給水施設のほか、飲食店やショップなども給水地として登録されている。さらに、実際に給水した人が写真などで共有し、具体的にどのくらいペットボトルの削減に貢献したかをトラッキングすることもできる。「日本で消費されるペットボトルは1年に252億本、地球128周分にもなる。この現状を変えることは、1社や1団体だけでできることではないので、誰もが楽しく活動できる機会を増やしていきたい」と話した。

広告業界のバックグラウンドを生かし、現在、長野県参与や尼崎市顧問を務めるなど複数の地域で社会課題の社会化とその解決を目指すソーシャルマーケティングを行う一般社団法人つながりのデザインで代表理事を務める船木成記氏は、地域自治を実例にとり、ソーシャルインパクトの実践側が意識すべきことについて説いた。

「都内にいると感じにくいが、本来は誰もがどこかの地域の一員。自らの所属先を意識すると、社会をどう認識するかが見えてくるのではないか」。エコバッグやキャンドルナイトなど個別の活動がそれぞれ一体なんのために行うのか、また、どういう結果に繋がることが重要かをきちんと描く大切さに触れ、「主体的に自分ができることを考えて動く、一人ひとりの行動の結果であることが重要」と示した。

やなぎさわまどか

神奈川県出身。ナチュラリストの母により幼少時代から自然食や発酵食品で育つ。高校在学中から留学など度々の単身海外生活を経験。都内のコンサルティング企業に勤務中、東日本大震災で帰宅難民を経験したことをきっかけに暮らし方を段階的にシフトする。現在は横浜から県内の山間部に移り、食や環境に関する取材執筆、編集、翻訳通訳のマネジメントなど。